【第一部&番外編・完】故郷の英雄と歩む冒険者生活~家族に売られた僕は憧れの冒険者のものになりました~

海野璃音

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第一部:番外編

ヘルト視点5:特訓、装備、独占欲

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 エルツが目覚め、特訓に励むようになってから一ヶ月が経った。

 体力面でもだいぶ鍛えたし、魔法に関しては、障壁魔法はすでに俺以上の使い手だと思っている。

 満遍なく教えるよりは、まずは一点特化させた方がいいとの判断だったのだが……経った一ヶ月で上級冒険者の魔法士レベルに達するとは思いもしなかった。

 いけて中級くらいだと思っていたのに、魔法に関しては俺の想像を越えてくるエルツの成長性が楽しい。

 自分の身を守るのも、モンスターを倒す事も十分にできる腕前だと判断して、次は実戦経験を積ませる事にした。

 エルツの部屋を訪ねて、今まで溜め込んでいた装備を与えていく。

 売るよりもいつか役に立つんじゃないかと思って、取っといた自分を誉めつつ、現状で最高の装備を選んだ。

 エルツは身の丈に合わない装備だと萎縮してるが、高性能装備で慢心するやつじゃないし、毎回装備を買い換えるよりは最初から良いものを使った方が体にも馴染む。

 それに、実戦経験さえ積めば、エルツはあっさりとその実力に見合った階層にたどり着ける。

 俺の補助すら必要ない状態でな。いや……俺の方がエルツに頼りきりになる可能性だってある。

 それほどにエルツの魔法の才は、素晴らしかった。

「じゃ、これで明日ギルド行った後ダンジョンな」

 一流の装備に身を包まれ震えているエルツにそう告げれば、驚愕した声と周りを気にする言葉が上がる。

 まあ、奴隷のエルツが着てたら周りのヤツらから視線は向けられるだろうが、これだけの装備与えてたらただの奴隷じゃねぇって事も周りに伝わる。

 装備を狙うヤツらもいるだろうが、俺の側から放さなけりゃ、最大の威嚇にもなるだろうし、気にする必要なんてなかった。

 探索中の安全を優先する事を主張すれば、エルツは渋々頷く。

 高い装備を与えられることより、探索中に俺へと迷惑をかける事の方が抵抗があったのだろう。

 明日、ギルドでたむろしている万年中級以下の冒険者達に絡まれる事を予想しながらも、ギルドへは最初の一回連れていくだけでいい。

 シャマにも会わせなくてもいいだろう。忙しいだろうし……あいつは奴隷に関しては中立寄りだからなんか言われそうだ。

 あと……今はギルドマスターをしているが元特級冒険者の魔法士。エルツを気に入られても困る。

 才能のある芽は育てたいと思うのが、年長者の悪いところだ。

 エルツは、俺が育てると決めたのだからあいつには譲らねぇ。

 そんな事を思いながら、着込んだ装備を外していくエルツを眺めていた。
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