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第一部:番外編
ヘルト視点1:発見、再会、購入
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最初に気づいたのは、その魔力のおかげだった。
ギルドからの帰り道。通りかかった奴隷商の前で奴隷が立たされていた。
細い、明らかに戦闘奴隷ではなく、冒険者向けの雑用兼用の性奴隷だと気づいた。
普段であれば、不快な思いこそあれ、通り過ぎるはずだった。
だが、その細い体に秘められた膨大な魔力に覚えがあった。
どうしてお前がここにいる。
「……エルツか?」
問いかけるような言葉だったが確信していた。
最後に故郷へ帰った時にやけに懐いてきた子供。
呼ばれた事に気づき、エルツが顔をあげる。
冒険者になりたいと目を輝かせていた瞳は、澱み……今まで見てきた奴隷と同じく絶望を浮かべていた。
「はい……」
小さく絞り出された声。いても立ってもいられずにすぐに商談を申し込んで買い上げた。
家に向かう最中も大人しくついてきて、小さい頃の面影はない。
友人二人と共に冒険者になると笑っていた面影はなかった。
家に着き、話を聞く。
家族に売られた事。
友人に置いていかれた事。
なぜ、そんな事になったのかと声を荒げたくなった。
友人達がエルツを置いていった理由はわからないが……それでも、エルツを追い詰める理由になったのは間違いないだろう。
そして、口ぶりからしたら家族からだけではなく、村人からの扱いも悪かったのだろう。
そうでなければ、ここまで人に萎縮する性格ではなかったはずだ。
田舎特有の力仕事のできない男を村八分にする特性。
うちの村でもその傾向はあると思っていたが、それを家族にまで向けるようになっているとは思わなかった。
最後に帰った時、エルツには魔法の才能があると言えば友人達は連れていっただろうか?
少しでも魔法の手解きをしてやればよかっただろうか?
だが、才能があると告げられたヤツが同期から疎外され、一人で無茶をして死んでいった姿も知っている。
才能を過信して、死んでいったヤツすら知っている。
ましてや、成人もしていない子供にそんな事をいったらどうなるか……どれだけ聞き分けのいい子供でも、俺の言葉を信じた結果森へと迷い獣に喰われる未来しか見えなかった。
だが、後悔しても仕方がない。
エルツは既に奴隷になってしまっている。
だが、奴隷から解放方法はあった。
ダンジョンから発見される解呪薬。呪いに近い契約魔法である隷属魔法にはそれが効いた。
だから、俺自身の覚えた罪悪感を軽くする為にそれを探す事を提案したのだ。
「そ……そんな……ヘルトさんに、迷惑を……かける、わけには……」
俺の言葉にエルツは、遠慮する素振りを見せたが俺にもダンジョンに潜る理由があった。
失った右腕をダンジョン産の魔導義手として取り戻すという目的が。
だから、失った右腕を見せた。普段は人が作った劣化版の魔導義手を着けているが、肩から僅かに腕を残して、その先には何もない。
友を、仲間を……守った勲章ではあるが、袂を分かった原因でもあった。
それを見せ、俺の覚悟とそんな俺を利用して見せろと発破をかけた。
俺の生きざまが、こいつの死にかけた心を……消えかけた希望の炎を新たに燃え上がらせるのを期待して。
「僕……諦めたくない。諦めたくないです……!」
「よし!よく言った!」
涙で赤くなった目元。だけど、俺を見つめる目にはほんの少しだけ力強さが戻っていた。
それは、幼い頃に見せていた視線を思い起こさせるもので……ホッとしたのと同時にすごく嬉しくなったのだった。
ギルドからの帰り道。通りかかった奴隷商の前で奴隷が立たされていた。
細い、明らかに戦闘奴隷ではなく、冒険者向けの雑用兼用の性奴隷だと気づいた。
普段であれば、不快な思いこそあれ、通り過ぎるはずだった。
だが、その細い体に秘められた膨大な魔力に覚えがあった。
どうしてお前がここにいる。
「……エルツか?」
問いかけるような言葉だったが確信していた。
最後に故郷へ帰った時にやけに懐いてきた子供。
呼ばれた事に気づき、エルツが顔をあげる。
冒険者になりたいと目を輝かせていた瞳は、澱み……今まで見てきた奴隷と同じく絶望を浮かべていた。
「はい……」
小さく絞り出された声。いても立ってもいられずにすぐに商談を申し込んで買い上げた。
家に向かう最中も大人しくついてきて、小さい頃の面影はない。
友人二人と共に冒険者になると笑っていた面影はなかった。
家に着き、話を聞く。
家族に売られた事。
友人に置いていかれた事。
なぜ、そんな事になったのかと声を荒げたくなった。
友人達がエルツを置いていった理由はわからないが……それでも、エルツを追い詰める理由になったのは間違いないだろう。
そして、口ぶりからしたら家族からだけではなく、村人からの扱いも悪かったのだろう。
そうでなければ、ここまで人に萎縮する性格ではなかったはずだ。
田舎特有の力仕事のできない男を村八分にする特性。
うちの村でもその傾向はあると思っていたが、それを家族にまで向けるようになっているとは思わなかった。
最後に帰った時、エルツには魔法の才能があると言えば友人達は連れていっただろうか?
少しでも魔法の手解きをしてやればよかっただろうか?
だが、才能があると告げられたヤツが同期から疎外され、一人で無茶をして死んでいった姿も知っている。
才能を過信して、死んでいったヤツすら知っている。
ましてや、成人もしていない子供にそんな事をいったらどうなるか……どれだけ聞き分けのいい子供でも、俺の言葉を信じた結果森へと迷い獣に喰われる未来しか見えなかった。
だが、後悔しても仕方がない。
エルツは既に奴隷になってしまっている。
だが、奴隷から解放方法はあった。
ダンジョンから発見される解呪薬。呪いに近い契約魔法である隷属魔法にはそれが効いた。
だから、俺自身の覚えた罪悪感を軽くする為にそれを探す事を提案したのだ。
「そ……そんな……ヘルトさんに、迷惑を……かける、わけには……」
俺の言葉にエルツは、遠慮する素振りを見せたが俺にもダンジョンに潜る理由があった。
失った右腕をダンジョン産の魔導義手として取り戻すという目的が。
だから、失った右腕を見せた。普段は人が作った劣化版の魔導義手を着けているが、肩から僅かに腕を残して、その先には何もない。
友を、仲間を……守った勲章ではあるが、袂を分かった原因でもあった。
それを見せ、俺の覚悟とそんな俺を利用して見せろと発破をかけた。
俺の生きざまが、こいつの死にかけた心を……消えかけた希望の炎を新たに燃え上がらせるのを期待して。
「僕……諦めたくない。諦めたくないです……!」
「よし!よく言った!」
涙で赤くなった目元。だけど、俺を見つめる目にはほんの少しだけ力強さが戻っていた。
それは、幼い頃に見せていた視線を思い起こさせるもので……ホッとしたのと同時にすごく嬉しくなったのだった。
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