【第一部&番外編・完】故郷の英雄と歩む冒険者生活~家族に売られた僕は憧れの冒険者のものになりました~

海野璃音

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第一部:本編

117:また明日から《第一部・完》

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 町に帰ってきてから半月が経った。

 故郷でのスタンピードは、原因ダンジョンの発見により、ひとまず幕を閉じたらしい。

 僕達と共にこの町から応援に出た冒険者もちらほらと帰って来て、ヘルトさんと結果を聞きに行ったギルドで軽く顔を合わせた。

 帰って来た皆はこれからしばらく休みを取るみたいだけど、ダンジョンで顔を合わせたら、よろしくな。と言われて別れた。

 ……あの人達は優しいから好きだ。

 上級冒険者も人によりけりで、自分の利益しか追求しない人もいるらしい。

 だけど、人なんてそんなものだ。いい人もいれば、悪い人もいる。それだけだった。

「それじゃあ、あの村は解体してよりダンジョンに近い場所に町を作る事になったっと」
「ああ、その通りだ」

 ギルドマスターの執務室で故郷がどうなったのかをヘルトさんと共に聞く。

 どうやら、聞いた通りだと故郷はなくなってしまうらしい。

 あの村は、僕の三代か四代前にできた開拓村で歴史はそこまでは古くはない。

 だけど……ううん、だからこそ。自分達で開拓した土地にこだわり、破滅したんだろうなと思った。

 村の人や家族がどうなるかわからない。

 しばらくは領主からの支援もあるだろうけど……あの偏屈で差別的な人達が普通の町で暮らせるとは思わなかった。

「それで、報酬なんだけど……こんな感じになった」
「ふむ……まー、妥当だな。エルツの分が俺の分になっているのは納得いかねぇが」

 ギルドマスターの差し出した紙をヘルトさんの横から覗き込むとそこには報酬の一覧が並んでいる。

 ギルドからの報酬。国からの報酬。その合計金額に息を飲みながらも、一番下に書かれている報酬に動きを止めた。

 ……ソルとルナが、初心者冒険者から中級冒険者に一気にランクアップしてる!

 僕とヘルトさんの後ろで大人しく話を聞いている二人のランクが上がるのは嬉しいけど……僕が主人なのにどんどん置いていかれてるよぉ……。

 そんな事にガッカリしつつもヘルトさんとギルドマスターの話が終わったので、ギルドを後にした。

 大通りを歩きながら、ヘルトさんが呟く。

「さーて、スタンピードの事も片づいたし……また、明日からダンジョン潜るか」
「そうですね」

 ソルとルナを見つけたり、スタンピードで活躍したりしたけど、僕達の目的は、まだ達成されていない。

 ヘルトさんは、ダンジョン産の魔導義手を。僕は、奴隷から脱却する為に解呪薬を探さねばならないのだから。

「ま、とりあえず今日までは休みだ。どっか寄ってから帰ろうぜ。報酬もたんまり入ったし……なんでも買ってやるぞー」
「では、ヘルト様。本が欲しいです」
「実用書も、娯楽用の小説もです」

 ヘルトさんの言葉に早速ソルとルナが欲しいものをあげる。無表情なのに物欲が凄い。遠慮することなくねだっている。僕にあの度胸はなかった。

「エルツ。お前は?」
「……何か、美味しいもの食べたいです」
「じゃあ、屋台にでも行くか」
「はい!」

 今日くらいは、ヘルトさんの散財に付き合うかと、ささやかな希望を告げて歩き出す。

 未だに、目的は達成されていない。

 でも……。

 これから……どんな事があってもヘルトさんの隣にいれば……そして、ソルとルナが側にいてくれる限り……幸せな日々が続くのだろうと思った。


第一部・完
→あとがき
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