【第一部&番外編・完】故郷の英雄と歩む冒険者生活~家族に売られた僕は憧れの冒険者のものになりました~

海野璃音

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第一部:本編

108:帰還

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 故郷から八日。行きとは違い急ぎではないのでゆっくりと馬車を進めて、拠点とする町まで帰ってきた。

 約半月ほど離れていたので懐かしい気分すら覚える。

「おや、早かったね」

 特急馬車を馬屋へと返し、ギルドへと報告へと行けば、そんな事をギルドマスターから言われた。

「こんな事があってな……」
「ああ、大変だったんだね。でも、スタンピードは無事対処できたようでよかったよ。どちらも本当にお疲れ様」

 報告とともに故郷で何があったかをヘルトさんが説明すれば、労りの言葉を貰う。

「今回の依頼の報酬だけど、ギルドからだけでなく国からも出るから楽しみにしておくといい」
「一番頑張ったのは、エルツなんだが……その辺りはどうなる?」
「それは、君への報酬になるかな」

 僕の報酬について、ヘルトさんが尋ねたけど帰ってきたのはそんな言葉で、ヘルトさんが顔をしかめる。

 僕は奴隷だから、どれだけ頑張ってもその働きはヘルトさんの物になるから仕方ない。

「個人的には、評価しているけどね。組織として前例がないから難しいし……国としても同じだと思うよ」
「じゃあ、作れよ前例」
「無茶言わないでおくれよ。私だけじゃどうしようもないんだから」

 冒険者ギルドはこの国だけの組織ではないし、国としても難しいし問題だろう。

「まあ、エルツ君の働きの分もしっかりと用意するから、君から分けて上げたらいいだろう」
「もちろんそうするけどよ……公式に何も残らねぇのは可哀想だろうが」
「気持ちはわかるけどね」

 ヘルトさんがギルドマスターに言いすがるのを聞きながら、奴隷としての身分がどこまでも人ではない事にため息を吐きたくなった。

 この理不尽には、慣れたけど……嫌な気持ちになるのは変わらない。

「だからよー」
「はいはい、できる事はしてあげるから今日は帰った帰った。半月旅してたんだから疲れてるだろう。ここでくだまいてないで帰る!」

 これでもかとギルドマスターに絡んでいたヘルトさんとともに僕達も執務室から追い出される。

 これは、ヘルトさんがちょっと悪いと思う。

 ギルドマスターも忙しいだろうし、決まりも多い中でどうにか対応しようとしてくれているのだから。

 でも、僕の為を思って言ってくれているのは嬉しかったけど。

「くそ、シャマのヤツめ」

 追い出された事に渋い顔をしていたヘルトさんだったけど、ため息をついては、僕へと笑みを向ける。

「帰るか」
「はい」

 長い長い、故郷への旅が終わった。
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