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第一部:本編
102:家族
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兄さんの声をした方を向けば、そこには、兄さんと父さん、母さんが立っていた。
義姉さんはいないけど、みんなボロボロで、兄さんは足が折れているのか足を引きずっていて、鍬を杖代わりに使っている。
父さんは、頭を切ったのか血に染まった包帯を巻いていて、母さんは大きな怪我はないもののあっちこっち擦り傷ができていた。
「ほら! 親父! お袋! 言った通りだろ!」
そんな状態で兄さんは僕を見て叫ぶ。大きな怪我をしているのだから、安静にしていたらいいのに。
「お前、奴隷の癖になんで魔法なんか使えんだ! そいつら誰だよ! おい!」
久しぶりにあって、なぜそんなにも怒鳴られなければならないのか。どうして助けたのに、その事が気に入らなさそうな態度をとるのか……理解ができない。
「まぁまぁ、落ち着け。久しぶりじゃないかエルツ。あの魔法はお前が使ったのか? 凄いじゃないか!」
父さんを兄さんをいさめて声をかけてくる。でも、その言葉は、以前のものとは違い、媚びたようなものに聞こえた。
「おい、何を話しておる。こんな時に」
家族にどう対応しようか迷っているとさらに人がやってくる。村の村長だ。
「ん?そっちにいるのはエルツか? それに……ヘルトではないか!」
村長はヘルトさんに気づき、近寄ってくる。
「なんじゃ! 二度と村に戻らんと言ったのに! 故郷が心配になって来たのか! そうじゃろうそうじゃろう! 大事な土地じゃからな! 以前の事は許してやろう! 助けに来たんじゃから復興にも手を貸してくれるのじゃろう!」
早口で捲し立てる村長の言葉に、僕は何を言っているのかと思う。
ヘルトさんが二度と村に戻らない?以前の事は許す? 何を言っているんだろう?
「今回の事は、依頼で来ただけだ。それ以上の理由はねぇ」
「何を言っておる! 村で育ててもらった恩を忘れたのか!」
「恩? 今回助けに来ただけで十分だろう! 土地ばっかりにこだわって、避難もせず! よそ者には差別! 身内すら異物だと認識したら差別するような村を助けに来ただけ感謝してもらいたいもんだな!」
言いすがる村長にヘルトさんが声を荒げる。
「エルツが売られた時も誰も、止めも助けもしなかったらしいじゃねぇか! 餓えてもいねぇのに! ただ、村では異端だったって理由だけで売って! しかも、こいつの魔法で助けられてんのに、理不尽に文句言いに来てんじゃねぇ!」
村長だけでなく、僕の家族へもヘルトさんの声が飛ぶ。
僕の今の身分に、ヘルトさんがここまで怒っているとは思わなかった。
「落ち着け、ヘルト。そうか、ここはお前達の故郷だったか……」
まだ、怒り足りないヘルトさんをロークさんが止め、ため息を吐く。
「あんたら、まだ治療もされてないんだから戻れ」
「戻るも何も、その子はうちの家族だ。奴隷だなんて関係ない。久しぶりにあったのだから少しくらい話したっていいじゃない」
ロークさんが家族を追い返そうとするも、母さんが家族を強調してくる。
売ったのは母さん達なのに。ヘルトさんが、そう怒ったのになおも家族を強調してくる姿にただただ理解ができない存在がいるのだな……と思った。
「まだ言うか!」
「ヘルトさん。大丈夫です。自分で話します」
ヘルトさんが怒ってくれているからか、どこか冷静な自分がいる。怯える事も、恐れる事もない感覚を不思議に思いながら口を開いた。
義姉さんはいないけど、みんなボロボロで、兄さんは足が折れているのか足を引きずっていて、鍬を杖代わりに使っている。
父さんは、頭を切ったのか血に染まった包帯を巻いていて、母さんは大きな怪我はないもののあっちこっち擦り傷ができていた。
「ほら! 親父! お袋! 言った通りだろ!」
そんな状態で兄さんは僕を見て叫ぶ。大きな怪我をしているのだから、安静にしていたらいいのに。
「お前、奴隷の癖になんで魔法なんか使えんだ! そいつら誰だよ! おい!」
久しぶりにあって、なぜそんなにも怒鳴られなければならないのか。どうして助けたのに、その事が気に入らなさそうな態度をとるのか……理解ができない。
「まぁまぁ、落ち着け。久しぶりじゃないかエルツ。あの魔法はお前が使ったのか? 凄いじゃないか!」
父さんを兄さんをいさめて声をかけてくる。でも、その言葉は、以前のものとは違い、媚びたようなものに聞こえた。
「おい、何を話しておる。こんな時に」
家族にどう対応しようか迷っているとさらに人がやってくる。村の村長だ。
「ん?そっちにいるのはエルツか? それに……ヘルトではないか!」
村長はヘルトさんに気づき、近寄ってくる。
「なんじゃ! 二度と村に戻らんと言ったのに! 故郷が心配になって来たのか! そうじゃろうそうじゃろう! 大事な土地じゃからな! 以前の事は許してやろう! 助けに来たんじゃから復興にも手を貸してくれるのじゃろう!」
早口で捲し立てる村長の言葉に、僕は何を言っているのかと思う。
ヘルトさんが二度と村に戻らない?以前の事は許す? 何を言っているんだろう?
「今回の事は、依頼で来ただけだ。それ以上の理由はねぇ」
「何を言っておる! 村で育ててもらった恩を忘れたのか!」
「恩? 今回助けに来ただけで十分だろう! 土地ばっかりにこだわって、避難もせず! よそ者には差別! 身内すら異物だと認識したら差別するような村を助けに来ただけ感謝してもらいたいもんだな!」
言いすがる村長にヘルトさんが声を荒げる。
「エルツが売られた時も誰も、止めも助けもしなかったらしいじゃねぇか! 餓えてもいねぇのに! ただ、村では異端だったって理由だけで売って! しかも、こいつの魔法で助けられてんのに、理不尽に文句言いに来てんじゃねぇ!」
村長だけでなく、僕の家族へもヘルトさんの声が飛ぶ。
僕の今の身分に、ヘルトさんがここまで怒っているとは思わなかった。
「落ち着け、ヘルト。そうか、ここはお前達の故郷だったか……」
まだ、怒り足りないヘルトさんをロークさんが止め、ため息を吐く。
「あんたら、まだ治療もされてないんだから戻れ」
「戻るも何も、その子はうちの家族だ。奴隷だなんて関係ない。久しぶりにあったのだから少しくらい話したっていいじゃない」
ロークさんが家族を追い返そうとするも、母さんが家族を強調してくる。
売ったのは母さん達なのに。ヘルトさんが、そう怒ったのになおも家族を強調してくる姿にただただ理解ができない存在がいるのだな……と思った。
「まだ言うか!」
「ヘルトさん。大丈夫です。自分で話します」
ヘルトさんが怒ってくれているからか、どこか冷静な自分がいる。怯える事も、恐れる事もない感覚を不思議に思いながら口を開いた。
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