【第一部&番外編・完】故郷の英雄と歩む冒険者生活~家族に売られた僕は憧れの冒険者のものになりました~

海野璃音

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第一部:本編

100:聞き覚えのある声

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「よし! 反撃開始だ! 村人は、坊主に任せて戦えぇ! もう背後を気にする必要もないぞ!」
「「おぉー!」」

 壮年の冒険者が叫び、気合いを入れるように動ける冒険者達が叫び返す。

「坊主、岩壁のてっぺんのところ少しだけ開けてくれ」
「わかりました」

 魔力を操作して、障壁に人の通れる穴を開けるとそこから冒険者達が次々と出ていく。

 岩壁は、僕の身長どころか、ヘルトさんの身長より高いと思うのにひょいひょい越えていく冒険者ってすごいなと思った。

「マスター。そろそろポーションを飲んだ方がいいのでは?」
「あ、そうだね」

 周りから冒険者があっという間に居なくなって、ちょっと呆気にとられてたらルナにポーションを飲むように勧められる。

 魔力に余裕はあるけど、出来るだけ上限を維持した方がいいのは確かだ。

 ポーションの瓶を取り出し、飲んでいると背後から何かを引きずるような足音が聞こえた。

「お前……エルツか?」

 僕を呼ぶ声に体が強張る。聞き覚えのある声……兄さんの声だ。

「おい! エルツだろ! こっちを向けって!」

 苛立つような声に心が乱れそうになる。ダメだ。ここで揺らいじゃダメだ。

 自分に言い聞かせるように、唱えながら消費の激しくなった魔力を押さえようとする。

「おい!」
「失礼ですが、今マスターは、あなた方を守る障壁を張っています。これ以上邪魔をするのであれば、即刻切り伏せます」

 後ろからルナの声と剣を鞘から引き抜く音が聞こえた。

「なっ……じゃ、邪魔なんか……」
「邪魔です。それに、村人は広場の中央で待機するように言われているはずです。引き返しなさい」
「や、やめろ! 剣を向けるな! わかった、わかったから!」

 また、何かを引きずるような足音がして、兄さんが遠ざかっていく。

 その事に安堵し、全てが終わるまで何事もないことを祈る。

 障壁を張り続け、時間だけが過ぎていくように感じたが……障壁の外。徐々にモンスターが障壁を攻撃する感覚が減っていく。

 あと少し……あと少し……。

 そう唱えながらポーションを飲み、ただひたすらに外の戦いが終わるのを耐えた。

 そして、空が赤くなり始めた頃……。

「エルツ! 無事か!」
「ヘルトさん!」

 僕の前にところどころ血を浴びたヘルトさんとソルの姿が現れる。

 スタンピードが終わったのを実感した瞬間だった。
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