【第一部&番外編・完】故郷の英雄と歩む冒険者生活~家族に売られた僕は憧れの冒険者のものになりました~

海野璃音

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第一部:本編

99:村の様子

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「こ、これほどの障壁を一人で……?」
「おい、君! 無理はしてないか!」

 モンスターの侵入を拒む障壁を作り上げた僕に慌てた冒険者達が声をかけてくる。

 だけど、障壁の範囲が大きかったからか思った以上に集中力が必要で喋れそうになかった。

「申し訳ありませんが、今マスターは全力で障壁を張られています。必要な事はわたしが受け付けますので、こちらに」
「え、ああ……そうだよな。すまねぇ坊主嬢ちゃん」

 僕を地面に降ろしたルナが代わりに対応してくれた事に安心しながら障壁に意識を戻す。

「マスター、支給品のアイテムバッグを受けとりますね。こちらがわたしたち所属ギルドからの支給品です」
「ああ、助かった。夜明け前に襲撃されて、被害が大きくてな持ってきていたアイテムも少なくなってたんだ」
「出し惜しみするなと言われておりますので、命の危機にある者や戦える余裕のある者が使うとよろしいかと」
「そうさせてもらう」
「失礼ですが現状の教えていただけますか?外にいるものに連絡する手筈ですので」

 支給品のアイテムバッグも渡った。おそらく、ルナから現状の報告もソルに伝わっている事だろう。

 魔力が障壁に吸われているのを感じながら、一つ目の魔力回復速度上昇のポーションを飲む。

 魔力の消費速度は、これで少し楽になる。ルナ達の時みたいに最初に飲んでおくべきだったな。

「マスター。大丈夫ですか?」

 内への対応も外への対応も任せてしまっていたルナが戻ってくる。

「うん、ちょっと余裕でてきた」
「冒険者の代表者が話したいそうです」

 ルナの言葉に魔力を杖に流しながら振り向けば、壮年の冒険者がいた。

「驚いた。奴隷の坊主が張ってんのか。すげぇなおめぇ」
「ありがとうございます。この中の状況は、どんな感じですか?」

 感心してくれている事に感謝しつつ、状況を尋ねる。

「あー……死者が村人にも冒険者にもいる。警戒していたが、夜明けじゃ守るだけで精一杯だ。寝てる奴らたたき起こして、まとめて、魔法得意な奴に岩壁作らせてからは籠城戦だ」

 すでに死者が出ている事に心が乱れそうになりながらも平静を保つ。

 障壁に影響が出たら一気に崩れるからだ。

「だが、坊主のおかげで立て直せそうだ。外も今頑張ってくれてんだろ? ならこっちも頑張らねぇとな」

 壮年の冒険者が笑みを浮かべる。それは、ヘルトさんのように頼り甲斐のある笑みだった。
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