82 / 146
第一部:本編
82:起動開始
しおりを挟む
魔力が漲る状態で横たわる二体の魔導人形の魔石へと触れる。
「それじゃあ……いきます!」
ヘルトさんが見守る中、僕は魔導人形達へと魔力を注ぐ。
やり方は、魔力循環の応用。魔法を使う時に魔力を注ぐ時と同じだ。
注ぐ、注ぐ、注ぐ、注ぐ。
注ぐ度に魔力が回復しているはずなのに、魔導人形の魔石は絶え間なく僕の魔力を吸っていく。
その底見えない様子に勝負している気分になってきて顔に笑みが浮かんだ。
じわじわと回復しながらも、それが追い付かないくらい体から勢いよく抜けていく魔力。
貪欲な子達だと思いながら、ひたすらに魔力を注ぎ続けた。
やがて、魔力が限界まで少なくなり体がふらりと揺れる。
「エルツ!」
体が崩れ落ちる寸前、慌てたような声とともにヘルトさんの手に支えられた。
「限界までとは言ったが、本当に限界まで注ぐヤツがいるか」
「すみません、なんだか面白くなっちゃって」
心配そうなヘルトさんに笑みを浮かべて謝る。
注ぐのに夢中で、限界を見誤っていたと言ったら怒られそうだ。
「それより、魔導人形は?」
ヘルトさんに支えられながら、横たわっているはずの魔導人形達へと視線を向ける。
そこには、横たわったまま胸の赤い魔石が鼓動するように光る魔導人形達がいた。
だが、その姿は先ほどのまでの明らかに人形だとわかる形からは程遠く、髪の毛の生えていなかった頭には、柔らかそうな髪の毛が生え、無機質な瞳が収まっていた眼孔は瞼に覆われている。
白い陶磁器のような頬には赤みが差し、小さな唇には口紅を塗ったような艶やかさがあった。
そして、体も……球体の間接でできていたはずの体は柔らかな肌に覆われていく。
魔石の鼓動が収まった時。そこには人間の子供と変わらない姿の魔導人形が横たわっていた。
「これは驚いた」
「僕もです」
魔力を回復させながら注いだから、どれだけの量を注いだかはわからない。
だけど、魔導人形が人間と同じような姿になるなんてどんな文献でも読んだ事はない。
そして、ヘルトさんの反応からしても……ヘルトさんも初めて目にした現象のようだった。
しばらく僕らが固まっていると、魔導人形達の瞼が開く。
その瞳は、胸に収まっていた魔石のように澄んだ赤い色をしている。
「「おはようございますマスター」」
二体の魔導人形が起き上がり、僕を見つめる。
どちらも同じ顔をしているが、髪の長さと色が違うからか受ける印象が違った。
一体は、金色の髪が耳が見えるくらいの長さに切り揃えられていて、男の子のような雰囲気を感じる。
もう一体の方は、長い腰までの銀色の髪の毛を持っているせいか女の子のような雰囲気を感じた。
「それじゃあ……いきます!」
ヘルトさんが見守る中、僕は魔導人形達へと魔力を注ぐ。
やり方は、魔力循環の応用。魔法を使う時に魔力を注ぐ時と同じだ。
注ぐ、注ぐ、注ぐ、注ぐ。
注ぐ度に魔力が回復しているはずなのに、魔導人形の魔石は絶え間なく僕の魔力を吸っていく。
その底見えない様子に勝負している気分になってきて顔に笑みが浮かんだ。
じわじわと回復しながらも、それが追い付かないくらい体から勢いよく抜けていく魔力。
貪欲な子達だと思いながら、ひたすらに魔力を注ぎ続けた。
やがて、魔力が限界まで少なくなり体がふらりと揺れる。
「エルツ!」
体が崩れ落ちる寸前、慌てたような声とともにヘルトさんの手に支えられた。
「限界までとは言ったが、本当に限界まで注ぐヤツがいるか」
「すみません、なんだか面白くなっちゃって」
心配そうなヘルトさんに笑みを浮かべて謝る。
注ぐのに夢中で、限界を見誤っていたと言ったら怒られそうだ。
「それより、魔導人形は?」
ヘルトさんに支えられながら、横たわっているはずの魔導人形達へと視線を向ける。
そこには、横たわったまま胸の赤い魔石が鼓動するように光る魔導人形達がいた。
だが、その姿は先ほどのまでの明らかに人形だとわかる形からは程遠く、髪の毛の生えていなかった頭には、柔らかそうな髪の毛が生え、無機質な瞳が収まっていた眼孔は瞼に覆われている。
白い陶磁器のような頬には赤みが差し、小さな唇には口紅を塗ったような艶やかさがあった。
そして、体も……球体の間接でできていたはずの体は柔らかな肌に覆われていく。
魔石の鼓動が収まった時。そこには人間の子供と変わらない姿の魔導人形が横たわっていた。
「これは驚いた」
「僕もです」
魔力を回復させながら注いだから、どれだけの量を注いだかはわからない。
だけど、魔導人形が人間と同じような姿になるなんてどんな文献でも読んだ事はない。
そして、ヘルトさんの反応からしても……ヘルトさんも初めて目にした現象のようだった。
しばらく僕らが固まっていると、魔導人形達の瞼が開く。
その瞳は、胸に収まっていた魔石のように澄んだ赤い色をしている。
「「おはようございますマスター」」
二体の魔導人形が起き上がり、僕を見つめる。
どちらも同じ顔をしているが、髪の長さと色が違うからか受ける印象が違った。
一体は、金色の髪が耳が見えるくらいの長さに切り揃えられていて、男の子のような雰囲気を感じる。
もう一体の方は、長い腰までの銀色の髪の毛を持っているせいか女の子のような雰囲気を感じた。
24
お気に入りに追加
1,923
あなたにおすすめの小説


【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
新しい聖女が見付かったそうなので、天啓に従います!
月白ヤトヒコ
ファンタジー
空腹で眠くて怠い中、王室からの呼び出しを受ける聖女アルム。
そして告げられたのは、新しい聖女の出現。そして、暇を出すから還俗せよとの解雇通告。
新しい聖女は公爵令嬢。そんなお嬢様に、聖女が務まるのかと思った瞬間、アルムは眩い閃光に包まれ――――
自身が使い潰された挙げ句、処刑される未来を視た。
天啓です! と、アルムは――――
表紙と挿し絵はキャラメーカーで作成。

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判
七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。
「では開廷いたします」
家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

大聖女の姉と大聖者の兄の元に生まれた良くも悪くも普通の姫君、二人の絞りカスだと影で嘲笑されていたが実は一番神に祝福された存在だと発覚する。
下菊みこと
ファンタジー
絞りカスと言われて傷付き続けた姫君、それでも姉と兄が好きらしい。
ティモールとマルタは父王に詰め寄られる。結界と祝福が弱まっていると。しかしそれは当然だった。本当に神から愛されているのは、大聖女のマルタでも大聖者のティモールでもなく、平凡な妹リリィなのだから。
小説家になろう様でも投稿しています。

かつて私のお母様に婚約破棄を突き付けた国王陛下が倅と婚約して後ろ盾になれと脅してきました
お好み焼き
恋愛
私のお母様は学生時代に婚約破棄されました。当時王太子だった現国王陛下にです。その国王陛下が「リザベリーナ嬢。余の倅と婚約して後ろ盾になれ。これは王命である」と私に圧をかけてきました。

獣人の子供が現代社会人の俺の部屋に迷い込んできました。
えっしゃー(エミリオ猫)
BL
突然、ひとり暮らしの俺(会社員)の部屋に、獣人の子供が現れた!
どっから来た?!異世界転移?!仕方ないので面倒を見る、連休中の俺。
そしたら、なぜか俺の事をママだとっ?!
いやいや女じゃないから!え?女って何って、お前、男しか居ない世界の子供なの?!
会社員男性と、異世界獣人のお話。
※6話で完結します。さくっと読めます。

生活魔法は万能です
浜柔
ファンタジー
生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。
それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。
――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる