【第一部&番外編・完】故郷の英雄と歩む冒険者生活~家族に売られた僕は憧れの冒険者のものになりました~

海野璃音

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第一部:本編

78:罠

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 初遭遇したオークを倒し、その後も何度か討伐を繰り返しているとヘルトさんが足を止める。

「道変えるぞ」

 ヘルトさんにあわせて足を止めていたら、薄暗い通路を見据えていたヘルトさんが踵を返した。

「わかりました。……罠ですか?」
「ああ」

 来た道を戻りながらヘルトさんへと尋ねれば、頷かれた。

 五層から設置されるようになる罠は、潜れば潜るほど危険性が上がる。

 また、解除することのできるものもあるが、それは本職の斥候……職業盗賊等でなければ対処するのが難しいらしい。

 ただ、ダンジョンの罠は、全てが魔力で発動するものらしく見つけるだけならヘルトさんの魔眼で対応ができた。

「どんな罠だったんですか?」
「魔力の流れからしたら転移だろうな。低層からある罠だが……このあたりからは凶悪性が増す」

 転移罠。それは、同じ階層内のどこかに転移させられるタイプの罠だ。

 ゴブリンやコボルトしかでない低層なら初心者でもない限り、命の危険性は少ないが、中層以降のモンスターだとパーティー内の連携が必要になってくるので分断されると全滅可能性もある罠だった。

「転移罠は誰かがかからなければ消えないタイプの罠だから一応ギルドに報告しとくか。それまでに誰もかからなければいいんだけどな」

 ため息を吐きながら、ヘルトさんがアイテムバッグから地図を取り出す。

 ギルド新聞と違い、羊皮紙でできたそれは魔道具でもあるものだ。

 地図自体は、普通のインクで書かれているのだが、所有者の魔力で新たに印や文字が書けるので、新たな罠を発見したりしたら書き込む事ができる。

 新しい罠に関しては、ギルドにも罠が報告されていれば、ギルドの掲示板張り出されたり、ダンジョン新聞に記載されるほどの情報だった。

「しかし、ここが駄目となると結構迂回が必要なんだよなぁ……最短距離に戻るのも同じくらいかかるし……どうする?」

 迂回するか、戻るか迷っているヘルトさんに僕も頭を悩ませる。

 今、通っている経路は、僕が中層での活動に慣れるために最短距離のルートから少し外れた所だ。

 さっきの通路はこのルートから階段を目指すには必須の通路だったらしい。

 戻るにしてももったいない気がする。今までの通路に隠し部屋はなかったし、最短距離のルートでは隠し部屋なんてほとんどないからだ。

 中層に来るまでに低層で未発見の隠し部屋を何個か見つけたがどれも主要ルートから外れた場所にあった。

 手間ではあるけど、迂回した方が隠し部屋を見つけられるかもしれない……。

「迂回するルートで宝探ししながら行きたいです。体力も問題ないので」
「ならそうするか」

 僕の提案にヘルトさんが頷く。おそらくヘルトさんもそう考えていたのだろうけど、僕の体力を確認しておきたかったのだろう。

「中層まで来たし……なんかいいの見つかるといいな」
「そうですね」

 低層で見つけた隠し部屋の宝箱に入っていたのは、ダンジョン産のポーションや容量の少ないアイテムバッグ、魔導ランプくらいだった。

 どれも初心者の冒険者からしたらちょっとした財産になるけど、ヘルトさんからしたら小金らしく、全部僕にくれた。

 今の装備に比べたら全然高くないけど……それでもポンと奴隷の僕にあげちゃうのはちょっと困ってしまう。

 でも、止める気が無さそうなので、僕は普段の家事やモンスターの殲滅で頑張って返そうと思っている。まあ、恩は増えていくばかりなんだけど……。
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