78 / 146
第一部:本編
78:罠
しおりを挟む
初遭遇したオークを倒し、その後も何度か討伐を繰り返しているとヘルトさんが足を止める。
「道変えるぞ」
ヘルトさんにあわせて足を止めていたら、薄暗い通路を見据えていたヘルトさんが踵を返した。
「わかりました。……罠ですか?」
「ああ」
来た道を戻りながらヘルトさんへと尋ねれば、頷かれた。
五層から設置されるようになる罠は、潜れば潜るほど危険性が上がる。
また、解除することのできるものもあるが、それは本職の斥候……職業盗賊等でなければ対処するのが難しいらしい。
ただ、ダンジョンの罠は、全てが魔力で発動するものらしく見つけるだけならヘルトさんの魔眼で対応ができた。
「どんな罠だったんですか?」
「魔力の流れからしたら転移だろうな。低層からある罠だが……このあたりからは凶悪性が増す」
転移罠。それは、同じ階層内のどこかに転移させられるタイプの罠だ。
ゴブリンやコボルトしかでない低層なら初心者でもない限り、命の危険性は少ないが、中層以降のモンスターだとパーティー内の連携が必要になってくるので分断されると全滅可能性もある罠だった。
「転移罠は誰かがかからなければ消えないタイプの罠だから一応ギルドに報告しとくか。それまでに誰もかからなければいいんだけどな」
ため息を吐きながら、ヘルトさんがアイテムバッグから地図を取り出す。
ギルド新聞と違い、羊皮紙でできたそれは魔道具でもあるものだ。
地図自体は、普通のインクで書かれているのだが、所有者の魔力で新たに印や文字が書けるので、新たな罠を発見したりしたら書き込む事ができる。
新しい罠に関しては、ギルドにも罠が報告されていれば、ギルドの掲示板張り出されたり、ダンジョン新聞に記載されるほどの情報だった。
「しかし、ここが駄目となると結構迂回が必要なんだよなぁ……最短距離に戻るのも同じくらいかかるし……どうする?」
迂回するか、戻るか迷っているヘルトさんに僕も頭を悩ませる。
今、通っている経路は、僕が中層での活動に慣れるために最短距離のルートから少し外れた所だ。
さっきの通路はこのルートから階段を目指すには必須の通路だったらしい。
戻るにしてももったいない気がする。今までの通路に隠し部屋はなかったし、最短距離のルートでは隠し部屋なんてほとんどないからだ。
中層に来るまでに低層で未発見の隠し部屋を何個か見つけたがどれも主要ルートから外れた場所にあった。
手間ではあるけど、迂回した方が隠し部屋を見つけられるかもしれない……。
「迂回するルートで宝探ししながら行きたいです。体力も問題ないので」
「ならそうするか」
僕の提案にヘルトさんが頷く。おそらくヘルトさんもそう考えていたのだろうけど、僕の体力を確認しておきたかったのだろう。
「中層まで来たし……なんかいいの見つかるといいな」
「そうですね」
低層で見つけた隠し部屋の宝箱に入っていたのは、ダンジョン産のポーションや容量の少ないアイテムバッグ、魔導ランプくらいだった。
どれも初心者の冒険者からしたらちょっとした財産になるけど、ヘルトさんからしたら小金らしく、全部僕にくれた。
今の装備に比べたら全然高くないけど……それでもポンと奴隷の僕にあげちゃうのはちょっと困ってしまう。
でも、止める気が無さそうなので、僕は普段の家事やモンスターの殲滅で頑張って返そうと思っている。まあ、恩は増えていくばかりなんだけど……。
「道変えるぞ」
ヘルトさんにあわせて足を止めていたら、薄暗い通路を見据えていたヘルトさんが踵を返した。
「わかりました。……罠ですか?」
「ああ」
来た道を戻りながらヘルトさんへと尋ねれば、頷かれた。
五層から設置されるようになる罠は、潜れば潜るほど危険性が上がる。
また、解除することのできるものもあるが、それは本職の斥候……職業盗賊等でなければ対処するのが難しいらしい。
ただ、ダンジョンの罠は、全てが魔力で発動するものらしく見つけるだけならヘルトさんの魔眼で対応ができた。
「どんな罠だったんですか?」
「魔力の流れからしたら転移だろうな。低層からある罠だが……このあたりからは凶悪性が増す」
転移罠。それは、同じ階層内のどこかに転移させられるタイプの罠だ。
ゴブリンやコボルトしかでない低層なら初心者でもない限り、命の危険性は少ないが、中層以降のモンスターだとパーティー内の連携が必要になってくるので分断されると全滅可能性もある罠だった。
「転移罠は誰かがかからなければ消えないタイプの罠だから一応ギルドに報告しとくか。それまでに誰もかからなければいいんだけどな」
ため息を吐きながら、ヘルトさんがアイテムバッグから地図を取り出す。
ギルド新聞と違い、羊皮紙でできたそれは魔道具でもあるものだ。
地図自体は、普通のインクで書かれているのだが、所有者の魔力で新たに印や文字が書けるので、新たな罠を発見したりしたら書き込む事ができる。
新しい罠に関しては、ギルドにも罠が報告されていれば、ギルドの掲示板張り出されたり、ダンジョン新聞に記載されるほどの情報だった。
「しかし、ここが駄目となると結構迂回が必要なんだよなぁ……最短距離に戻るのも同じくらいかかるし……どうする?」
迂回するか、戻るか迷っているヘルトさんに僕も頭を悩ませる。
今、通っている経路は、僕が中層での活動に慣れるために最短距離のルートから少し外れた所だ。
さっきの通路はこのルートから階段を目指すには必須の通路だったらしい。
戻るにしてももったいない気がする。今までの通路に隠し部屋はなかったし、最短距離のルートでは隠し部屋なんてほとんどないからだ。
中層に来るまでに低層で未発見の隠し部屋を何個か見つけたがどれも主要ルートから外れた場所にあった。
手間ではあるけど、迂回した方が隠し部屋を見つけられるかもしれない……。
「迂回するルートで宝探ししながら行きたいです。体力も問題ないので」
「ならそうするか」
僕の提案にヘルトさんが頷く。おそらくヘルトさんもそう考えていたのだろうけど、僕の体力を確認しておきたかったのだろう。
「中層まで来たし……なんかいいの見つかるといいな」
「そうですね」
低層で見つけた隠し部屋の宝箱に入っていたのは、ダンジョン産のポーションや容量の少ないアイテムバッグ、魔導ランプくらいだった。
どれも初心者の冒険者からしたらちょっとした財産になるけど、ヘルトさんからしたら小金らしく、全部僕にくれた。
今の装備に比べたら全然高くないけど……それでもポンと奴隷の僕にあげちゃうのはちょっと困ってしまう。
でも、止める気が無さそうなので、僕は普段の家事やモンスターの殲滅で頑張って返そうと思っている。まあ、恩は増えていくばかりなんだけど……。
17
お気に入りに追加
1,923
あなたにおすすめの小説



アンドロイドは愛を得る
天霧 ロウ
BL
アンドロイドを持つのが当たり前になった時代。
ある名家は八歳になったらアンドロイドを与えるというしきたりがあった。創造主であるライラからコヨリという名を与えられたアンドロイドの私は助手として彼女とともにその家に訪れた。しかし、理想のアンドロイドを頼めるにもかかわらず、その家の子供――史人は私がほしいと言った。
一悶着あった末、私は彼のものになり十年。すっかり青年に育った彼を見るたびに私の胸のコアや頭の回路はときおり熱を帯びてエラーを吐くようになった。
ムーンライトノベルズにも掲載しております
史人(ふみと)×コヨリ
(SF/主従/俺様一途×天然健気/主×従者/人間×アンドロイド/年下攻め/甘々/溺愛/じれじれ/ハッピーエンド/受視点)


オメガに転化したアルファ騎士は王の寵愛に戸惑う
hina
BL
国王を護るαの護衛騎士ルカは最近続く体調不良に悩まされていた。
それはビッチングによるものだった。
幼い頃から共に育ってきたαの国王イゼフといつからか身体の関係を持っていたが、それが原因とは思ってもみなかった。
国王から寵愛され戸惑うルカの行方は。
※不定期更新になります。

異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました
ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

勇者になるのを断ったらなぜか敵国の騎士団長に溺愛されました
雪
BL
「勇者様!この国を勝利にお導きください!」
え?勇者って誰のこと?
突如勇者として召喚された俺。
いや、でも勇者ってチート能力持ってるやつのことでしょう?
俺、女神様からそんな能力もらってませんよ?人違いじゃないですか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる