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第一部:本編
74:共寝
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テントの中でヘルトさんに遊ばれながらじゃれあって過ごし、僕がうとうとしてきたので寝ることになった。
「新品……」
寝る為にヘルトさん出した二つの寝袋。僕のものは、昨日言われたとおり新品だった。
ヘルトさんの物は、ちょっと使い込まれて草臥れている。
「ヘルトさん、本当にこっちを僕が使うんですか……?」
「使え使えー。俺は使い慣れた方がいいから」
ヘルトさん新品を使ってもらった方がいいんじゃないかって思ったのに、尋ねたそばからヘルトさんは自分の寝袋に入っていく。
……手強い。
僕のちょっとした抵抗を容赦なく回避していくヘルトさんに、しぶしぶ新品の寝袋に潜り込む。……すっごい寝やすい。
ダンジョンの床は石タイルだから硬いのだが、それを感じない。一応寝袋の下に毛布も敷いているけど、この毛布も寝袋も絶対いいやつ!
毛布には、元々ヘルトさんが使っていた形跡があったからなにも言わないけど……ダンジョンでの野営ってこんなに快適でいいの!?寝返りしても体痛くないんだけど!
寝心地が良すぎて、落ち着かないという不思議な現象に襲われながらゴロゴロし続けていると、隣のヘルトさんが動いた気配がした。
「寝れねぇのか?」
「ご、ごめんなさいヘルトさん……! その……寝心地が良すぎて落ち着かなくて」
「ははっ、なんだその理由」
理由を告げれば、ヘルトさんに笑われる。でも、僕も変な理由だというのはわかっていたけど寝れないんだからしょうがない。
「寝心地がいいってよりは、初めての野営で興奮してるんだろ」
……そうなのかな?
「ま、落ち着かねぇならこっちまで来い」
ヘルトさんが寝袋から手を出して僕を招くように呼ぶ。
そして、それに引き寄せられるかのように、僕はコロコロと転がってヘルトさんの寝袋にぴたりとくっつく。
「くくくっ……面白い近づき方してきたな」
「……どれだけ寝返り打ってもいたくなかったので……」
ちょっと子供っぽかったかな? と、恥ずかしくなったけど、ヘルトさんの手が僕の体を寝袋ごとぎゅっと抱き寄せたからそれどころではなくなった。
「へ、へ、へ、ヘルトさん!?」
「はいはい、落ち着け落ち着け。明日も早いんだからさっさと寝るぞー」
慌てる僕にヘルトさんは、子供をあやすように僕の背中を一定のリズムで叩く。
そんなに子供じゃないです! と、叫びたくなったけど、至近距離で目を閉じているヘルトさんの顔があるから叫ぶどころではなかった。
ヘルトさんの男らしい整った顔が目の前にある。
いつもは、優しく見つめてくる瞳が瞼に隠されている。
いつもと違う表情に心が落ち着かなかった。
「新品……」
寝る為にヘルトさん出した二つの寝袋。僕のものは、昨日言われたとおり新品だった。
ヘルトさんの物は、ちょっと使い込まれて草臥れている。
「ヘルトさん、本当にこっちを僕が使うんですか……?」
「使え使えー。俺は使い慣れた方がいいから」
ヘルトさん新品を使ってもらった方がいいんじゃないかって思ったのに、尋ねたそばからヘルトさんは自分の寝袋に入っていく。
……手強い。
僕のちょっとした抵抗を容赦なく回避していくヘルトさんに、しぶしぶ新品の寝袋に潜り込む。……すっごい寝やすい。
ダンジョンの床は石タイルだから硬いのだが、それを感じない。一応寝袋の下に毛布も敷いているけど、この毛布も寝袋も絶対いいやつ!
毛布には、元々ヘルトさんが使っていた形跡があったからなにも言わないけど……ダンジョンでの野営ってこんなに快適でいいの!?寝返りしても体痛くないんだけど!
寝心地が良すぎて、落ち着かないという不思議な現象に襲われながらゴロゴロし続けていると、隣のヘルトさんが動いた気配がした。
「寝れねぇのか?」
「ご、ごめんなさいヘルトさん……! その……寝心地が良すぎて落ち着かなくて」
「ははっ、なんだその理由」
理由を告げれば、ヘルトさんに笑われる。でも、僕も変な理由だというのはわかっていたけど寝れないんだからしょうがない。
「寝心地がいいってよりは、初めての野営で興奮してるんだろ」
……そうなのかな?
「ま、落ち着かねぇならこっちまで来い」
ヘルトさんが寝袋から手を出して僕を招くように呼ぶ。
そして、それに引き寄せられるかのように、僕はコロコロと転がってヘルトさんの寝袋にぴたりとくっつく。
「くくくっ……面白い近づき方してきたな」
「……どれだけ寝返り打ってもいたくなかったので……」
ちょっと子供っぽかったかな? と、恥ずかしくなったけど、ヘルトさんの手が僕の体を寝袋ごとぎゅっと抱き寄せたからそれどころではなくなった。
「へ、へ、へ、ヘルトさん!?」
「はいはい、落ち着け落ち着け。明日も早いんだからさっさと寝るぞー」
慌てる僕にヘルトさんは、子供をあやすように僕の背中を一定のリズムで叩く。
そんなに子供じゃないです! と、叫びたくなったけど、至近距離で目を閉じているヘルトさんの顔があるから叫ぶどころではなかった。
ヘルトさんの男らしい整った顔が目の前にある。
いつもは、優しく見つめてくる瞳が瞼に隠されている。
いつもと違う表情に心が落ち着かなかった。
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