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第一部:本編
73:マジックテント
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ヘルトさんが開けてくれたテントの入り口から中に入ると、テントの中は魔導ランプの光で照らされ明るい。
外のダンジョン内部と比べると、どことなく清涼な感じがするので、テント自体に付与魔法がかけられているのだろう。
「ご主人様。これ、綺麗にした鍋と食器です」
「ん、ありがとな」
洗い終わった鍋と食器をヘルトさんに渡すとヘルトさんはそれをアイテムバッグへとしまった。
「そうだエルツ。このテント、内部の音を外に出さない消音魔法が付与されてるからいつも通り話していいぞ」
「そんなものもあるんですか?」
テントの入り口を閉じるヘルトさんに首を傾げる。
「だいたいダンジョン産だが、上位の冒険者は持ってるな。安全地帯で翌日の探索について話したりするし必須品だ」
「へー。……でも、外の音は聞こえるんですね」
「不思議とな。でも、そのおかげで万が一があっても対応できる。これは、室温が一定に保たれる効果と魔法耐性もあるからダンジョン産マジックテントの中でも一級品だ」
ヘルトさんの説明に、また高そうな物を出してきたと思ったのは言うまでもない。
普段使いしているアイテムバッグも次から次へと物が入るし、あれも相当高い物だと思う。
一人で上級階層まで行けちゃう人だから、これくらいで驚いてちゃいけないんだろうけど。
でも、一生分の驚きは、僕の装備で使った気もしなくもない。
たぶん、しばらくはあの衝撃を超えるものはないだろう。
「じゃあ、この中ならヘルトさんって呼んでもいいんですね」
ヘルトさんの隣に座ればヘルトさんが僕の体を抱き寄せる。
「俺は、外でも呼んでもらっていいんだけどな。結構寂しいんだぞ? 恋人にご主人様って呼ばれるの」
「ひぇっ……」
そして、そんな事を囁かれて変な声が出た。
耳元でそんな事を艶っぽく囁かれたらドキドキがとんでもないことになってしまう。
なんというか、心臓が早鐘のようだ。
「へ、ヘルトさんっ! ドキドキしちゃうからダメです! 心臓がもちません!」
「ははっ、可愛い事言うなぁ」
「ヘルトさんーーーーー!」
両手で距離を取ろうとしたのにそのまま抱きすくめられて、首もとを嗅がれているような気がする。
「駄目ですってばー!」
そんな事されたらいけない気分になっちゃうのに……性的な事まだだって言われてるから僕は辛いのに!
「ヘルトさん~~~~~!」
何度目かの抗議でやっとヘルトさんが僕の首筋から顔をあげる。
「んー、悪い。ちょっと、楽しんじまった」
「もー!」
「はははっ、めちゃくちゃ顔赤いぞ」
それもこれもヘルトさんのせいなのに!
「悪かったって膨れるな膨れるな」
ちょっと頬を膨らましたら、面白そうにつつかれる。本気では怒ってないけど……だからってつついて遊ばないでほしいものだ。
でも、それが嫌じゃないあたり惚れた弱味というやつなのかもしれなかった。
外のダンジョン内部と比べると、どことなく清涼な感じがするので、テント自体に付与魔法がかけられているのだろう。
「ご主人様。これ、綺麗にした鍋と食器です」
「ん、ありがとな」
洗い終わった鍋と食器をヘルトさんに渡すとヘルトさんはそれをアイテムバッグへとしまった。
「そうだエルツ。このテント、内部の音を外に出さない消音魔法が付与されてるからいつも通り話していいぞ」
「そんなものもあるんですか?」
テントの入り口を閉じるヘルトさんに首を傾げる。
「だいたいダンジョン産だが、上位の冒険者は持ってるな。安全地帯で翌日の探索について話したりするし必須品だ」
「へー。……でも、外の音は聞こえるんですね」
「不思議とな。でも、そのおかげで万が一があっても対応できる。これは、室温が一定に保たれる効果と魔法耐性もあるからダンジョン産マジックテントの中でも一級品だ」
ヘルトさんの説明に、また高そうな物を出してきたと思ったのは言うまでもない。
普段使いしているアイテムバッグも次から次へと物が入るし、あれも相当高い物だと思う。
一人で上級階層まで行けちゃう人だから、これくらいで驚いてちゃいけないんだろうけど。
でも、一生分の驚きは、僕の装備で使った気もしなくもない。
たぶん、しばらくはあの衝撃を超えるものはないだろう。
「じゃあ、この中ならヘルトさんって呼んでもいいんですね」
ヘルトさんの隣に座ればヘルトさんが僕の体を抱き寄せる。
「俺は、外でも呼んでもらっていいんだけどな。結構寂しいんだぞ? 恋人にご主人様って呼ばれるの」
「ひぇっ……」
そして、そんな事を囁かれて変な声が出た。
耳元でそんな事を艶っぽく囁かれたらドキドキがとんでもないことになってしまう。
なんというか、心臓が早鐘のようだ。
「へ、ヘルトさんっ! ドキドキしちゃうからダメです! 心臓がもちません!」
「ははっ、可愛い事言うなぁ」
「ヘルトさんーーーーー!」
両手で距離を取ろうとしたのにそのまま抱きすくめられて、首もとを嗅がれているような気がする。
「駄目ですってばー!」
そんな事されたらいけない気分になっちゃうのに……性的な事まだだって言われてるから僕は辛いのに!
「ヘルトさん~~~~~!」
何度目かの抗議でやっとヘルトさんが僕の首筋から顔をあげる。
「んー、悪い。ちょっと、楽しんじまった」
「もー!」
「はははっ、めちゃくちゃ顔赤いぞ」
それもこれもヘルトさんのせいなのに!
「悪かったって膨れるな膨れるな」
ちょっと頬を膨らましたら、面白そうにつつかれる。本気では怒ってないけど……だからってつついて遊ばないでほしいものだ。
でも、それが嫌じゃないあたり惚れた弱味というやつなのかもしれなかった。
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