71 / 146
第一部:本編
71:野営調理
しおりを挟む
予定より早く四層に到着したけど、やることは変わらないので、ヘルトさんの言葉の通り野営の準備に取りかかったのだけど……。
「新しいですね。この魔導コンロ」
僕の目の前には、二つの魔導コンロがある。屋敷にあるものに比べると小型で簡易的な野営用の物だ。でも、買うとしたら高い物であるのは間違いない。
そして、並んだ二つのうち一つがピカピカの新品だった。
「いや……二人で野営するんだし……お前もコンロが二つあった方が便利だろ?」
「野営料理なんてスープがあれば十分だって言ってたのはご主人様じゃなかったでしたっけ?」
「あ、あれはお前に負担をかけたくなくてだな……」
そんな事を言ったのは、僕が野営料理を勉強し始める前の事だったのだが、それを問い詰めればヘルトさんは視線を彷徨わせた。
こういう時は、わかりやすい人だ。可愛いけど、ここで許したらまた同じ事をするので釘を刺しておかないと……。
「……普段家で食う野営料理も美味かったから……ちょっと贅沢したくなったんだよ……」
「わかりました!頑張って作りますね!」
しょんぼりしたように肩を落とすヘルトさんに、僕は二つ言葉で許した。
単純すぎるが、ヘルトさんが期待してくれるならそりゃあ、もう……腕を奮うしかない。
買ってしまった物は仕方ないから有効活用しないとね!
「じゃあ、切るくらいは手伝う」
「あ、それは大丈夫です。僕の仕事ですから」
調理の手伝いをしようとするヘルトさんを制して、調理に取りかかる。
しょんぼりとしているけど、こればかりは譲れないのだ。
ヘルトさんのアイテムバッグから今日の夕食分の材料を取り出してもらって、さくさくと料理を作っていく。
使う道具はコンロと鍋と匙だけだ。
それ以外の切ったりする作業は全部障壁魔法で行う。
これは、最近屋敷でもやっている訓練の一つだ。
空中に設置した障壁の上に食材を置いて、そこに新たな障壁を出現させて刻む。
ダンジョンでゴブリンを倒している時に、もっと精度を高めたいと思うようになったので、日常でも魔法を使っていこうと思いついて編み出した訓練だった。
たぶん、この訓練をしていたから今日のようにまとめてモンスターを思いついたんだと思う。
「それ、ホント上手くなったよな」
「そうですか?」
「魔力が潤沢にあって、才能があればこそだと思うぜ?普通なら魔力はいざとなった時の為に使い控える物だし……一発で均等にみじん切りできるなんてとんでもない精度だからな?」
僕としては、そこまで難しく感じないのだけど、凄腕の冒険者のヘルトさんでも難しいと思うことのようだ。
「これが魔法の訓練を初めて二ヶ月ってのが、信じられねぇんだよなぁ」
「ご主人様の指導の仕方がいいんです
よ」
「障壁魔法を料理に使うようには教えてねぇよ」
苦笑するヘルトさんに、それでもヘルトさんが教えてくれたからだと思っている。
二ヶ月前はただの雑用奴隷だったのだから。
「新しいですね。この魔導コンロ」
僕の目の前には、二つの魔導コンロがある。屋敷にあるものに比べると小型で簡易的な野営用の物だ。でも、買うとしたら高い物であるのは間違いない。
そして、並んだ二つのうち一つがピカピカの新品だった。
「いや……二人で野営するんだし……お前もコンロが二つあった方が便利だろ?」
「野営料理なんてスープがあれば十分だって言ってたのはご主人様じゃなかったでしたっけ?」
「あ、あれはお前に負担をかけたくなくてだな……」
そんな事を言ったのは、僕が野営料理を勉強し始める前の事だったのだが、それを問い詰めればヘルトさんは視線を彷徨わせた。
こういう時は、わかりやすい人だ。可愛いけど、ここで許したらまた同じ事をするので釘を刺しておかないと……。
「……普段家で食う野営料理も美味かったから……ちょっと贅沢したくなったんだよ……」
「わかりました!頑張って作りますね!」
しょんぼりしたように肩を落とすヘルトさんに、僕は二つ言葉で許した。
単純すぎるが、ヘルトさんが期待してくれるならそりゃあ、もう……腕を奮うしかない。
買ってしまった物は仕方ないから有効活用しないとね!
「じゃあ、切るくらいは手伝う」
「あ、それは大丈夫です。僕の仕事ですから」
調理の手伝いをしようとするヘルトさんを制して、調理に取りかかる。
しょんぼりとしているけど、こればかりは譲れないのだ。
ヘルトさんのアイテムバッグから今日の夕食分の材料を取り出してもらって、さくさくと料理を作っていく。
使う道具はコンロと鍋と匙だけだ。
それ以外の切ったりする作業は全部障壁魔法で行う。
これは、最近屋敷でもやっている訓練の一つだ。
空中に設置した障壁の上に食材を置いて、そこに新たな障壁を出現させて刻む。
ダンジョンでゴブリンを倒している時に、もっと精度を高めたいと思うようになったので、日常でも魔法を使っていこうと思いついて編み出した訓練だった。
たぶん、この訓練をしていたから今日のようにまとめてモンスターを思いついたんだと思う。
「それ、ホント上手くなったよな」
「そうですか?」
「魔力が潤沢にあって、才能があればこそだと思うぜ?普通なら魔力はいざとなった時の為に使い控える物だし……一発で均等にみじん切りできるなんてとんでもない精度だからな?」
僕としては、そこまで難しく感じないのだけど、凄腕の冒険者のヘルトさんでも難しいと思うことのようだ。
「これが魔法の訓練を初めて二ヶ月ってのが、信じられねぇんだよなぁ」
「ご主人様の指導の仕方がいいんです
よ」
「障壁魔法を料理に使うようには教えてねぇよ」
苦笑するヘルトさんに、それでもヘルトさんが教えてくれたからだと思っている。
二ヶ月前はただの雑用奴隷だったのだから。
16
お気に入りに追加
1,923
あなたにおすすめの小説

美形×平凡の子供の話
めちゅう
BL
美形公爵アーノルドとその妻で平凡顔のエーリンの間に生まれた双子はエリック、エラと名付けられた。エリックはアーノルドに似た美形、エラはエーリンに似た平凡顔。平凡なエラに幸せはあるのか?
──────────────────
お読みくださりありがとうございます。
お楽しみいただけましたら幸いです。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
新しい聖女が見付かったそうなので、天啓に従います!
月白ヤトヒコ
ファンタジー
空腹で眠くて怠い中、王室からの呼び出しを受ける聖女アルム。
そして告げられたのは、新しい聖女の出現。そして、暇を出すから還俗せよとの解雇通告。
新しい聖女は公爵令嬢。そんなお嬢様に、聖女が務まるのかと思った瞬間、アルムは眩い閃光に包まれ――――
自身が使い潰された挙げ句、処刑される未来を視た。
天啓です! と、アルムは――――
表紙と挿し絵はキャラメーカーで作成。

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判
七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。
「では開廷いたします」
家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

生活魔法は万能です
浜柔
ファンタジー
生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。
それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。
――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

大聖女の姉と大聖者の兄の元に生まれた良くも悪くも普通の姫君、二人の絞りカスだと影で嘲笑されていたが実は一番神に祝福された存在だと発覚する。
下菊みこと
ファンタジー
絞りカスと言われて傷付き続けた姫君、それでも姉と兄が好きらしい。
ティモールとマルタは父王に詰め寄られる。結界と祝福が弱まっていると。しかしそれは当然だった。本当に神から愛されているのは、大聖女のマルタでも大聖者のティモールでもなく、平凡な妹リリィなのだから。
小説家になろう様でも投稿しています。

かつて私のお母様に婚約破棄を突き付けた国王陛下が倅と婚約して後ろ盾になれと脅してきました
お好み焼き
恋愛
私のお母様は学生時代に婚約破棄されました。当時王太子だった現国王陛下にです。その国王陛下が「リザベリーナ嬢。余の倅と婚約して後ろ盾になれ。これは王命である」と私に圧をかけてきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる