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第一部:本編
69:一人での挑戦
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広場から出てすぐは、モンスターと遭遇しなかったのだが、しばらく歩いているとゴブリンソルジャーが率いる群れと遭遇した。
「……前方に群れがいる。数はおそらく五匹」
ヘルトさんの言葉に薄暗い前方へと視線を凝らせば、僕でも確認できる距離にゴブリン達の姿がある。
その中でも、一匹背の高いゴブリンがいるからあれがゴブリンソルジャーなのだろう。
「距離はまだ先だが……せっかく距離があるんだ。エルツ、あの群れをお前のだけで倒せるか?」
こちらに向かっているが距離があった為、ヘルトさんがそんな事を尋ねてくる。
今までは、僕の魔力と体力を考えて、一匹だけだったり、多くてもヘルトさんの補助のもと二、三匹だったから五匹全てを僕だけで……と言うのは初めての体験だった。
「……やってみます」
「よし、任せた」
いつもは、見敵したら剣を抜くヘルトさんが腕を組んだまま僕の横に立つ。
どうやら、僕ならできると信じて任せてくれるらしい。
……期待には応えなきゃ。
前方のゴブリンを纏めて倒す為に魔力を練りながら、倒す方を考える。
僕が習っている魔法は何種類か系統があるけど、今ダンジョンでの使用を許可されているのは、障壁魔法だけだ。
なぜかと言うと、まずは一芸特化で鍛えるというのがヘルトさんの方針だから。
身を守り、敵を倒す事のできる障壁魔法を極める事が僕を一人前の魔法士として育てる近道だとヘルトさんが話していた。
なので、使える魔法は障壁魔法のみ。
いつものように一匹だけを倒すやり方では、残りが激昂して襲いかかってくるから一撃で倒さなければならない。
となると……普段のやり方では、駄目……。
かといって、縦に振り下ろすのではなく、横に幅広く飛ばせば、必要以上に障壁が飛んでいってしまうと他の冒険者が通路の先にいた場合に負傷させてしまう危険性があった。
考えろ……考えろ……そうだ。
「いきます」
纏めて倒す方法を思いつき、握った杖へと魔力を流す。
「対象、前方のゴブリン五匹。断ち切れ! 不可視の盾!」
詠唱とともにこちらに気づいて警戒しながら近づいてきたゴブリン達の回りに円状の障壁が展開する。
そして、瞬きする一瞬の間に五匹のゴブリン達の体が上下に別れていた。
「ほー……純粋に障壁を飛ばすんじゃなくて、円状に展開してから引き絞るように切り飛ばしたか」
「はい!」
僕のやった事を正確に理解しているヘルトさんの言葉に頷く。
同じ魔法でも、詠唱やイメージを変えるだけで変化が起こる。
普段は、見えない障壁が上から振り下ろされるイメージだったけど、今回のものは、ゴブリンの群れを紐で円状に取り囲むようにイメージして障壁を展開し、紐を引き絞る要領で切り飛ばした。
こうすれば、周囲への被害も減らせるし、狙いを外す可能性も少ないと思ったのだ。
「いい創造力じゃないか。流石だぞ。これなら十層までなら問題なく通用するかもな」
「本当ですか!」
「ん、やっぱりお前の才能は間違いない。努力もできるし、もっともっと強くなれるぞ」
頭を撫でながら褒めてくれるヘルトさんに働きが認められて、心が熱くなる。
撫でて貰っている手は、ダンジョンの中なので手袋越しだったけど、いつも以上に嬉しい気がした。
「……前方に群れがいる。数はおそらく五匹」
ヘルトさんの言葉に薄暗い前方へと視線を凝らせば、僕でも確認できる距離にゴブリン達の姿がある。
その中でも、一匹背の高いゴブリンがいるからあれがゴブリンソルジャーなのだろう。
「距離はまだ先だが……せっかく距離があるんだ。エルツ、あの群れをお前のだけで倒せるか?」
こちらに向かっているが距離があった為、ヘルトさんがそんな事を尋ねてくる。
今までは、僕の魔力と体力を考えて、一匹だけだったり、多くてもヘルトさんの補助のもと二、三匹だったから五匹全てを僕だけで……と言うのは初めての体験だった。
「……やってみます」
「よし、任せた」
いつもは、見敵したら剣を抜くヘルトさんが腕を組んだまま僕の横に立つ。
どうやら、僕ならできると信じて任せてくれるらしい。
……期待には応えなきゃ。
前方のゴブリンを纏めて倒す為に魔力を練りながら、倒す方を考える。
僕が習っている魔法は何種類か系統があるけど、今ダンジョンでの使用を許可されているのは、障壁魔法だけだ。
なぜかと言うと、まずは一芸特化で鍛えるというのがヘルトさんの方針だから。
身を守り、敵を倒す事のできる障壁魔法を極める事が僕を一人前の魔法士として育てる近道だとヘルトさんが話していた。
なので、使える魔法は障壁魔法のみ。
いつものように一匹だけを倒すやり方では、残りが激昂して襲いかかってくるから一撃で倒さなければならない。
となると……普段のやり方では、駄目……。
かといって、縦に振り下ろすのではなく、横に幅広く飛ばせば、必要以上に障壁が飛んでいってしまうと他の冒険者が通路の先にいた場合に負傷させてしまう危険性があった。
考えろ……考えろ……そうだ。
「いきます」
纏めて倒す方法を思いつき、握った杖へと魔力を流す。
「対象、前方のゴブリン五匹。断ち切れ! 不可視の盾!」
詠唱とともにこちらに気づいて警戒しながら近づいてきたゴブリン達の回りに円状の障壁が展開する。
そして、瞬きする一瞬の間に五匹のゴブリン達の体が上下に別れていた。
「ほー……純粋に障壁を飛ばすんじゃなくて、円状に展開してから引き絞るように切り飛ばしたか」
「はい!」
僕のやった事を正確に理解しているヘルトさんの言葉に頷く。
同じ魔法でも、詠唱やイメージを変えるだけで変化が起こる。
普段は、見えない障壁が上から振り下ろされるイメージだったけど、今回のものは、ゴブリンの群れを紐で円状に取り囲むようにイメージして障壁を展開し、紐を引き絞る要領で切り飛ばした。
こうすれば、周囲への被害も減らせるし、狙いを外す可能性も少ないと思ったのだ。
「いい創造力じゃないか。流石だぞ。これなら十層までなら問題なく通用するかもな」
「本当ですか!」
「ん、やっぱりお前の才能は間違いない。努力もできるし、もっともっと強くなれるぞ」
頭を撫でながら褒めてくれるヘルトさんに働きが認められて、心が熱くなる。
撫でて貰っている手は、ダンジョンの中なので手袋越しだったけど、いつも以上に嬉しい気がした。
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