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第一部:本編

67:提案

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 食事を作り終わり、食卓を囲んでいるとヘルトさんが話を切り出した。

「そろそろ泊まりでダンジョンに潜ってみないか?」
「本当ですか!」

 ダンジョンに潜りだして15日。半月が経ったわけだけど、今のところ日帰りで帰れる範囲で二日に一回のペースでダンジョンに潜っている。

 だから今まで潜ったのは、三層の入り口である広間まで 。

 二層での宝探しをしながらだから、それほど奥まで潜れなかったのだ。

「じゃあ、明日はもっと深く潜れるんですね!」
「まあ、待て。明日は行っても四層の入り口までだ。そこで一泊してから、引き返す。意外と野営ってのは疲れるからな。まずは、それを体験してからだ」
「……はい」

 泊まりだと聞いて舞い上がりすぎていたと反省。

 ヘルトさんの言うとおり、まだダンジョンでの野営は未経験だから慎重にいくのが当然だろう。

 でも、野営。やっぱりワクワクするのは隠せない。

「野営ってことは、ご飯もダンジョンで作っていいんですよね」
「そうだな。昼飯は、携帯食料になるが、朝と晩は作って貰う事になる」
「頑張ります!」

 野営料理は、雑用奴隷としての教育で習ったし、ヘルトさんが買ってくれた冒険者の執筆した野営レシピ集でも勉強した。

 普段作る料理でもちょこちょこ練習してきたから自信がある。

 だから、今こそ役に立てる時! と、力が入った。

「野営道具は、俺のアイテムバッグに入っているし……お前の分の寝袋も買ったから安心していいぞ」
「……いつの間に買ったんですか?僕、一緒に行ってないですよね?」
「……昨日、食料買いに行った時に」

 昨日は、ダンジョンに潜った日だったけど、早めに切り上げた日でもあった。

 屋敷に帰った後、僕が家事をしている間にヘルトさんに買い物を頼んだのだけど……どうやらその時に買っていたらしい。

「寝袋なんてヘルトさんのお古がありますよね!」
「いやー、せっかくなら新しいの使わせてやりたかったんだよ」
「もー! いつもそれなんですから!」

 装備以上の高い物はないけど、油断するとこうやってすぐ買ってきちゃうから油断ならない。

 これ、野営道具も新調してたりしない? ヘルトさんの事だからしてそう……。

 そんな事を思ってじとりと、ヘルトさんをねめつけるとすっ……っと、視線を逸らされた。

 やっぱり他にも何か買ってるな……。

 まったく……買い与えるのもほどほどにしてほしいものである。

 甘やかすにしても、いっぱい褒めてくれるだけでいいんだから。
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