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第一部:本編

64:許容範囲

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 僕の様子を見ながら笑っていたヘルトさんが表情を変え、真剣な顔つきになる。

「さて……可愛いお前の望む事は、全部叶えてやりたいんだが……一つ待ってほしいものがある」
「? なんでしょう……?」

 真剣な表情のヘルトさんに思い当たる事がなくて首を傾げる。

「お前の事を思っているのは、間違いないんだが……さっき、言ったように俺の中では、お前への認識が子供のままで止まっているところがある」
「僕、十八ですよ……? 小さいから、子供に見えるかもしれませんけど……」

 ヘルトさんからの僕への認識が子供のままな事が悔しい。やっぱり、小さいからなんだろうか……。

「体の大きさは、あんまり関係なくてだな……しっかりしているところもあるけど、まだ心が未熟だろう? 村で孤立していた事も、家族に売られた事も影響はあると思うだが……やっぱり幼さを感じちまうところがあるんだ」

 そう言われると、僕の心の未熟さに気づいてしまう。

 さっき、自分で嘘をついたのにヘルトさんが離れていってしまった事に泣いたり、感情に振り回されるままに言葉を口にしたり……と、子供の癇癪のようだった。

 そう考えるとあまりにも僕は子供っぽい。

「だからな? お前が一人前になるまでは、性的な接触……まあ、抱いたり、抱かれたりは控えようと思うんだ」
「だ、抱く!? 抱かれる!?」

 落ち込んでいたところに予想外の言葉が飛んできて、頭に血が上る。

 思い起こすのは昨日の夢だ。ヘルトさんが僕を抱く夢。それを思い出してしまって、今日一番顔が真っ赤な自信があった。

「そ、そんなっ!? ま、まだ早いですよそんな事!?」
「ああ。だから、お前がもうちょっと成長してからなっ……てわけだ」
「え、あ……あああ、そ……そうですね! それがいいです!」

 抱く抱かれるが先行して、全然話が聞けていなかった。ヘルトさんが苦笑しながら言い直してくれているが、それもなんだか恥ずかしくて駄目だった。

「こりゃ、俺が思うより時間がかかりそうだな」
「うう……ごめんなさい」
「まあ、お前の為ならいくらでも待ってやれるさ。大切な存在だからな」

 顔を手で覆う僕に、ヘルトさんが視界の隠れた向こうで笑っている気がする。

「でも、それ以外ならお前がしてほしい事してやれるぞ?」
「してほしいこと……?」
「たとえば、今みたいに膝に座らせてもいいし、抱き締めたり……キスの一つや二つくらいなら……」
「き、き、き、き、キスぅ!?」

 ヘルトさんと!? ダメダメダメダメ! ほんとーーーーーにっ! 心臓持たない!

「これでも刺激が強いのか。初々しいねぇ」
「あわ……あわわわっ……」

 性的な事は、教育も調教もされたけど……好きな人とはまだ無理ーーーーー!

 でも、想像して慌てるのを僕は繰り返し続けちゃって……それを見ていたヘルトさんが楽しそうだった。
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