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第一部:本編
61:想い
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「迷惑、だとは……わかってます……でも、でも……」
沈黙するヘルトさんにすがりつきながら思いを吐き出す。この苦しい思いを……抱え続ける事ができなかった。
優しいヘルトさんが好き。
かっこいいヘルトさんが好き。
たまに子供っぽい絵に浮かべるヘルトさんが好き。
僕の為に怒ってくれるヘルトさんが好き。
こんなに……僕を見てくれた人はヘルトさんだけだろうから……。
僕を認めてくれて必要としてくれるヘルトさんが好きだった。
きっと……気づいていなかっただけで、初めてこの屋敷で夜を明かした時……捨てられたくないと泣いた時から好きだったんだ。
「ごめんなさい……ごめんなさい……僕なんかが、ヘルトさんを好きになってごめんなさい……」
止まることのない涙で濡れた顔をヘルトさんの肩に押しつけながら謝る。
「でも……嫌いにならないで……捨てないでください……」
捨てられるのが怖い。拒絶されるのが怖い。それなのに言葉が止まらなかった。
「……大丈夫。嫌いにもならないし、捨てたりしねぇよ。なんだってしてやりたくなるくらい可愛い弟子なんだから」
泣き続ける僕にヘルトさんが呟くように口を開き、優しく背中を撫でる。
嫌いにならない。捨てたりしない。その二つの言葉だけで、今まで抱えていた恐怖が薄まるような気がした。
ヘルトさんが言葉だけで、誤魔化す事はない人だと知っている。
だから、今はそれだけでもいいと思ったんだ。
「お前はただ、俺に憧れてるだけだと思ってたんだが……そうか、そんなになるくらい俺が好きなのか」
考えながら喋るようにヘルトさんがぽつぽつと言葉を溢す。
「……ちょっと待ってくれ。俺も言葉を纏める。少し落ち着かないかもしれないが時間をくれ」
ヘルトさんを悩ませているのは僕だ。ヘルトさんが時間が欲しいと言うのならいくらだって待つ。
「っ……は、い……」
感情から溢れていた言葉とは違って、声がかすれる。それでもなんとか頷いて、言葉を纏めながらも僕を宥めてくれるヘルトさんが喋りだすのを待った。
「あー……なんだ。そのだな……」
考えが纏まったのか喋りだそうとしたヘルトさんの口から出たのは、話し出すのを迷う言葉。
でも、次に出てきたのは僕が予想していなかった言葉だった。
「お前の気持ちには応えてやりたいとは思ってる。だけど、少し気持ちの整理がつかねぇんだ」
沈黙するヘルトさんにすがりつきながら思いを吐き出す。この苦しい思いを……抱え続ける事ができなかった。
優しいヘルトさんが好き。
かっこいいヘルトさんが好き。
たまに子供っぽい絵に浮かべるヘルトさんが好き。
僕の為に怒ってくれるヘルトさんが好き。
こんなに……僕を見てくれた人はヘルトさんだけだろうから……。
僕を認めてくれて必要としてくれるヘルトさんが好きだった。
きっと……気づいていなかっただけで、初めてこの屋敷で夜を明かした時……捨てられたくないと泣いた時から好きだったんだ。
「ごめんなさい……ごめんなさい……僕なんかが、ヘルトさんを好きになってごめんなさい……」
止まることのない涙で濡れた顔をヘルトさんの肩に押しつけながら謝る。
「でも……嫌いにならないで……捨てないでください……」
捨てられるのが怖い。拒絶されるのが怖い。それなのに言葉が止まらなかった。
「……大丈夫。嫌いにもならないし、捨てたりしねぇよ。なんだってしてやりたくなるくらい可愛い弟子なんだから」
泣き続ける僕にヘルトさんが呟くように口を開き、優しく背中を撫でる。
嫌いにならない。捨てたりしない。その二つの言葉だけで、今まで抱えていた恐怖が薄まるような気がした。
ヘルトさんが言葉だけで、誤魔化す事はない人だと知っている。
だから、今はそれだけでもいいと思ったんだ。
「お前はただ、俺に憧れてるだけだと思ってたんだが……そうか、そんなになるくらい俺が好きなのか」
考えながら喋るようにヘルトさんがぽつぽつと言葉を溢す。
「……ちょっと待ってくれ。俺も言葉を纏める。少し落ち着かないかもしれないが時間をくれ」
ヘルトさんを悩ませているのは僕だ。ヘルトさんが時間が欲しいと言うのならいくらだって待つ。
「っ……は、い……」
感情から溢れていた言葉とは違って、声がかすれる。それでもなんとか頷いて、言葉を纏めながらも僕を宥めてくれるヘルトさんが喋りだすのを待った。
「あー……なんだ。そのだな……」
考えが纏まったのか喋りだそうとしたヘルトさんの口から出たのは、話し出すのを迷う言葉。
でも、次に出てきたのは僕が予想していなかった言葉だった。
「お前の気持ちには応えてやりたいとは思ってる。だけど、少し気持ちの整理がつかねぇんだ」
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