【第一部&番外編・完】故郷の英雄と歩む冒険者生活~家族に売られた僕は憧れの冒険者のものになりました~

海野璃音

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第一部:本編

57:宝発見ならず

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 さて、宝探しを始めたのだけど……。

「ありませんねぇ……」
「まあ、二層も人は多いからな」

 一層と同じく、通り道でしかない二層だけど、一層を卒業した人達が探索する階層である事は間違いない。

 それゆえに、隠し部屋だっただろう部屋を見つけることはあっても、未開封の宝箱が残っている事はなかった。

「今日は、これくらいにして帰るか」

 二層の入り口から近い場所とはいえ、携帯食料での昼食を挟みつつ、四時間くらい探している。

 その間にもたくさんゴブリンとコボルトを倒しているので体力は残っているけど、帰りの体力と帰ったあとの家事の時間を考えたらそろそろ頃合いだった。

「残念ですけど、そうですね」
「まあ、明日もあるし、これからも潜るんだ。いつか見つけられるさ」
「はい」

 ヘルトさんの励ましに頷き、来た道に戻る。

 二層の広間に戻るまでにまた現れたモンスターを倒しながら進み、階段を上って、今度は最短距離で一層を抜けた。

「ダンジョンから出るとなんだか解放された気分になりますね」

 ダンジョンから出ると、肌に感じる太陽の熱や吹き抜ける風が心地いい。

「あれだけ広くても閉塞感を感じるからな。いつモンスターと会うかもわからないし緊張もしてるんだろう」

 外の空気を堪能する僕を見てヘルトさんが笑う。

「確かにそう言われたらそうかもしれません」

 やはりどれだけ整った場所でもダンジョンはダンジョンなのだろう。

「さー、帰ったら訓練だな」
「今日もやるんですか!?」
「厳しくって言ったのはお前だろ?」
「……はい」

 そう、厳しくと言ったのは僕だ。

 でも、帰ったらちょっと休憩して、必要な事を終わらせたら、今日のダンジョンの復習に本と新聞読みたかったんだけどな……。

「はははっ、そんなにあからさまに落ち込むなって、ちゃんと探索分も含めて加減してやるから」

 しょんぼりとした僕の背中をヘルトさんが叩きながら、僕らは帰路へと着いた。
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