【第一部&番外編・完】故郷の英雄と歩む冒険者生活~家族に売られた僕は憧れの冒険者のものになりました~

海野璃音

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第一部:本編

54:通路の先

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「圧巻だろう?」
「……はい」

 呆然とする僕にヘルトさんが笑う。

「この部屋は安全地帯だからしばらく見てても良いが……そこだと邪魔になる。少しズレよう」
「あっ、ごめんなさい……」

 そういえば、階段の出入り口だった。そのままここにいたら邪魔になるだろう。

 ヘルトさんに言われたとおり、広い部屋の端の方で天井を見上げる。

 やっぱりすごい作りだ。こんなにも広い部屋なのに、柱のないアーチ型の天井なんだもの。

 僕が天井を眺めている間にも、何人かの冒険者がこの広間から続く通路へと潜っていった。

「……ごめんなさいご主人様。もう大丈夫です」
「もういいのか?」
「はい」

 いつまでも見ていたいところだけど、さすがにここで一日を潰すわけにはいかない。

 とりあえず満足したので、他の冒険者達のようにダンジョンの奥へ向かってもらうことにした。

「それじゃあ、二層を目指しつつ、お前の実戦も兼ねてモンスターと戦ってみよう」
「お願いします」

 ヘルトさんからの提案に頷き、歩きだしたヘルトさんの後を追う。

 このダンジョンのモンスターは、一層ごとに種類が増えていくらしい。

 人工ダンジョンと呼ばれる類いのダンジョンの基本知識の一つだ。

 このダンジョンでの第一層のモンスターは、ゴブリン。

 亜人系のモンスターが多いのも人工ダンジョンの特徴だろう。

「二層までどれくらいなんですか?」
「まっすぐ行けば、およそ一時間くらいか。ただ、モンスターと戦う事を考えたら二時間ぐらいだと思う」

 このダンジョンは第二十階層までは到達者がいるらしく、攻略も進んでいる。

 第一層は、通り過ぎる人も多いので横道に入るとモンスターが溜まっていたりするようだ。

 まあ、それを討伐して魔石を取るのを専門にしている人や低階層であっても隠し部屋にあるお宝を狙う人もいるらしいけど。

「それじゃあ、少し外れた道を通っていくんですね」
「そうなるな」

 そんな事を話しながら、入り口の広間にいくつかある大きな通路へと僕達も足を踏み入れる。

 通路の高さは、二階建ての屋根くらいあり、幅も長槍を振り回しても余裕があるほどに広い。

 曲がり角こそ度々現れるが、それでも見晴らしのいいダンジョンだった。

「ダンジョン新聞や本に書かれてたとおり広いダンジョンですね。罠は五階からでしたっけ?」
「そうだ。といっても、十階までは即死性の少ない罠が多い。十一階からは殺意がグッと上がるから潜る時は油断するなよ」
「はい!」

 ダンジョンを歩きながら、ダンジョンの詳細を聞くのは、実地訓練のようだ。

 ううん、実戦の方が正しい。

 隣にヘルトさんが居るからって訓練気分じゃ駄目だ。気を引き締めていこう!

 緩んでいた気持ちを引き締めて、通路を歩く。

 そして、曲がり角に差し掛かった時。ヘルトさんが僕に止まるように指示した。
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