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第一部:本編
50:冒険者ギルド
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何事もなく、登録が済む事を祈っていると、ついに冒険者ギルドへと到着する。
そこは早朝だと言うのに賑やかだった。それこそ宴会しているかのように。
……嫌な予感しかしない。
「エルツ、行くぞ」
立ち止まった僕にヘルトさんが振り返り声をかけてくる。
そうだ、これくらいで怯んでなんかいられない。
「……はい」
覚悟を決めてヘルトさんとギルドへと入れば、正面には受付、右手の壁には、依頼書が張られており、左手側にはギルドに併設された酒場で多くの冒険者が酒盛りをしていた。
「おお? オルデン卿じゃねぇーか! 最近、姿を見せなかったから引退したかと思ったぜ!」
「それが、噂の愛玩奴隷かー! 先月、色々買い与えてる所見たやつがいるって聞いたぞー!」
「奴隷否定派じゃなかったのかー!」
「色は地味だが、可愛い顔してるじゃねぇか! 飽きたら貸してくれよー!」
「ん? ありゃ、奴隷商店先で御披露目されてる時に見た奴隷じゃねぇか! 初物で男も女も知らねぇらしいぜ! 性奴隷としても使えるように尻も体も淫乱に仕上げてあるって話だったぜ!」
「ってことは、なんだ。本当に毎晩しっぽりやってんのか?」
「あのオルデン卿が小僧相手に色ボケとは笑わせるな!」
お酒に酔っているせいなのか、酒場にいる冒険者は口々に下卑た言葉を僕らに投げかけてくる。
その中には、僕のお披露目時に購入を考えた冒険者もいたようで、僕の調教記録の内容さえ明かされていた。
「っ……」
どうして、ここまでの辱しめを受けなければならないのか。
どうして、ヘルトさんにまでその言葉が向くのか。
あまりに良心のない行いに、羞恥心や悔しさで心の中がいっぱいになった。
「言いたいことはそれこそだけか?」
淡々とした。だけど、怒気の滲む声がギルド内に静かに響き渡る。
それだけで、騒がしく笑っていた酒場が静まりかえった。
「日銭を稼いで飲んだくれているお前らに付き合っている時間はない。しばらく黙っていろ」
本気でヘルトさんが怒っていると感情をあらわにしたからか、あれだけ囃し立てていたのに皆が青ざめ、口をつぐんでいるのは、不思議な光景だろう。
「エルツ。こっちだ」
「……はい」
立ちすくんでいた僕の肩にヘルトさんが手を起き、一緒に受付まで向かうように促す。
「おはようございます、ヘルト様。酒場の者達が失礼を働き申し訳ありません」
ヘルトさんが受付の前に立つと受付にいた職員が深々と頭を下げる。
「酔っぱらいどもの責任をギルドにとやかく言うつもりはねぇよ。それより、所有奴隷登録を頼む」
「かしこまりました。では、名前と登録役職をお願いします」
「エルツ。パーティーでの役職は魔法士だ」
「ありがとうございます。では、こちらの認識票と記憶球へ触れさせてください」
僕が特に何かをするまでもなくヘルトさんと職員の間で話が進み、書類を記入していた職員が僕の前へと札の付いた首紐と水晶を置く。
「エルツ」
「はい」
ヘルトさんに促されて、その二つに触れれば、札……認識票には僕の名前と所有者であるヘルトさんの名前が浮かび、水晶が淡く光った。
「これにて登録完了しました」
職員がそういって認識票をヘルトさんに渡し、ヘルトさんから僕に渡ってきたので大人しく首にかける。
これが、僕がヘルトさんの物だという登録とダンジョンに入る許可を得た証明になるのだ。
これでようやく憧れたダンジョンに入ることができる。
そう考えると、嫌な言葉を投げかけられたけど、ギルドに来てよかったと思えた。
そこは早朝だと言うのに賑やかだった。それこそ宴会しているかのように。
……嫌な予感しかしない。
「エルツ、行くぞ」
立ち止まった僕にヘルトさんが振り返り声をかけてくる。
そうだ、これくらいで怯んでなんかいられない。
「……はい」
覚悟を決めてヘルトさんとギルドへと入れば、正面には受付、右手の壁には、依頼書が張られており、左手側にはギルドに併設された酒場で多くの冒険者が酒盛りをしていた。
「おお? オルデン卿じゃねぇーか! 最近、姿を見せなかったから引退したかと思ったぜ!」
「それが、噂の愛玩奴隷かー! 先月、色々買い与えてる所見たやつがいるって聞いたぞー!」
「奴隷否定派じゃなかったのかー!」
「色は地味だが、可愛い顔してるじゃねぇか! 飽きたら貸してくれよー!」
「ん? ありゃ、奴隷商店先で御披露目されてる時に見た奴隷じゃねぇか! 初物で男も女も知らねぇらしいぜ! 性奴隷としても使えるように尻も体も淫乱に仕上げてあるって話だったぜ!」
「ってことは、なんだ。本当に毎晩しっぽりやってんのか?」
「あのオルデン卿が小僧相手に色ボケとは笑わせるな!」
お酒に酔っているせいなのか、酒場にいる冒険者は口々に下卑た言葉を僕らに投げかけてくる。
その中には、僕のお披露目時に購入を考えた冒険者もいたようで、僕の調教記録の内容さえ明かされていた。
「っ……」
どうして、ここまでの辱しめを受けなければならないのか。
どうして、ヘルトさんにまでその言葉が向くのか。
あまりに良心のない行いに、羞恥心や悔しさで心の中がいっぱいになった。
「言いたいことはそれこそだけか?」
淡々とした。だけど、怒気の滲む声がギルド内に静かに響き渡る。
それだけで、騒がしく笑っていた酒場が静まりかえった。
「日銭を稼いで飲んだくれているお前らに付き合っている時間はない。しばらく黙っていろ」
本気でヘルトさんが怒っていると感情をあらわにしたからか、あれだけ囃し立てていたのに皆が青ざめ、口をつぐんでいるのは、不思議な光景だろう。
「エルツ。こっちだ」
「……はい」
立ちすくんでいた僕の肩にヘルトさんが手を起き、一緒に受付まで向かうように促す。
「おはようございます、ヘルト様。酒場の者達が失礼を働き申し訳ありません」
ヘルトさんが受付の前に立つと受付にいた職員が深々と頭を下げる。
「酔っぱらいどもの責任をギルドにとやかく言うつもりはねぇよ。それより、所有奴隷登録を頼む」
「かしこまりました。では、名前と登録役職をお願いします」
「エルツ。パーティーでの役職は魔法士だ」
「ありがとうございます。では、こちらの認識票と記憶球へ触れさせてください」
僕が特に何かをするまでもなくヘルトさんと職員の間で話が進み、書類を記入していた職員が僕の前へと札の付いた首紐と水晶を置く。
「エルツ」
「はい」
ヘルトさんに促されて、その二つに触れれば、札……認識票には僕の名前と所有者であるヘルトさんの名前が浮かび、水晶が淡く光った。
「これにて登録完了しました」
職員がそういって認識票をヘルトさんに渡し、ヘルトさんから僕に渡ってきたので大人しく首にかける。
これが、僕がヘルトさんの物だという登録とダンジョンに入る許可を得た証明になるのだ。
これでようやく憧れたダンジョンに入ることができる。
そう考えると、嫌な言葉を投げかけられたけど、ギルドに来てよかったと思えた。
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