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第一部:本編

49:出発

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 この日、僕は久しぶりに町へ出る。

 あの買い物に行った日以降、訓練を優先していたから屋敷から出ていなかったのだ。

「あの……フードは被った方が良いでしょうか?」

 こんな高価な装備を奴隷が着ていると言うことを誤魔化すべきか悩んでヘルトさんに尋ねる。

 奴隷の証である頬の奴隷紋は、隠す事を禁じられているが、フードを深く被るくらいは咎められる事はない。

 ただし、問われたらフードを脱ぐのが条件で、奴隷であるのに拒んだら罰せられる事もあるのだけど。 

「んー……いや、どうせなら隠さずに見せておけ。俺のものだって認識されていた方が身を守れそうだ」

 僕の問いにヘルトさんは少し考えてから答えてくれる。

 確かに、ヘルトさんの物だと認識されていた方が安全かもしれない。

「さて、久しぶりのダンジョンだ。ワクワクするな。お前も楽しみだろ? 初ダンジョン」
「はい!」

 ヘルトさんは、僕の訓練をする為にこの一ヶ月ダンジョンには潜らずに徹底的に訓練をつけてくれた。

 買い物などには、僕が訓練後なんとか家事をやっている間に行ってくれていたが、それでも付きっきりと言えるほどに面倒を見てくれたから感謝しかない。

 支度を整えた僕達は、屋敷を出て、ひとまずギルドへ向かう。僕の登録を行うためだ。

 奴隷は、冒険者として登録はできないけど、冒険者の所有物として登録しないとダンジョンに入る事ができない。

 だから、僕はヘルトさんの所有奴隷として、冒険者ギルドに登録されるのだ。

「……こんな手段しかなくて悪いな」
「いえ、ご主人様と探索できるのが楽しみです」

 外行きの言葉づかいに気をつけながら、早朝の為人通りの少ない道を歩く。

「そうか」

 所有物として登録する事を僕より気にしているのはヘルトさんだ。

 人が奴隷として扱われること事態に否定的なヘルトさんだからだろう。

 僕がダンジョンに潜る為には、所有奴隷登録が必要だと初めて伝えられた時からこうして度々謝罪を貰う。

 仕方のない事だと思うんだけど、ヘルトさん的には心苦しいらしい。

 そんなところが優しい人だと思うんだけど。

 ぽつりぽつりと喋りながら、歩いているとギルドのある町の中心部へと到着し、冒険者らしき人がちらほらと歩くようになってくる。

 ……なんだか、緊張してきたな。初めてギルドに入るものそうだけど……僕のせいでヘルトさんに迷惑がかかってしまいそうで。

 ああ……どうか、ヘルトさんに迷惑がかかるような事は置きませんように!

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