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第一部:本編

47:装備

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 まあ、屋敷の設備が整ったのは喜ばしいことなのでいいとしよう。僕に部屋はこれ以上整えなくていいけども。

 訓練頑張ったご褒美とか言ってポンポンくれるのが怖い。

 ほどほどでいいのに……ほどほどで。弟子と言えど、奴隷でもあるんだから……。

 嬉しくないのかと言われれば、嬉しいんだけどね。でも、次から次貰うのは怖いんだ。本当に。

 これ以上、増えないといいなぁ……と、たそがれていたら部屋の扉が叩かれた。

 もちろん、叩く人は一人しかいない。

 今日の訓練も終えて、家事の合間の自由時間で休んでいたところだったのだが……この時間にヘルトさんが訪ねてくるのは珍しかった。

「はーい。どうしたんですかヘルトさん」
「んー、ちょっと時間貰えねぇかと思ってな」

 筋肉痛の残る体で、扉を開ければヘルトさんがそんな事を言った。

「……? いいですけど……どうしたんですか?」
「それは、これからのお楽しみってやつだ。お邪魔するぜ」

 あ、これはなんか嫌な……嫌な? まずい? 予感がする。

 いつものパターンだと家具を買ってきた時の行動なんだけど……今日はいつもよりヘルトさんの機嫌が良い気がした。

 いったい、今回はなんだろう……。

 何が飛び出してくるかわからないヘルトさんの行動に身構えていたらヘルトさんが手に持っていたアイテムバックを開く。

「最近、体力も回復してきたし、魔法もずいぶん覚えただろ? だから、そろそろダンジョンデビューしても良いんじゃねぇかと思ってよ」
「っ!? 本当ですか!」
「ああ」

 予想していなかった言葉に驚けば、ヘルトさんが笑みを浮かべて頷く。

 だけど、僕はその次に出てきた言葉に硬直した。 

「だから、装備も必要だと思ってな。ダンジョンで手に入れた装備から見繕ってきたんだ」 

 この一ヶ月。訓練だけじゃなくて、ダンジョン新聞を読みあさり、疑問点をしらみ潰しにヘルトさんへ聞いた僕は知っている。

 ダンジョンで手に入れた装備……それは、ヘルトさんが探しているダンジョン産魔導義肢と同じく非常に高価な貴重品である事を。

「いやー、いつかオークションで売ろうと思ってたものがここで役立つとはなぁ」

 ヘルトさんはあっけらかんと笑ってアイテムバックを漁っているが僕は今にも倒れてしまいそうだ。

 それでもヘルトさんは止まってくれないんだけど……。

「まずは、このローブだな。付与魔法がかかっていて、魔法耐性がある。素肌が出てる場所じゃなければ、火の魔法くらっても燃えねぇし、熱くもねぇぞ」

 知ってる。それでこの屋敷五件くらい買える事を。

「で、魔力をあげる指輪と腕輪にネックレス」

 知ってる。それぞれこの屋敷一件分だ。

「そして、これだ。魔法の効果をあげる杖!」

 収納魔法のかかったダンジョン産大容量のアイテムバックから最後に出てきたのは、拳ほどの大きさがある瑠璃色の宝石が付いた杖。

 その価値、最低でもこの屋敷十件分。

 奴隷どころか、普通なら弟子にすら与えない代物のオンパレードに僕は現実から逃避したくなった。
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