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第一部:本編
43:怒り
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「あ、いえ……この奴隷がサボっていたので処罰を……」
「……サボる?その子には、ここで待機するように俺が命じていた。それに、たとえサボっていようと、部外者のお前がその子を罰する権利はない」
どこか怒りの滲むヘルトさんの声と共に、ヘルトさんの足音が聞こえてくる。
「ですが……奴隷ですし……」
「奴隷奴隷というが、その所有者は俺だろう?お前は自分の職人道具を壊されても許すのか?」
「それは……」
ヘルトさんが男を問い詰めながら僕の体を抱き上げ、僕の頭の傷を抑えた。傷は痛むが、大きな温かい手が触れている事に安心する。
「オルデン様! いかがなさいました……か……」
「まだ、話は途中……お、お前は何をやっておるんだ!」
ヘルトさんを追いかけてきた人達が厨房の惨状に言葉を失い、怒声を上げる。
「そちらの連れてきた男が俺の所有物に傷をつけた。どうしてくれる?」
「も、申し訳ございません!」
「不肖の弟子が申し訳ありません!」
ヘルトさんの怒気に綺麗な格好をした男性と年配の男性が謝罪する。おそらく、あの家具屋の店員なのだろう。そして、もう一人は今日呼んだ職人で、僕を殴った人がその人の弟子のようだった。
「謝罪だけで済むとでも?今日頼む予定だったものは、すべて中止だ。その男を連れて出ていけ。家具も持って帰っていい。前金もくれてやる。だが、もう二度とお前達の店は利用しない」
「誠に申し訳ございません!どうか、どうか謝罪の機会を与えていただけませんか!」
怒りのままに言い放ったヘルトさんに店員が言い縋る。
「くどい! この場で叩き切られたくなかったらさっさと出ていけ!」
「ひっ……! た、直ちに!」
ヘルトさんの言葉に店員の男性だけでなく、職人の人も弟子の男も顔色を悪くして、急いで出ていく。
僕らしか居なくなった厨房で僕を抱えるヘルトさんの魔導義手の力が僅かに強くなる。
「……悪い、エルツ。ここに居させたせいで、こんな目にあわせちまって」
「いえ……」
今のは、不運な事故だろう。あの弟子の男がなぜここに入ってきたのかもわからないし、あそこまで激昂する理由もわからない。
だけど、僕がここに居て、あの男が入ってきた。ただそれだけの事で起きた事故だ。
避けられたかもしれないけど、起きてしまった事故。それだけだ。
「頭の傷が深そうだから、保管してる上級ポーションを使う。もうしばらく辛抱してくれ」
「はい……」
触れた時あれだけ温かなぬめりを感じた。おそらく、ヘルトさんの言葉通り深い傷なのだろう。
痛みで動けないでいるとヘルトさんに抱き上げられたのを感じる。だけど、血を流しすぎたのか僕の意識はそこで途切れてしまった。
「……サボる?その子には、ここで待機するように俺が命じていた。それに、たとえサボっていようと、部外者のお前がその子を罰する権利はない」
どこか怒りの滲むヘルトさんの声と共に、ヘルトさんの足音が聞こえてくる。
「ですが……奴隷ですし……」
「奴隷奴隷というが、その所有者は俺だろう?お前は自分の職人道具を壊されても許すのか?」
「それは……」
ヘルトさんが男を問い詰めながら僕の体を抱き上げ、僕の頭の傷を抑えた。傷は痛むが、大きな温かい手が触れている事に安心する。
「オルデン様! いかがなさいました……か……」
「まだ、話は途中……お、お前は何をやっておるんだ!」
ヘルトさんを追いかけてきた人達が厨房の惨状に言葉を失い、怒声を上げる。
「そちらの連れてきた男が俺の所有物に傷をつけた。どうしてくれる?」
「も、申し訳ございません!」
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ヘルトさんの怒気に綺麗な格好をした男性と年配の男性が謝罪する。おそらく、あの家具屋の店員なのだろう。そして、もう一人は今日呼んだ職人で、僕を殴った人がその人の弟子のようだった。
「謝罪だけで済むとでも?今日頼む予定だったものは、すべて中止だ。その男を連れて出ていけ。家具も持って帰っていい。前金もくれてやる。だが、もう二度とお前達の店は利用しない」
「誠に申し訳ございません!どうか、どうか謝罪の機会を与えていただけませんか!」
怒りのままに言い放ったヘルトさんに店員が言い縋る。
「くどい! この場で叩き切られたくなかったらさっさと出ていけ!」
「ひっ……! た、直ちに!」
ヘルトさんの言葉に店員の男性だけでなく、職人の人も弟子の男も顔色を悪くして、急いで出ていく。
僕らしか居なくなった厨房で僕を抱えるヘルトさんの魔導義手の力が僅かに強くなる。
「……悪い、エルツ。ここに居させたせいで、こんな目にあわせちまって」
「いえ……」
今のは、不運な事故だろう。あの弟子の男がなぜここに入ってきたのかもわからないし、あそこまで激昂する理由もわからない。
だけど、僕がここに居て、あの男が入ってきた。ただそれだけの事で起きた事故だ。
避けられたかもしれないけど、起きてしまった事故。それだけだ。
「頭の傷が深そうだから、保管してる上級ポーションを使う。もうしばらく辛抱してくれ」
「はい……」
触れた時あれだけ温かなぬめりを感じた。おそらく、ヘルトさんの言葉通り深い傷なのだろう。
痛みで動けないでいるとヘルトさんに抱き上げられたのを感じる。だけど、血を流しすぎたのか僕の意識はそこで途切れてしまった。
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