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第一部:本編
42:予期せぬ客
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朝食を終えて、僕は厨房に戻って後片付けと昼食の仕込みに取り掛かる事にした。
ヘルトさんは、職人が昼前には来るというのでその受け入れの為に玄関ホールで待機するらしい。
僕は、昨日言われた通り表に出るつもりはないのでお昼までは厨房で過ごすつもりだ。
といっても、片付けも仕込みも早々に終わったから食堂から椅子を一つ持ってきて、魔力循環の自主練習をしているのだけど。
魔力を巡らせるのは、意外と楽しく、体を魔力が駆けまわる速度を速めたり、緩めたりしながら練習する。
早く魔法を使ってみたいと思うのだけど、こういう基礎は大事だと思うからしっかりやらないとね。
集中しているうちに食堂に置かれていた時計から十一時を知らせる鐘が鳴る。そろそろ職人が来る頃かな?
お昼も近い時間だし、そろそろ自主練習を切り上げ昼食を作ろうかと思っていると、廊下に続く厨房の扉が開いた。
ヘルトさんかな? でも、職人の対応をしているんじゃ?と首を傾げながら視線を向けるとそこには知らない僕より少し年上だろう人がいた。
だ、誰だろう?
見た目からすると職人というには若いし……というか、なぜここに?
「あの……ここは、厨房ですがなにか御用でしょうか?」
僕が声をかけるのもどうかと思ったのだけど、扉を開けたまま立ち尽くしている彼に戸惑いながら声をかけると、彼はハッとした表情になった後、すぐに怒りを宿した顔に変わる。
あ……これは、まずいかも……。
そう思い、椅子から立ち上がって距離を取ろうとする前に、若い男の人が僕へと距離を詰め寄り、その拳を振り上げた。
「奴隷の癖になんだその口は!」
「っ!」
立ち上がった僕の左頬に痛みが走ると同時に体がよろめく。なんとか踏ん張ろうとしたけど、細い僕では力仕事をしているだろう人の腕力から繰り出された威力を堪えられるわけもなく……。
殴られるままに倒れる体。しかも運の悪い事に倒れた先に調理台があり、再び痛みが走った。
「あぐ……!」
倒れたまま痛みにうずくまり、ぶつけた場所へと手をあてる。ぬるっとした感覚に切れているのが分かった。
「ここが厨房だと? そんなもんは見ればわかる! 奴隷ごときが俺に指示するんじゃねぇ!」
うずくまる僕に罵声を浴びせながら、男は僕の体を蹴る。なぜ、問いかけただけでこれだけの事をされるのか。
僕が奴隷だとはいえ、ここまで危害を加えられる事を理解できない。だけど、抗議の声は、その怒りに燃料を注ぐだけだろう。僕には、繰り返される痛みに耐えるしかできなかった。
「おい! そこで何をしている!」
頭を庇いながら暴力に耐える僕の耳にヘルトさんの声が聞こえる。それと同時に僕に降り注いでいた暴力が止まり、ほんの少しだけ体から力が抜けた。
ヘルトさんは、職人が昼前には来るというのでその受け入れの為に玄関ホールで待機するらしい。
僕は、昨日言われた通り表に出るつもりはないのでお昼までは厨房で過ごすつもりだ。
といっても、片付けも仕込みも早々に終わったから食堂から椅子を一つ持ってきて、魔力循環の自主練習をしているのだけど。
魔力を巡らせるのは、意外と楽しく、体を魔力が駆けまわる速度を速めたり、緩めたりしながら練習する。
早く魔法を使ってみたいと思うのだけど、こういう基礎は大事だと思うからしっかりやらないとね。
集中しているうちに食堂に置かれていた時計から十一時を知らせる鐘が鳴る。そろそろ職人が来る頃かな?
お昼も近い時間だし、そろそろ自主練習を切り上げ昼食を作ろうかと思っていると、廊下に続く厨房の扉が開いた。
ヘルトさんかな? でも、職人の対応をしているんじゃ?と首を傾げながら視線を向けるとそこには知らない僕より少し年上だろう人がいた。
だ、誰だろう?
見た目からすると職人というには若いし……というか、なぜここに?
「あの……ここは、厨房ですがなにか御用でしょうか?」
僕が声をかけるのもどうかと思ったのだけど、扉を開けたまま立ち尽くしている彼に戸惑いながら声をかけると、彼はハッとした表情になった後、すぐに怒りを宿した顔に変わる。
あ……これは、まずいかも……。
そう思い、椅子から立ち上がって距離を取ろうとする前に、若い男の人が僕へと距離を詰め寄り、その拳を振り上げた。
「奴隷の癖になんだその口は!」
「っ!」
立ち上がった僕の左頬に痛みが走ると同時に体がよろめく。なんとか踏ん張ろうとしたけど、細い僕では力仕事をしているだろう人の腕力から繰り出された威力を堪えられるわけもなく……。
殴られるままに倒れる体。しかも運の悪い事に倒れた先に調理台があり、再び痛みが走った。
「あぐ……!」
倒れたまま痛みにうずくまり、ぶつけた場所へと手をあてる。ぬるっとした感覚に切れているのが分かった。
「ここが厨房だと? そんなもんは見ればわかる! 奴隷ごときが俺に指示するんじゃねぇ!」
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僕が奴隷だとはいえ、ここまで危害を加えられる事を理解できない。だけど、抗議の声は、その怒りに燃料を注ぐだけだろう。僕には、繰り返される痛みに耐えるしかできなかった。
「おい! そこで何をしている!」
頭を庇いながら暴力に耐える僕の耳にヘルトさんの声が聞こえる。それと同時に僕に降り注いでいた暴力が止まり、ほんの少しだけ体から力が抜けた。
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