【第一部&番外編・完】故郷の英雄と歩む冒険者生活~家族に売られた僕は憧れの冒険者のものになりました~

海野璃音

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第一部:本編

40:朝の運動

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 散らかした新聞を片付けて、急いで庭へ出る。

「すみません! お待たせしました!」
「来たか。……まったく、急がなくたっていいっていったのによ」

 走ってきた僕にヘルトさんは苦笑しながら頭を撫でてくれる。

 ……毎回思うけど、ヘルトさん僕の頭撫でるの癖……だよね?

 小さい頃もよく撫でてもらっていたから、受け入れていたけど……これでも十八だ。十五も離れているヘルトさんからしたらまだまだ子供かもしれないし、身長も同じ歳の女の子と同じくらいか、ちょっと小さかったりするから余計幼く見えてたりするのかな……?

 でも、撫でてもらえるのは嬉しいからいいや。

 ヘルトさんが撫でるのを止めるまで、撫でてもらい乱れた髪を直しながら何をするのか尋ねる。

「運動って何をするんですか?」
「基本は庭の柵に沿って内側を走ってる。後は、素振りもするが……お前は、朝食の支度もあるし、最初だから一周か二周走ってみよう」
「わかりました」

 ヘルトさんの言葉に頷きながら気を引き締める。

 この屋敷の庭はすごく広い。僕の実家の畑より広く、村共用の麦畑を一区画二区画といってもいいほどなのだ。

 村にいた時は、力はなくても動くだけなら一日動けたけど……商館暮らしで鈍った体だとバテてしまうかもしれない。

 気合いを入れながら、少し体をほぐして、ヘルトさんと一緒に走り出す。

 久しぶりに動かした体は、意外と動いてくれたけど、やはり体力が落ちていて庭を二周しただけで息があがった。

「俺の速度に着いてきて二周走れただけでも十分だな」

 ぜぇぜぇと息をする僕にヘルトさんは、苦笑というよりは柔らかい笑みを浮かべて僕を見下ろす。

「ダンジョンに行くには心もとないが、これ以上運動のレベルを落とさなくても良さそうだから毎日コツコツ頑張ろうな」
「っ……は、はいっ……」

 ひとまず、ヘルトさん基準で合格?をもらったらしくホッとした。

「俺は素振りしてるから、お前は少し休んだら朝食の準備を頼むな」
「わ、わかり……ましたっ……」

 未だに息の荒い僕の背中を軽くさすってからヘルトさんは素振りを開始する。

 息を整えながら、それを見ていたが、訓練用である木剣は左手だけで持っている。

 魔導義手である右手は、バランスを取ろうと動くことはあるが、木剣に振れることはない。

 それを見て、ヘルトさんが元々両手持ちだったのを思い出す。

 村で見せてもらった時は、両手で剣を扱っていた。でも、今は左手一本だ。

 昔から左利きでは、あった気がするけど……左手だけであれだけ剣が振れるようになるまで、ヘルトさんはどれだけの努力をしたのだろうと思った。
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