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第一部:本編
33:魔力
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クレープでの軽い昼食を終え、少し休んでから予定していた魔力の訓練をする事になった。
場所はこの屋敷で最初に訪れた客室で、僕はヘルトさんと向かい合って座っている。
「魔力ってのは、誰にでもあるが普通に生活する分には使わないものだ。だから、平民は自分の魔力が多くても知らない傾向にある」
まずは、魔力について説明してくれるという、ヘルトさんの言葉を聞き逃さないように耳を傾けた。
「対して、貴族は幼い頃から魔法を使う訓練をするから、生まれつき魔力の高いヤツが重宝されるらしい。ヤツらは、冒険者をするのは少ないが騎士や魔法士として王宮勤めするからだろうな」
「そうなんですね」
平民と貴族でそこまで差があるとは思わず驚く。
「ま、俺も貴族出身の冒険者から聞いただけなんだけどな」
ヘルトさんは、肩をすくめながら話を続ける。
「で、平民が魔力について学ぶのは、冒険者になるか、兵士になるか、傭兵になるかだな。そこで魔力が多いとわかれば、師匠がついて学ぶ事ができる」
「ヘルトさんは、魔法が使えましたよね。ヘルトさんもお師匠様がいたんですか?」
「俺の場合は、冒険者ギルドの講習受けてからは自己流だな。身体強化魔法とちょっとした攻撃魔法の類いは才能があったから受けれた感じだ」
「へぇ」
故郷にいた時に、ヘルトさんの魔法を見せてもらった事があるが、身体強化して、太い木を両断したのを見た時はかっこよかった。
幼い頃は、ああなりたいと思ったのだけど……この細い腕では、魔力が多くても向いていないだろう。
「魔力があるかは、どうやってわかるんですか?」
「普通なら魔力を計る測定器で調べるな?」
「測定器?」
計るというから、秤のようなものだろうか? でも、それならなんでヘルトさんは僕の魔力がわかったんだろう?
「はははっ! わかりやすく不思議そうな顔してるな」
「うっ……」
顔に出ていたのかヘルトさんが笑いを堪えきれないというように笑う。
「俺がお前の魔力がわかるのはこの目さ」
そう言ってヘルトさんが自分の目を指差す。
「目?」
「ダンジョンでは、お宝だけじゃなくて、スキルと呼ばれる魔法とは別の能力が手に入る事がある。俺の目は、魔力を見る事ができるのさ」
今まで聞いたことのなかった話を聞いて耳を疑う。
「そんな事があるんですか!?」
「おう! 解呪薬や魔導義手みたいなものもあるんだ。特殊な能力の一つや二つ、三つあってもおかしくねぇんだなこれが」
流石というべきかなんというか……。冒険者を魅了するダンジョンというのは、僕の理解できる範囲の外にあるらしい。
「こういうスキルに関しては、お宝以上に運が絡んでくる。同じパーティーでも手に入らない事とも多いから、秘密にしているヤツがほとんどだ」
あっけらかんと笑うヘルトさんだったけど、僕は感心どころか呆ける余裕すらなかった。
「そ、そんな事! 僕に言ってもいいんですか!?」
パーティーにすら内緒にする事もある大事なものの話なのに!
「いいんだよ。この目があったから俺はお前を見つける事ができた」
ヘルトさんは落ちつき、穏やかな声で語り出す。
「俺が知っているお前は、小さい子供の姿が最後だった。成長したお前に気づけたのは、お前の魔力が見えたからだ。俺に憧れて冒険者になりたいと思ったお前に気づけたのも幼い頃から魔力の質も量も飛び抜けていたお前だからだ。大成すると思っていた子供が奴隷として使い潰されるのが許せなかった」
静かに語るヘルトさん。この人は、あの時からそれほどまでに僕に期待していた事を改めて実感する。
「奴隷って存在が好きじゃないのは確かだが、誰も彼も助けるわけじゃない。俺は、お前だから欲しかった」
「僕だから……」
「そうだ。魔力しか見られてなかったと失望したかもしれない。だけど、断言する。俺は、お前の師匠として、お前を誰よりも最高の魔法士にしてみせると!」
場所はこの屋敷で最初に訪れた客室で、僕はヘルトさんと向かい合って座っている。
「魔力ってのは、誰にでもあるが普通に生活する分には使わないものだ。だから、平民は自分の魔力が多くても知らない傾向にある」
まずは、魔力について説明してくれるという、ヘルトさんの言葉を聞き逃さないように耳を傾けた。
「対して、貴族は幼い頃から魔法を使う訓練をするから、生まれつき魔力の高いヤツが重宝されるらしい。ヤツらは、冒険者をするのは少ないが騎士や魔法士として王宮勤めするからだろうな」
「そうなんですね」
平民と貴族でそこまで差があるとは思わず驚く。
「ま、俺も貴族出身の冒険者から聞いただけなんだけどな」
ヘルトさんは、肩をすくめながら話を続ける。
「で、平民が魔力について学ぶのは、冒険者になるか、兵士になるか、傭兵になるかだな。そこで魔力が多いとわかれば、師匠がついて学ぶ事ができる」
「ヘルトさんは、魔法が使えましたよね。ヘルトさんもお師匠様がいたんですか?」
「俺の場合は、冒険者ギルドの講習受けてからは自己流だな。身体強化魔法とちょっとした攻撃魔法の類いは才能があったから受けれた感じだ」
「へぇ」
故郷にいた時に、ヘルトさんの魔法を見せてもらった事があるが、身体強化して、太い木を両断したのを見た時はかっこよかった。
幼い頃は、ああなりたいと思ったのだけど……この細い腕では、魔力が多くても向いていないだろう。
「魔力があるかは、どうやってわかるんですか?」
「普通なら魔力を計る測定器で調べるな?」
「測定器?」
計るというから、秤のようなものだろうか? でも、それならなんでヘルトさんは僕の魔力がわかったんだろう?
「はははっ! わかりやすく不思議そうな顔してるな」
「うっ……」
顔に出ていたのかヘルトさんが笑いを堪えきれないというように笑う。
「俺がお前の魔力がわかるのはこの目さ」
そう言ってヘルトさんが自分の目を指差す。
「目?」
「ダンジョンでは、お宝だけじゃなくて、スキルと呼ばれる魔法とは別の能力が手に入る事がある。俺の目は、魔力を見る事ができるのさ」
今まで聞いたことのなかった話を聞いて耳を疑う。
「そんな事があるんですか!?」
「おう! 解呪薬や魔導義手みたいなものもあるんだ。特殊な能力の一つや二つ、三つあってもおかしくねぇんだなこれが」
流石というべきかなんというか……。冒険者を魅了するダンジョンというのは、僕の理解できる範囲の外にあるらしい。
「こういうスキルに関しては、お宝以上に運が絡んでくる。同じパーティーでも手に入らない事とも多いから、秘密にしているヤツがほとんどだ」
あっけらかんと笑うヘルトさんだったけど、僕は感心どころか呆ける余裕すらなかった。
「そ、そんな事! 僕に言ってもいいんですか!?」
パーティーにすら内緒にする事もある大事なものの話なのに!
「いいんだよ。この目があったから俺はお前を見つける事ができた」
ヘルトさんは落ちつき、穏やかな声で語り出す。
「俺が知っているお前は、小さい子供の姿が最後だった。成長したお前に気づけたのは、お前の魔力が見えたからだ。俺に憧れて冒険者になりたいと思ったお前に気づけたのも幼い頃から魔力の質も量も飛び抜けていたお前だからだ。大成すると思っていた子供が奴隷として使い潰されるのが許せなかった」
静かに語るヘルトさん。この人は、あの時からそれほどまでに僕に期待していた事を改めて実感する。
「奴隷って存在が好きじゃないのは確かだが、誰も彼も助けるわけじゃない。俺は、お前だから欲しかった」
「僕だから……」
「そうだ。魔力しか見られてなかったと失望したかもしれない。だけど、断言する。俺は、お前の師匠として、お前を誰よりも最高の魔法士にしてみせると!」
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