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第一部:本編
28:買い物
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仕立屋の次に来たのは雑貨屋だった。雑貨屋? なんで? 本棚買いに行くんじゃないの?
「とりあえずデカいタオル十枚、小さいの二十枚、石鹸一番良いやつ五個、ヘアオイル?も良いやつ五個、化粧水とかもなんかいいのを……え? どれもいろいろ種類がある? じゃあ、適当に任せる。支払いは、これで。夕方に、家まで配達頼む」
雑貨屋の店員と喋りながら次々注文していくヘルトさん。僕が頼むか迷っていたケア用品すら店員のお任せでジャンジャン買っていく。一応封がされていたら劣化はしないだろうけど、それでも思い切って買い過ぎていると思う。
「香水などはいかがですか?」
「あー、あんまり匂いの強いやつはいらねぇんだ。あ、石鹸とか頼んだやつにも匂いの少ないやつ入れておいてくれ」
店員のオススメをバッサリと切って、注文に追加をかけるヘルトさん。店員からしたら買いっぷりの良い上客だから高い物を売りたいんだろうけど、たぶんヘルトさんが要らないというものは買わないんだと思う。
雑貨屋も出て、ヘルトさんの隣を歩いていたら、ヘルトさんから声がかかる。
「さっき、香水断ったけどよ……もしかして必要だったか?」
「いえ、ご主人様が要らないと判断したのなら大丈夫です。それに、僕もあまり匂いの強いものは好みませんから」
「そっか。あ……じゃあ、その辺りも注文つけておけば良かったな。次からはちゃんとお前に聞くわ」
「買っていただけるだけありがたいです……でも、どうして化粧品まで買ってくれたんですか?」
化粧水やヘアオイルなんて、浴室にはなくて、僕が商館から渡されたものだけしかなかった。ヘルトさんは部屋で使っているのだろうか?
「なんでって、お前が使うんだろ?風呂場に置いてあったじゃねぇか」
「その……商館から価値を上げるように言われて使っていただけで……なくなったらそれでもいいかと思っていたんです」
今朝思っていた事を伝えれば、ヘルトさんが少し落ち込んだような顔になる。
「あー……じゃあ、余計なことしたか?」
「そんな!使っても良いのなら喜んで使わせてもらいます!」
「そっか、じゃあ使え使え。それに、髪もサラサラの方が撫で心地がいいからな」
そう言って、ヘルトさんは嬉しそうに僕の頭を撫でた。……撫で心地がいいって喜んで貰えるなら、もうちょっと気を付けて手入れしてみようかな……。
奴隷と主人というには少し親しすぎる会話だったけど、ヘルトさんが喜んでくれるのなら嬉しい。
だけど、幸いにも周りは人が多く、店先の呼び声や雑踏の騒めきに僕らの会話は書き消されていたのか反応はない。その事に安心しながら僕は、ヘルトさんの隣を歩く。
そして、ヘルトさんは僕の心配に気づくことなく豪快に買い物を続ける。
肉屋で塊の肉を三種類くらい買い、八百屋で野菜と果物を程よく買い、食料品店で調味料をひとしきり買い……。
「市場で買わないんですか……?」
おそらく、市場で買った方が安いと思うのだが、ヘルトさんは気にせず買っていくのが気になって尋ねてみると……。
「市場の方が安いけど、配達してもらえねぇからな。今日はいろいろ買ってるし気にしなくていいぞ」
だそうだ。
「ぼ、僕が持ちますよ!」
「んー、その気持ちだけ貰っとくわ」
役に立たねば! と、思ったけどヘルトさんはそんな言葉と共に僕の頭を撫でる。僕の役目とは……。
ちょっと落ち込みながらも、楽しそうに買い物をしていくヘルトさんを見て、楽しそうだからいいのかな? とも思い始める。
パーティーメンバーの人達とも離れて長いと聞く。今までずっと一人で活動していたなら、誰かと過ごすというのが久しぶりなのかもしれない。
……なら、ヘルトさんが許してくれるかぎりは甘えてしまった方がヘルトさんも嬉しいのかな?
どうしたらいいのかわからないけど、ヘルトさんが嬉しそうだし……それならいいか。と、納得する事にした。
「とりあえずデカいタオル十枚、小さいの二十枚、石鹸一番良いやつ五個、ヘアオイル?も良いやつ五個、化粧水とかもなんかいいのを……え? どれもいろいろ種類がある? じゃあ、適当に任せる。支払いは、これで。夕方に、家まで配達頼む」
雑貨屋の店員と喋りながら次々注文していくヘルトさん。僕が頼むか迷っていたケア用品すら店員のお任せでジャンジャン買っていく。一応封がされていたら劣化はしないだろうけど、それでも思い切って買い過ぎていると思う。
「香水などはいかがですか?」
「あー、あんまり匂いの強いやつはいらねぇんだ。あ、石鹸とか頼んだやつにも匂いの少ないやつ入れておいてくれ」
店員のオススメをバッサリと切って、注文に追加をかけるヘルトさん。店員からしたら買いっぷりの良い上客だから高い物を売りたいんだろうけど、たぶんヘルトさんが要らないというものは買わないんだと思う。
雑貨屋も出て、ヘルトさんの隣を歩いていたら、ヘルトさんから声がかかる。
「さっき、香水断ったけどよ……もしかして必要だったか?」
「いえ、ご主人様が要らないと判断したのなら大丈夫です。それに、僕もあまり匂いの強いものは好みませんから」
「そっか。あ……じゃあ、その辺りも注文つけておけば良かったな。次からはちゃんとお前に聞くわ」
「買っていただけるだけありがたいです……でも、どうして化粧品まで買ってくれたんですか?」
化粧水やヘアオイルなんて、浴室にはなくて、僕が商館から渡されたものだけしかなかった。ヘルトさんは部屋で使っているのだろうか?
「なんでって、お前が使うんだろ?風呂場に置いてあったじゃねぇか」
「その……商館から価値を上げるように言われて使っていただけで……なくなったらそれでもいいかと思っていたんです」
今朝思っていた事を伝えれば、ヘルトさんが少し落ち込んだような顔になる。
「あー……じゃあ、余計なことしたか?」
「そんな!使っても良いのなら喜んで使わせてもらいます!」
「そっか、じゃあ使え使え。それに、髪もサラサラの方が撫で心地がいいからな」
そう言って、ヘルトさんは嬉しそうに僕の頭を撫でた。……撫で心地がいいって喜んで貰えるなら、もうちょっと気を付けて手入れしてみようかな……。
奴隷と主人というには少し親しすぎる会話だったけど、ヘルトさんが喜んでくれるのなら嬉しい。
だけど、幸いにも周りは人が多く、店先の呼び声や雑踏の騒めきに僕らの会話は書き消されていたのか反応はない。その事に安心しながら僕は、ヘルトさんの隣を歩く。
そして、ヘルトさんは僕の心配に気づくことなく豪快に買い物を続ける。
肉屋で塊の肉を三種類くらい買い、八百屋で野菜と果物を程よく買い、食料品店で調味料をひとしきり買い……。
「市場で買わないんですか……?」
おそらく、市場で買った方が安いと思うのだが、ヘルトさんは気にせず買っていくのが気になって尋ねてみると……。
「市場の方が安いけど、配達してもらえねぇからな。今日はいろいろ買ってるし気にしなくていいぞ」
だそうだ。
「ぼ、僕が持ちますよ!」
「んー、その気持ちだけ貰っとくわ」
役に立たねば! と、思ったけどヘルトさんはそんな言葉と共に僕の頭を撫でる。僕の役目とは……。
ちょっと落ち込みながらも、楽しそうに買い物をしていくヘルトさんを見て、楽しそうだからいいのかな? とも思い始める。
パーティーメンバーの人達とも離れて長いと聞く。今までずっと一人で活動していたなら、誰かと過ごすというのが久しぶりなのかもしれない。
……なら、ヘルトさんが許してくれるかぎりは甘えてしまった方がヘルトさんも嬉しいのかな?
どうしたらいいのかわからないけど、ヘルトさんが嬉しそうだし……それならいいか。と、納得する事にした。
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