【第一部&番外編・完】故郷の英雄と歩む冒険者生活~家族に売られた僕は憧れの冒険者のものになりました~

海野璃音

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第一部:本編

22:風呂上がり

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 ヘルトさんの役に立つと決意はしたものの、夕食と翌朝の朝食はヘルトさんが買ってきた屋台料理の残りで済ませる事になった。

 残すのももったいないし、またヘルトさんに買い物に行ってもらうのは申し訳ないからだ。

 まあ、最初から今日は休むように言われていたから働かせてはもらえなかっただろうけど……。

 やる事もないので、ぼんやりしていたら入浴するように言われたのであのお風呂で体を清めた。

 たっぷりのお湯が張られた浴槽とヘルトさんに準備させてしまった事に気が遠くなったがお湯に浸かるというのは気持ちがよかった。

 ゆっくりとお風呂を堪能し、商館から渡された服を纏う。

 ……やっぱり胸元が開きすぎている気がする。

 胸板がすかすかするのを感じていると、トイレから出てきたヘルトさんとばったり顔を会わせた。

「なっ、なんだその服!? 露出多くないか!?」

 大きく開いた胸元にヘルトさんが驚く。

「鞄に入っていた服なんですけど……やっぱり変ですよね」
「いや……変ではない、変ではないけど……目のやり場に困る……」

 僕の胸元を見ないようにするヘルトさんの姿に、男同士だっていうのに恥ずかしくなって胸元を隠した。

「その……お見苦しいものを……」
「そうじゃない……そうじゃなくてだな……。あ~! とりあえず、明日やっぱり服買いに行こう! 風呂上がりにそんなの着てたら風邪引くし!」
「は、はい」

 ヘルトさんの勢いに押されて思わず頷く。

「あと、俺のシャツ渡すから今日はそれ寝巻きにしろ。そのシャツとズボンじゃ寝にくそうだ」
「……ありがとうございます」

 ヘルトさんの気遣いが嬉しくて笑みが溢れる。

 一緒にヘルトさんの部屋に向かい、ヘルトさんから寝巻きにするチュニックと上着を渡された。

「……これは?」
「夕食までは羽織っとけ。胸元晒したままよりはいいだろ」

 確かに、このシャツだけでは心もとないのでありがたい。

「二つともやるから、返さなくていいぞ」
「……わかりました」

 ヘルトさんからのお下がり。さっきは古着でいいと言ったが、なんとなくお下がりだと思うと嬉しい。

 チュニックは、よくある薄茶色のもので、僕が着ると太ももまで隠れる大きさだ。

 上着は、黒色で薄手だけどしっかりしたもので首元まで閉めることのできるもので、こちらもチュニックと同じく大きいものだった。

 上着を羽織り、胸元までボタンを閉めればすかすかした感じがなくなって落ち着く。

 ただ、袖も裾もぶかぶかなのは格好がつかない気もする。

「これでいいでしょうか?」
「いいんじゃねぇか? さっきよりは寒くなさそうだ」

 不恰好ではないかと、ヘルトさんに聞けば、ヘルトさんは満足そうに頷く。

 変じゃないのならよかった。

「さて、俺も風呂入ってくるかね」
「っ!? ヘルトさんまだだったんですか!?」

 ヘルトさんの言葉に驚いてしまうが、そう言えば服が変わっていない。

 僕の馬鹿! ヘルトさんより先にお風呂に入るなんて!

「気にすんな、気にすんな。ほら、部屋で休んでろ」

 部屋に案内された時のように背中を押されて、部屋に押し込まれる。

 僕、こんなに甘やかされて良いのかな……。

 奴隷どころか、弟子というにも甘すぎるヘルトさんからの扱いに困惑しながら、貰ったチュニックを抱き締めた。
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