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第一部:本編

21:役に立ちたい

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 昼食後、改めて家の中を案内されたのだが凄かった。

 食堂の隣の厨房にはさまざまな調理器具が並び、魔道具による水道も完備。何より、冷蔵と冷凍の魔導保存庫まであった。

 商館で存在だけは習っていたけど……まさか実物を目にするとは思わなかった。

 しかも、それを飲み水やお酒しか入れていないヘルトさんの無頓着さに呻きたくなった僕は悪くないと思う。

 すっごい贅沢な使い方過ぎる!

 次に案内された浴室は広く、しかも夜会用のホールや二階の客室エリア、使用人用の地下にもあると言うのだから驚きだ。

 なにより、浴室の水道はお湯を沸かせるタイプらしい。

 村でも、商館でも体を洗うのは、井戸水だったから常にお湯を使えるのは贅沢なのだ。

 習った知識では、買われた先にあっても使うことはないと思っていたのに、ヘルトさんは好きに使っていいと言う。

 ちょっと胃が痛い。僕には、不相応過ぎる。

 そして、浴室の近くにあるトイレも魔導式なので壺などではなく、自動で洗浄され清潔を保たれるらしい。存在は習ったがこれも実物は始めてだ。

 僕なんかが使って良いのかわからなくなるが、この屋敷のトイレは全部これらしい。

 使うしかない。胃が痛い。

 地下にあるランドリールームも広く、桶と板じゃなくて、魔導式洗濯機があった。洗濯用の魔道具らしい。これは商館でも習わなかった。いくらするか予想もつかない。怖い。

 平民では一生お目にかかることのないような道具の数々を目にした僕の心が折れそうになったのは言うまでもない。

「……無理そうなら家事しなくていいぞ?」
「や、やります……」

 一通り案内してもらって、予想以上の設備に恐れおののき、意識が遠のきそうだったがなんとか持ちこたえる。

 ヘルトさんの役に立ちたいのだ。諦めてたまるものか。

「そうか……まあ、壊しても買い換えるから気楽にな?」
「壊しません~……」

 壊しても気にしないと言うヘルトさんに落ち込み力なく返す。

 絶対僕より高いものを軽く買い換えると言えるヘルトさんが怖い。これがお金持ってる人の感覚……。

 そりゃ、僕を値段以上の金額で買えてしまう訳だ。

「そういえば、どこも綺麗でしたけど掃除はどうしているんですか?」
「ん?清浄魔法が使えるから、気が向いた時に一日ワンフロアずつ掃除してるぞ」

 掃除に魔法……贅沢だ……。

「後は、洗濯もな。エルツが洗濯機使うの怖いなら魔法で出来るから任せてくれ」
「か、考えさせてください……」

 洗濯機を使うのは怖い。怖いが……魔法とはいえ、ヘルトさんに洗濯させるのも抵抗がある。

「……洗濯も頑張ります。ヘルトさんの分も」
「わかった。でも、無理はすんなよ?」
「はい……」

 生活レベルの差に打ちのめされた僕だけど、どうにか頑張ると心に決めた。

 目標は、ヘルトさんが弟子にしてよかったと思える弟子になる事。

 冒険者としても、面倒を見てもらってる人間としても役に立てるように頑張ってみせる。
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