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第一部:本編
19:中身
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「ひ、広くないですか!」
「だろー?」
思わずヘルトさんを振り返ると、ヘルトさんが苦笑する。
「それにベッドも綺麗だし!机までなんかすごい!タンスも!」
ヘルトさんが言ったとおり、部屋の中にはベッドと机、タンスがあった。
そのどれもが細かい装飾が施され、どことなく重厚な艶が高級感を高めている。
「つ、使えませんよこんな部屋……」
実家以上、それどころか商館で与えられていたより何倍も高そうな家具に恐れおののく。
「いいからいいから。とりあえず、その鞄の中身納めて休んでろ。俺は、ちょっと飯買ってくるから」
怯える僕の背中をヘルトさんは押して、扉を閉める。そうして僕は、高そうな家具のある広い部屋に佇むのであった。
……どうしよう。
ヘルトさんは、行っちゃったし……大人しく荷物の整理するしかないのかな……。
三つの家具しかない広い部屋を落ち着きなく見回し、諦めて机に向かう。
机は、商館で見かけた仕事用の机より重厚な作りでやっぱり高そう。
濃い茶色で艶やかな机には、いくつもの引き出しと机に合った立派な椅子が収まっている。
……鞄置くのも怖い。
傷をつけないようにヒヤヒヤしながら革張りの鞄を置き、机の上で開く。
中はさっきと変わらず、服と化粧品が収まっていた。
服を手に取れば、今着ている物より上質な物であることがわかる。
なだらかなさわり心地からシルクだろうその服は、ヒラヒラしたフリルが多く、胸元が大きく開いている作りのシャツだ。
……これを着るのはちょっと、恥ずかしいかもしれない。
雑用奴隷としてより、性奴隷向けの服に複雑になりながらも、鞄の中身を取り出していく。
ズボンは、比較的普通のものだったけど、ピッチリとした下半身のラインを強調するものだったので、やはり雑用奴隷の服とは思えなかった。
……申し訳ないけど、ヘルトさんに服を買ってもらった方が良いのかもしれない。古着とか、安いものでいいから。
ため息を吐きたくなりながらもすべての服を取り出すと、その下に磨かれた木製の箱が一つ入っている事に気づく。
鞄の隠し底のように収まっているそれに……嫌な予感を感じながらも、僕はそれを開いた。
「っ!?」
そこには、体内を清める洗浄器具と潤滑油に拡張用の細い無機質な玩具。そして、あからさまに陰茎を模した張り型が入っていた。
どれも……僕が商館で与えられていた道具だ。
隠されながらも、僕の最初の嫌な予感が的中した事に血の気が引く。
それらを見て、……僕の本質は、奴隷だと言われているような気がした。
震える手で、手に持っていた蓋を閉める。
これは、ヘルトさんに見せたくない。知られたくない。……でも、捨てる事もできない。捨てる時に知られたくないから。
だから、なるべく見られない場所にしまおうと思って、部屋を見回す。
タンスは心もとない。ベッドの下……ダメだ。覗き込まれたら目立つ。
そうだ、机……。
机の引き出しを見れば、一番下の引き出しに鍵がついている。開けて確認すれば、なんとか入りそうだった。
箱を引き出しにしまい、鍵をかければ少しだけ体から力が抜ける。
鍵は、どうしよう……。机の引き出しよりはタンスにでも入れて置こうかな……。
そんな事を考えながら、僕は疲れ果てたように床に座り込んだ。
「だろー?」
思わずヘルトさんを振り返ると、ヘルトさんが苦笑する。
「それにベッドも綺麗だし!机までなんかすごい!タンスも!」
ヘルトさんが言ったとおり、部屋の中にはベッドと机、タンスがあった。
そのどれもが細かい装飾が施され、どことなく重厚な艶が高級感を高めている。
「つ、使えませんよこんな部屋……」
実家以上、それどころか商館で与えられていたより何倍も高そうな家具に恐れおののく。
「いいからいいから。とりあえず、その鞄の中身納めて休んでろ。俺は、ちょっと飯買ってくるから」
怯える僕の背中をヘルトさんは押して、扉を閉める。そうして僕は、高そうな家具のある広い部屋に佇むのであった。
……どうしよう。
ヘルトさんは、行っちゃったし……大人しく荷物の整理するしかないのかな……。
三つの家具しかない広い部屋を落ち着きなく見回し、諦めて机に向かう。
机は、商館で見かけた仕事用の机より重厚な作りでやっぱり高そう。
濃い茶色で艶やかな机には、いくつもの引き出しと机に合った立派な椅子が収まっている。
……鞄置くのも怖い。
傷をつけないようにヒヤヒヤしながら革張りの鞄を置き、机の上で開く。
中はさっきと変わらず、服と化粧品が収まっていた。
服を手に取れば、今着ている物より上質な物であることがわかる。
なだらかなさわり心地からシルクだろうその服は、ヒラヒラしたフリルが多く、胸元が大きく開いている作りのシャツだ。
……これを着るのはちょっと、恥ずかしいかもしれない。
雑用奴隷としてより、性奴隷向けの服に複雑になりながらも、鞄の中身を取り出していく。
ズボンは、比較的普通のものだったけど、ピッチリとした下半身のラインを強調するものだったので、やはり雑用奴隷の服とは思えなかった。
……申し訳ないけど、ヘルトさんに服を買ってもらった方が良いのかもしれない。古着とか、安いものでいいから。
ため息を吐きたくなりながらもすべての服を取り出すと、その下に磨かれた木製の箱が一つ入っている事に気づく。
鞄の隠し底のように収まっているそれに……嫌な予感を感じながらも、僕はそれを開いた。
「っ!?」
そこには、体内を清める洗浄器具と潤滑油に拡張用の細い無機質な玩具。そして、あからさまに陰茎を模した張り型が入っていた。
どれも……僕が商館で与えられていた道具だ。
隠されながらも、僕の最初の嫌な予感が的中した事に血の気が引く。
それらを見て、……僕の本質は、奴隷だと言われているような気がした。
震える手で、手に持っていた蓋を閉める。
これは、ヘルトさんに見せたくない。知られたくない。……でも、捨てる事もできない。捨てる時に知られたくないから。
だから、なるべく見られない場所にしまおうと思って、部屋を見回す。
タンスは心もとない。ベッドの下……ダメだ。覗き込まれたら目立つ。
そうだ、机……。
机の引き出しを見れば、一番下の引き出しに鍵がついている。開けて確認すれば、なんとか入りそうだった。
箱を引き出しにしまい、鍵をかければ少しだけ体から力が抜ける。
鍵は、どうしよう……。机の引き出しよりはタンスにでも入れて置こうかな……。
そんな事を考えながら、僕は疲れ果てたように床に座り込んだ。
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