【第一部&番外編・完】故郷の英雄と歩む冒険者生活~家族に売られた僕は憧れの冒険者のものになりました~

海野璃音

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第一部:本編

15:決意

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「どうして……引退、しないんですか……?」
「まあ……村を出てからダンジョンばっかり潜っていたからな……それ以外の生き方がわからん。冒険者としての成果で稼いでも、爵位を貰っても……ダンジョンが俺を呼ぶんだ。魅入られたって言うんかね……たとえ、全盛期の様な体じゃなくとも、俺の死に場所はダンジョンしかない」

  その言葉は、冒険者として、成功するということが目的ではなく……冒険者としてダンジョンで死ぬという覚悟のようなものを感じる。

 きっと……冒険者として成功する人は、ヘルトさんのように並みならぬ覚悟を持った人なのだろうと思った。

「だがな……俺は、このままずるずると冒険者を続けるつもりはない」

 ヘルトさんが言葉を続ける。

「いつか返り咲く。第一線でまた活躍する為に……ここのダンジョンを潜ってるんだ」
「なにか……目的が、あるんですか……?」

 僕の質問にヘルトさんが不敵に笑った。

「魔導義手が出るんだ。こいつみたいに模造品じゃない本物が」

 ヘルトさんは、魔導義手を左手で軽く叩く。

「それがあれば、俺は全盛期と同じように……いや、それ以上に戦える。だから、潜り続けるんだ」

 ハンデを追いながらも目を輝かせて語るヘルトさん。

 その強さが、僕には眩しかった。

「だから、お前の解呪薬を探すのもわけないって事だ。ここは、魔導具や魔導武具のドロップがメインだが、それでも解呪薬がでないわけじゃねぇからな」
「それでも……迷惑になるのでは……」

 目的が違うものを探させるのは、ヘルトさんに余計な手間をかけさせてしまう……。

「エルツ」

 言いよどむ僕をヘルトさんが呼ぶ。視線を向ければ、ヘルトさんは真っ直ぐ僕を見つめていた。

「気にするなって言っても難しいだろうけどな。俺は、誰も彼も救うような善人じゃねぇ。お前が同郷で、見込みがあるから買った。そして、お前を買った責任がある。だから、俺を利用しろ。奴隷のままで居たくないんだろ?泣くほどに後悔してんだろ?なら、俺を利用したらいい。俺は、それを許す。あとは、お前の心しだいだ」

 その言葉に……心が揺れる。本当にヘルトさんを信じて良いのか。その言葉のとおりに利用していいのか。

 どうして……そこまでしてくれるのか。

 わからない。わからないけど、信じてみたい。

 僕を見つめるヘルトさんの顔を真っ直ぐ見つめ返す。

「僕……諦めたくない。諦めたくないです……!」

 普通に生きることも、冒険者になる事も。

「よし! よく言った!」

 ただ、諦めたくない。それだけの言葉だったのに、ヘルトさんは今日見た笑みの中で一番嬉しそうに笑った。
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