【第一部&番外編・完】故郷の英雄と歩む冒険者生活~家族に売られた僕は憧れの冒険者のものになりました~

海野璃音

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第一部:本編

12:友人

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「……お前が売られる時、誰も止めるヤツはいなかったのか?確か……子供の時は二人くらいつるんでいたのがいただろう?」

 僕の事を覚えていたのにも驚いたが、友人達についても覚えていたヘルトさんに驚く。

 彼が故郷に帰ってきた時。彼は人気者で、そんな彼には、多くの人が集まって居たのだから。

「……二人は、冒険者になる為に村を出ました。十六の成人を迎える前に」

 二人を懐かしみながら、口を開く。二人は僕が売られるずっと前に旅に出た。僕を置いて……二人で。

「置いていかれたのか?」
「……僕の体力じゃ、冒険者は無理だろうって……村に残った方がいいって……」

 いつかヘルトさんのような冒険者に……。それを合言葉のように言っていた。

 だけど、二人がたくましく成長していくのに僕は小さいまま。

 気がつけば、ヘルトさんの剣を真似た木製の剣で打ち合う事もなくなり、大人の目を盗んで行っていた森への探索だって誘われなくなった。

 ずっと、ずっと……二人を見送るだけになって。

 そして……最後には見放されて置いていかれてしまった。

「……もったいねぇな。お前を連れてけば大成しただろうに」
「……えっ?」

 ヘルトさんの言葉に耳を疑う。

「お前、魔力は多いんだよ……小さい頃から。そんな理由で置いてかれるなら言っておいた方が……いや、だが……魔力を理由に孤立する可能性も……」

 悩むように呟くヘルトさんの声を僕は呆然と聞いていた。

 魔力。それは、魔法を使うために必要なもの。

 人間誰しもが持っている力だけど、平民の魔力は少ないと言われている。

 だから、僕も……僕自身もそうだと思っていた。

「僕の……魔力が多い……」

 魔力が多ければ、いろいろな魔法が使える。

 普通は誰かから教わらなきゃ使えないらしいけど、冒険者だったら冒険者ギルドで教えてもらったり、ダンジョンで魔法書を手に入れて覚える事だってありえた。

 もし、無理にでも二人と一緒に行っていたら。

 一人でも、冒険者を諦めていなかったら。

 僕は、憧れた冒険者になれていた?

 多くの魔法を使える冒険者に。魔法使いになれていた?

 いや、ただの可能性でしかない。可能性でしかないけど……。

 堪えていた涙が頬を伝う。

 諦めていなかったら冒険者になれていたかもしれない。

 三人でまだ笑いあっていたかもしれない。

 でも、でも……もう、叶うことはない。

 奴隷が奴隷以外のものになることなんて……二度とできないのだから。
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