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第一部:本編
7:主人
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「……御託はいい。さっさと隷属魔法の所有権を寄越せ」
眉を寄せ、眉間にシワを作ったヘルトさんが店主を睨む。男の調教記録など不快に違いない。そんな話を聞かせてしまった事も僕の心を沈ませた。
「仰せのままに」
ヘルトさんの鋭い視線にさらされながらも店主は気にする事なく笑みを浮かべる。
「エルツ、座りなさい」
「はい……主様」
その場で膝を付き、店主を見上げれば、頬に店主の指が触れる。
いくつかの言葉を呟いた後、僕の体からは力が抜け、地面に倒れた。
「っ……」
力の入らない僕を部屋に控えていた店主付きの奴隷が抱え、ヘルトさんのもとへと運ぶ。
「契約の方法はご存知で?」
「知ってる」
店主の問いにヘルトさんが答えるのを聞いていたら、ヘルトさんの指が僕の頬に触れた。
「――」
ヘルトさんが店主と同じように何かを呟き、体に力が戻る。それと同時に息苦しさを覚え、僕は咳き込みながら息を吸った。
「かはっ……!はっ……ぁ……!」
隷属魔法にかけられた人間は、所有権を持つ人がいない間、呼吸すら自分の意思でできない。
だから、奴隷の生死は全て所有権を持っている人にかかっている。
そして、所有権を持っている限り、命令一つで殺す事だって可能だった。
「これでやる事は全てだな」
「契約としては。必要でなくなったら買い取りもしておりますのでいつでも要らしてください」
「必要ない」
必死に息をする僕の横で、ヘルトさんが店主とやり取りを交わす。
淡々としたやり取りだが、この息苦しさと共に、僕がヘルトさんの物になったのは確かだった。
「行くぞ」
「……は、い」
しゃがみこむ僕の右腕をヘルトさんが左手で掴んで立ち上がらせる。
たぶん、ここに長い時間居たくないのだろう。
奴隷を買うつもりはなかったという言葉のとおり、奴隷という存在自体が好きじゃないのかもしれない。
それなのに僕を買ってくれたのは、なぜだろう。
同郷だから?ただそれだけで、一生奴隷としてしか生きていけない僕を買ったのだろうか……?
そんな考えるが頭をぐるぐると回りながらも、僕はヘルトさんに腕を引かれたまま歩く。
「お待ち下さい」
だけど、そんな僕らの背中に店主の声がかかる。
「おい、あれを」
嫌そうに立ち止まったヘルトさんが店主へと振り向くと、店主は側にいた奴隷へと指示を出し、奴隷が一つの鞄を僕へと渡す。
革張りの箱形のそれは、奴隷の僕が持つにはあまりにも上質なもので身の程に合わない。なぜ、そんなものが僕に渡されたのかわからなかった。
「彼が当館で個人的に使用していた物です。そちらも付属品となっておりますのでどうぞお持ちください」
店主の言葉に手に持った革張りの鞄を落としそうになった。
ここで個人的に使用していたものといえば、体内を清める為の道具や後ろを拡張する為の道具しかない。
この上質な鞄にそれらの道具が入っているという事実に青ざめる。
付属品。それは、僕が奴隷である限り、それすらも僕の一部であるかのようだった。
眉を寄せ、眉間にシワを作ったヘルトさんが店主を睨む。男の調教記録など不快に違いない。そんな話を聞かせてしまった事も僕の心を沈ませた。
「仰せのままに」
ヘルトさんの鋭い視線にさらされながらも店主は気にする事なく笑みを浮かべる。
「エルツ、座りなさい」
「はい……主様」
その場で膝を付き、店主を見上げれば、頬に店主の指が触れる。
いくつかの言葉を呟いた後、僕の体からは力が抜け、地面に倒れた。
「っ……」
力の入らない僕を部屋に控えていた店主付きの奴隷が抱え、ヘルトさんのもとへと運ぶ。
「契約の方法はご存知で?」
「知ってる」
店主の問いにヘルトさんが答えるのを聞いていたら、ヘルトさんの指が僕の頬に触れた。
「――」
ヘルトさんが店主と同じように何かを呟き、体に力が戻る。それと同時に息苦しさを覚え、僕は咳き込みながら息を吸った。
「かはっ……!はっ……ぁ……!」
隷属魔法にかけられた人間は、所有権を持つ人がいない間、呼吸すら自分の意思でできない。
だから、奴隷の生死は全て所有権を持っている人にかかっている。
そして、所有権を持っている限り、命令一つで殺す事だって可能だった。
「これでやる事は全てだな」
「契約としては。必要でなくなったら買い取りもしておりますのでいつでも要らしてください」
「必要ない」
必死に息をする僕の横で、ヘルトさんが店主とやり取りを交わす。
淡々としたやり取りだが、この息苦しさと共に、僕がヘルトさんの物になったのは確かだった。
「行くぞ」
「……は、い」
しゃがみこむ僕の右腕をヘルトさんが左手で掴んで立ち上がらせる。
たぶん、ここに長い時間居たくないのだろう。
奴隷を買うつもりはなかったという言葉のとおり、奴隷という存在自体が好きじゃないのかもしれない。
それなのに僕を買ってくれたのは、なぜだろう。
同郷だから?ただそれだけで、一生奴隷としてしか生きていけない僕を買ったのだろうか……?
そんな考えるが頭をぐるぐると回りながらも、僕はヘルトさんに腕を引かれたまま歩く。
「お待ち下さい」
だけど、そんな僕らの背中に店主の声がかかる。
「おい、あれを」
嫌そうに立ち止まったヘルトさんが店主へと振り向くと、店主は側にいた奴隷へと指示を出し、奴隷が一つの鞄を僕へと渡す。
革張りの箱形のそれは、奴隷の僕が持つにはあまりにも上質なもので身の程に合わない。なぜ、そんなものが僕に渡されたのかわからなかった。
「彼が当館で個人的に使用していた物です。そちらも付属品となっておりますのでどうぞお持ちください」
店主の言葉に手に持った革張りの鞄を落としそうになった。
ここで個人的に使用していたものといえば、体内を清める為の道具や後ろを拡張する為の道具しかない。
この上質な鞄にそれらの道具が入っているという事実に青ざめる。
付属品。それは、僕が奴隷である限り、それすらも僕の一部であるかのようだった。
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