6 / 146
第一部:本編
6:商談
しおりを挟む
「別に奴隷が欲しかった訳じゃない。そいつが欲しかったんだ」
聞こえてきたヘルトさんの言葉に耳を疑う。
「ふむ……護衛から聞いた話だと、顔見知りとの事ですが……同情から奴隷を購入するのはおすすめいたしませんよ?」
「こちらの勝手だろう。金は出す」
店主の言葉にヘルトさんが店主を睨み付ければ、後ろ姿の店主は肩を竦めた。
「……こちらとしては、もっと質の良い奴隷をおすすめしたかったところですが」
「くどい」
なおも、言いすがる店主の言葉を両断したヘルトさんは、腰につけたポーチから革袋を取り出すと店主との間にあるテーブルへと投げる。
大きさは、僕の手のひらに収まりそうな大きさなのに、ドッ……と、重い音をたてた革袋を店主が手に取り、革袋の口を開いた。
「……お望みのままに。これだけ頂いてお売りしないわけにもいきませんから」
珍しく弾んだ声の店主にあの革袋の中にいくら入っていたのだろうかと、血の気が引く。
あの店主が喜ぶほどなのだ。あの重い音といい……ヘルトさんに大金を払わせてしまったのだろうという事実が僕へとのしかかった。
「エルツ。来なさい」
「……っ! は、い……」
後ろに控えていた僕を店主が呼ぶ。ヘルトさんに買われた事とその事への申し訳なさにぎこちない歩みで僕は店主の横へと立った。
「代金はいただきましたが、商品の説明がまだでしたので説明させていただきますね」
僕の隣で店主がにこやかに笑いながら言葉を続ける。
「まず、この体格ですから戦闘奴隷としての適正はないと判断し、雑用奴隷として教育を施しています」
淡々と告げる店主。だけど、僕が施された教育はそれだけではない。
「また……エルツ顔をあげなさい」
俯く僕に気づいた店主に命令され、僕は顔をあげる。
「頬に刻まれた刻印のとおり、性奴隷としての教育も済んでおります」
ヘルトさんの視線が僕の頬に刺さった。
その事に俯いて刻印を隠したい気持ちで頭がいっぱいになる。
確実にヘルトさんに認識された。僕がどんな事を教育されたのか、どう躾られたのか。
ヘルトさんに買われたのだからすぐに知られる事ではあった。だけど、憧れた人に……僕が性奴隷として学んだ事を知られた事実が僕の胸を締め付けた。
「とは言っても、男も女も知りませんのでご安心ください」
説明を続けていた店主が最後にそう付け加える。
そこまで説明しなくてもいいのに……。
事実ではあるが、それすら僕を辱しめるには十分で……羞恥心からか顔が熱くなり、手をぎゅっと握った。
聞こえてきたヘルトさんの言葉に耳を疑う。
「ふむ……護衛から聞いた話だと、顔見知りとの事ですが……同情から奴隷を購入するのはおすすめいたしませんよ?」
「こちらの勝手だろう。金は出す」
店主の言葉にヘルトさんが店主を睨み付ければ、後ろ姿の店主は肩を竦めた。
「……こちらとしては、もっと質の良い奴隷をおすすめしたかったところですが」
「くどい」
なおも、言いすがる店主の言葉を両断したヘルトさんは、腰につけたポーチから革袋を取り出すと店主との間にあるテーブルへと投げる。
大きさは、僕の手のひらに収まりそうな大きさなのに、ドッ……と、重い音をたてた革袋を店主が手に取り、革袋の口を開いた。
「……お望みのままに。これだけ頂いてお売りしないわけにもいきませんから」
珍しく弾んだ声の店主にあの革袋の中にいくら入っていたのだろうかと、血の気が引く。
あの店主が喜ぶほどなのだ。あの重い音といい……ヘルトさんに大金を払わせてしまったのだろうという事実が僕へとのしかかった。
「エルツ。来なさい」
「……っ! は、い……」
後ろに控えていた僕を店主が呼ぶ。ヘルトさんに買われた事とその事への申し訳なさにぎこちない歩みで僕は店主の横へと立った。
「代金はいただきましたが、商品の説明がまだでしたので説明させていただきますね」
僕の隣で店主がにこやかに笑いながら言葉を続ける。
「まず、この体格ですから戦闘奴隷としての適正はないと判断し、雑用奴隷として教育を施しています」
淡々と告げる店主。だけど、僕が施された教育はそれだけではない。
「また……エルツ顔をあげなさい」
俯く僕に気づいた店主に命令され、僕は顔をあげる。
「頬に刻まれた刻印のとおり、性奴隷としての教育も済んでおります」
ヘルトさんの視線が僕の頬に刺さった。
その事に俯いて刻印を隠したい気持ちで頭がいっぱいになる。
確実にヘルトさんに認識された。僕がどんな事を教育されたのか、どう躾られたのか。
ヘルトさんに買われたのだからすぐに知られる事ではあった。だけど、憧れた人に……僕が性奴隷として学んだ事を知られた事実が僕の胸を締め付けた。
「とは言っても、男も女も知りませんのでご安心ください」
説明を続けていた店主が最後にそう付け加える。
そこまで説明しなくてもいいのに……。
事実ではあるが、それすら僕を辱しめるには十分で……羞恥心からか顔が熱くなり、手をぎゅっと握った。
30
お気に入りに追加
1,923
あなたにおすすめの小説



アンドロイドは愛を得る
天霧 ロウ
BL
アンドロイドを持つのが当たり前になった時代。
ある名家は八歳になったらアンドロイドを与えるというしきたりがあった。創造主であるライラからコヨリという名を与えられたアンドロイドの私は助手として彼女とともにその家に訪れた。しかし、理想のアンドロイドを頼めるにもかかわらず、その家の子供――史人は私がほしいと言った。
一悶着あった末、私は彼のものになり十年。すっかり青年に育った彼を見るたびに私の胸のコアや頭の回路はときおり熱を帯びてエラーを吐くようになった。
ムーンライトノベルズにも掲載しております
史人(ふみと)×コヨリ
(SF/主従/俺様一途×天然健気/主×従者/人間×アンドロイド/年下攻め/甘々/溺愛/じれじれ/ハッピーエンド/受視点)


オメガに転化したアルファ騎士は王の寵愛に戸惑う
hina
BL
国王を護るαの護衛騎士ルカは最近続く体調不良に悩まされていた。
それはビッチングによるものだった。
幼い頃から共に育ってきたαの国王イゼフといつからか身体の関係を持っていたが、それが原因とは思ってもみなかった。
国王から寵愛され戸惑うルカの行方は。
※不定期更新になります。

異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました
ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

勇者になるのを断ったらなぜか敵国の騎士団長に溺愛されました
雪
BL
「勇者様!この国を勝利にお導きください!」
え?勇者って誰のこと?
突如勇者として召喚された俺。
いや、でも勇者ってチート能力持ってるやつのことでしょう?
俺、女神様からそんな能力もらってませんよ?人違いじゃないですか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる