【第一部&番外編・完】故郷の英雄と歩む冒険者生活~家族に売られた僕は憧れの冒険者のものになりました~

海野璃音

文字の大きさ
上 下
2 / 146
第一部:本編

2:審査

しおりを挟む
 売られた僕が連れてこられたのは、冒険者の集うダンジョンの近くにある町だった。

 うちの村から馬車で一週間ほどの大きな町。

 僕は他の村から集められた他の奴隷と共に馬車から下ろされ、その場で服を脱がされると、魔法で頭から水をかけられて洗われた。

「っ……!」

 水が鼻に入っても喋ることは許されないから、息を飲んで痛みを堪える。

 裸のまま体つきを見られ、たくましい人は戦闘奴隷として高い評価を与えられていく。

 その評価が商品としての扱いを決めていくようで、高い評価を与えられた人は、質のいい服を与えられていたし、低い評価の人はくたびれた服を与えられていた。

 評価の決まった奴隷の頬には、黒い刺青のような紋様が刻まれている。

 店主の魔法によって刻まれてたそれが奴隷の証なのだろう。

 そんな様子をぼんやりと眺めていたら僕が品定めされる番が訪れた。

「名前は?」

 この奴隷商館の店主だろう壮年の男性が僕に名前を尋ねてくる。

「……エルツです」

 答えないという選択肢はなく、僕は名前を告げた。

「そうか。エルツ、顔をあげなさい」

 その言葉と共に、店主は僕の返答を待つ事なく、ややうつむいていた僕の頬を掴み、僕の顔をあげる。

「っ……!」
「ほう、綺麗な瞳をしているじゃないか」

 僕の瞳を見た店主は、良いものを見つけたと言うように笑みを深めた。

「まるでエメラルドのような澄んだ緑色だ。涙に濡れるとより美しく輝くだろう。これでもう少し髪色が明るければ、性奴隷として理想だったのだが残念な事だ……」

 僕の黒髪を見て、店主がそんな事を言う。

 この国では、明るい髪色が美人の証だ。一番好まれるのは金や銀。その次に赤や薄い茶色。その後に濃い茶色、黒と続く。

 もちろん、髪色を凌駕するほどの美形もいるとは思うけど……僕には当てはまらないと思った。

「だが……まあ、気に入る客はいるだろう。雑用奴隷としてだけではなく、性奴隷としても学んで貰おうか」

 だけど、僕の考えは否定される。性奴隷としての価値なんてないと思ったのに、店主は僕を性奴隷としても扱うと決めたのだ。

「抱いたり、抱かれた事は?」
「あ、ありません……」
「では、未通のまま仕上げるとしよう。初めてというのは、どちらに買われようともありがたがるものはいるものだ」

 青ざめる僕を気にする事なく店主は僕の処遇を決める。

「さて、君の評価も決まったし……刻印を入れるとしよう。」

 青ざめる僕を気にする事なく店主は、僕の頬……目尻の下、頬骨の上辺りへと指を這わせ、僕のわからない言葉を呟いた。

「っ……!」

 焼け付くような痛みが頬に走る。その痛みは一瞬だったが、痛みが止んでもじんじんとした感覚が店主が指を離した後も続いていた。

「これで君は、正式に我が商館の商品となった。くれぐれも逃げようと思わぬように」

 それだけ言って店主は次の奴隷のもとへと歩いていく。

 奴隷の刻印を押された僕には、僕より先に奴隷になったであろう人から服を渡される。

 渡されたのは、まだ綺麗だと言えそうな服。

 最上位というほどではないが、それでも商品としてそれなりの価値の認められた証だった。
しおりを挟む
感想 42

あなたにおすすめの小説

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

俺は触手の巣でママをしている!〜卵をいっぱい産んじゃうよ!〜

ミクリ21
BL
触手の巣で、触手達の卵を産卵する青年の話。

アンドロイドは愛を得る

天霧 ロウ
BL
アンドロイドを持つのが当たり前になった時代。 ある名家は八歳になったらアンドロイドを与えるというしきたりがあった。創造主であるライラからコヨリという名を与えられたアンドロイドの私は助手として彼女とともにその家に訪れた。しかし、理想のアンドロイドを頼めるにもかかわらず、その家の子供――史人は私がほしいと言った。 一悶着あった末、私は彼のものになり十年。すっかり青年に育った彼を見るたびに私の胸のコアや頭の回路はときおり熱を帯びてエラーを吐くようになった。 ムーンライトノベルズにも掲載しております 史人(ふみと)×コヨリ (SF/主従/俺様一途×天然健気/主×従者/人間×アンドロイド/年下攻め/甘々/溺愛/じれじれ/ハッピーエンド/受視点)

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!

灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。 何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。 仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。 思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。 みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。 ※完結しました!ありがとうございました!

地下酒場ナンバーワンの僕のお仕事

カシナシ
BL
地下にある紹介制の酒場で、僕は働いている。 お触りされ放題の給仕係の美少年と、悪戯の過ぎる残念なイケメンたち。 果たしてハルトの貞操は守られるのか?

オメガに転化したアルファ騎士は王の寵愛に戸惑う

hina
BL
国王を護るαの護衛騎士ルカは最近続く体調不良に悩まされていた。 それはビッチングによるものだった。 幼い頃から共に育ってきたαの国王イゼフといつからか身体の関係を持っていたが、それが原因とは思ってもみなかった。 国王から寵愛され戸惑うルカの行方は。 ※不定期更新になります。

異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました

ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 設定ゆるめ、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。 ★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

処理中です...