67 / 83
六章:夏休みとキャンプ
67:遊歩道
しおりを挟む
「お、美味そうじゃん」
席に着いてからしばらくして、渉たちの元に焼かれたニジマスが運ばれてくる。炭火で焼かれたのか、こんがりとした焼き目の付いたニジマスは食欲をそそる匂いを漂わせ、渉達の空腹が刺激された。
「塩だけでもうまっ!」
「これは、なかなか……」
「新鮮なのもあるけど自分で釣ったと思うと、尚更美味く感じるんだよなぁ」
柔らかくもほろほろとした身に舌鼓を打ちながら、食べ盛りの大学生の体を持つ三人はあっさりと一人で三匹のニジマスを平らげる。
「次、どうする?」
「どうすっかなー。食べたら眠くなってきた気もするし……俺は昼寝でもすっかな」
次の行動を訪ねてみれば、侑士がそんな事を言う。
「寝んの?」
「肝試しも楽しみだしなー。仲良くなれた子がいたら抜け出せるかもしれないだろ」
(夜までに、他がくっつくとは思わんのか……ま、言わないけど)
やはり、どこかズレている侑士に内心ため息を吐きつつ、渉は口を開く。
「わかった。じゃあ、俺のテント使っていいから」
「おう!じゃ、また後でなー!」
元より夜は、渉のテントで寝る予定だったので、昼寝にも使っていいと許可をだせば、侑士は笑みを浮かべて昼寝へと向かった。
「で、穂。なんか、やりたいこととかある?」
鞄から改めてパンフレットを取り出した渉が穂へと見せるようにパンフレットをテーブルへと広げると、穂がパンフレットを覗き込む。
「ふむ……アスレチックが目玉のようだが……アスレチックという気分でもなくてな」
(アスレチックで遊ぶ穂は面白そうでちょっとみたい気もするけどな……穂が気分じゃないならいいけど)
パンフレットを覗き込み悩む穂に、そんな事を思った渉だが、午前中は自分の希望を聞いてくれたので、午後は穂に任せようとしばし穂の返答を待った。
「うむ、決まらん。少し散策しながら考えさせてくれ」
「ん、了解。食後の散歩もいいもんだしな」
決まらないのなら散歩でいいか。と、頷いた渉は広げたパンフレットをたたみ、鞄へとしまう。その間に穂は、席を立つと食べ終わった皿を重ねて返却口へと返しに行き、二人は休憩所の入り口で落ち合うように外へ出ていく。
そんな渉達の後を追おうとする女子学生もいたが、さすがに行き先もわからないのに追いかけるのは印象が悪くなると思ったのか、女子学生達が二人の後を追う事は無かった。
穂の容姿ゆえに視線には晒されるものの、穂目当ての介入者もおらず二人はゆっくりと整備された自然の中を歩く。
「おや、遊歩道らしいぞ」
キャンプ場内の散歩道を歩いていると、遊歩道と書かれた看板を穂が見つける。その看板の示す先には脇道があり、およそ一時間半から二時間程度のコースだと言う事が看板に記されていた。
(確か三時半くらいから、夕方からのバーベキューの準備するって言われてるんだよなぁ……今が、一時前だから時間的にはギリギリ大丈夫かな)
「んー、時間的には問題ないと思うんだけど……行く?」
「うむ」
渉の問いに頷いた穂に二人は、遊歩道へと足を向ける。
遊歩道は、キャンプ場内の散歩道に比べると手入れされているとはいえ、少し道が荒々しい。不揃いで落ち葉の積もった木と土の階段に木の枝が伸び、屈まねば通り抜けられない場所もある。
それでも、夏の日差しを木々が和らげた木漏れ日は心地よく、木々の間を駆け抜ける風は、さわやかな木々のざわめきと共に涼しさを運んでいた。
席に着いてからしばらくして、渉たちの元に焼かれたニジマスが運ばれてくる。炭火で焼かれたのか、こんがりとした焼き目の付いたニジマスは食欲をそそる匂いを漂わせ、渉達の空腹が刺激された。
「塩だけでもうまっ!」
「これは、なかなか……」
「新鮮なのもあるけど自分で釣ったと思うと、尚更美味く感じるんだよなぁ」
柔らかくもほろほろとした身に舌鼓を打ちながら、食べ盛りの大学生の体を持つ三人はあっさりと一人で三匹のニジマスを平らげる。
「次、どうする?」
「どうすっかなー。食べたら眠くなってきた気もするし……俺は昼寝でもすっかな」
次の行動を訪ねてみれば、侑士がそんな事を言う。
「寝んの?」
「肝試しも楽しみだしなー。仲良くなれた子がいたら抜け出せるかもしれないだろ」
(夜までに、他がくっつくとは思わんのか……ま、言わないけど)
やはり、どこかズレている侑士に内心ため息を吐きつつ、渉は口を開く。
「わかった。じゃあ、俺のテント使っていいから」
「おう!じゃ、また後でなー!」
元より夜は、渉のテントで寝る予定だったので、昼寝にも使っていいと許可をだせば、侑士は笑みを浮かべて昼寝へと向かった。
「で、穂。なんか、やりたいこととかある?」
鞄から改めてパンフレットを取り出した渉が穂へと見せるようにパンフレットをテーブルへと広げると、穂がパンフレットを覗き込む。
「ふむ……アスレチックが目玉のようだが……アスレチックという気分でもなくてな」
(アスレチックで遊ぶ穂は面白そうでちょっとみたい気もするけどな……穂が気分じゃないならいいけど)
パンフレットを覗き込み悩む穂に、そんな事を思った渉だが、午前中は自分の希望を聞いてくれたので、午後は穂に任せようとしばし穂の返答を待った。
「うむ、決まらん。少し散策しながら考えさせてくれ」
「ん、了解。食後の散歩もいいもんだしな」
決まらないのなら散歩でいいか。と、頷いた渉は広げたパンフレットをたたみ、鞄へとしまう。その間に穂は、席を立つと食べ終わった皿を重ねて返却口へと返しに行き、二人は休憩所の入り口で落ち合うように外へ出ていく。
そんな渉達の後を追おうとする女子学生もいたが、さすがに行き先もわからないのに追いかけるのは印象が悪くなると思ったのか、女子学生達が二人の後を追う事は無かった。
穂の容姿ゆえに視線には晒されるものの、穂目当ての介入者もおらず二人はゆっくりと整備された自然の中を歩く。
「おや、遊歩道らしいぞ」
キャンプ場内の散歩道を歩いていると、遊歩道と書かれた看板を穂が見つける。その看板の示す先には脇道があり、およそ一時間半から二時間程度のコースだと言う事が看板に記されていた。
(確か三時半くらいから、夕方からのバーベキューの準備するって言われてるんだよなぁ……今が、一時前だから時間的にはギリギリ大丈夫かな)
「んー、時間的には問題ないと思うんだけど……行く?」
「うむ」
渉の問いに頷いた穂に二人は、遊歩道へと足を向ける。
遊歩道は、キャンプ場内の散歩道に比べると手入れされているとはいえ、少し道が荒々しい。不揃いで落ち葉の積もった木と土の階段に木の枝が伸び、屈まねば通り抜けられない場所もある。
それでも、夏の日差しを木々が和らげた木漏れ日は心地よく、木々の間を駆け抜ける風は、さわやかな木々のざわめきと共に涼しさを運んでいた。
0
お気に入りに追加
125
あなたにおすすめの小説
悠遠の誓い
angel
BL
幼馴染の正太朗と海瑠(かいる)は高校1年生。
超絶ハーフイケメンの海瑠は初めて出会った幼稚園の頃からずっと平凡な正太朗のことを愛し続けている。
ほのぼの日常から運命に巻き込まれていく二人のラブラブで時にシリアスな日々をお楽しみください。
前作「転生して王子になったボクは、王様になるまでノラリクラリと生きるはずだった」を先に読んでいただいたほうがわかりやすいかもしれません。(読まなくても問題なく読んでいただけると思います)
ダメリーマンにダメにされちゃう高校生
タタミ
BL
高校3年生の古賀栄智は、同じシェアハウスに住む会社員・宮城旭に恋している。
ギャンブル好きで特定の恋人を作らないダメ男の旭に、栄智は実らない想いを募らせていくが──
ダメリーマンにダメにされる男子高校生の話。
潜入した僕、専属メイドとしてラブラブセックスしまくる話
ずー子
BL
敵陣にスパイ潜入した美少年がそのままボスに気に入られて女装でラブラブセックスしまくる話です。冒頭とエピローグだけ載せました。
悪のイケオジ×スパイ美少年。魔王×勇者がお好きな方は多分好きだと思います。女装シーン書くのとっても楽しかったです。可愛い男の娘、最強。
本編気になる方はPixivのページをチェックしてみてくださいませ!
https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=21381209
少年ペット契約
眠りん
BL
※少年売買契約のスピンオフ作品です。
↑上記作品を知らなくても読めます。
小山内文和は貧乏な家庭に育ち、教育上よろしくない環境にいながらも、幸せな生活を送っていた。
趣味は布団でゴロゴロする事。
ある日学校から帰ってくると、部屋はもぬけの殻、両親はいなくなっており、借金取りにやってきたヤクザの組員に人身売買で売られる事になってしまった。
文和を購入したのは堂島雪夜。四十二歳の優しい雰囲気のおじさんだ。
文和は雪夜の養子となり、学校に通ったり、本当の子供のように愛された。
文和同様人身売買で買われて、堂島の元で育ったアラサー家政婦の金井栞も、サバサバした性格だが、文和に親切だ。
三年程を堂島の家で、呑気に雪夜や栞とゴロゴロした生活を送っていたのだが、ある日雪夜が人身売買の罪で逮捕されてしまった。
文和はゴロゴロ生活を守る為、雪夜が出所するまでの間、ペットにしてくれる人を探す事にした。
※前作と違い、エロは最初の頃少しだけで、あとはほぼないです。
※前作がシリアスで暗かったので、今回は明るめでやってます。
綺麗事だけでは、手に入らない
和泉奏
BL
悪魔に代償を支払えば好きな人を手に入れられるのに想いあわないと意味がないってよくある漫画の主人公は拒否するけど、俺はそんなんじゃ報われない、救われないから何が何でも手に入れるって受けの話
【完結】遍く、歪んだ花たちに。
古都まとい
BL
職場の部下 和泉周(いずみしゅう)は、はっきり言って根暗でオタクっぽい。目にかかる長い前髪に、覇気のない視線を隠す黒縁眼鏡。仕事ぶりは可もなく不可もなく。そう、凡人の中の凡人である。
和泉の直属の上司である村谷(むらや)はある日、ひょんなことから繁華街のホストクラブへと連れて行かれてしまう。そこで出会ったNo.1ホスト天音(あまね)には、どこか和泉の面影があって――。
「先輩、僕のこと何も知っちゃいないくせに」
No.1ホスト部下×堅物上司の現代BL。
目が覚めたら、妹の彼氏とつきあうことになっていた件
水野七緒
BL
一見チャラそうだけど、根はマジメな男子高校生・星井夏樹。
そんな彼が、ある日、現代とよく似た「別の世界(パラレルワールド)」の夏樹と入れ替わることに。
この世界の夏樹は、浮気性な上に「妹の彼氏」とお付き合いしているようで…?
※終わり方が2種類あります。9話目から分岐します。※続編「目が覚めたら、カノジョの兄に迫られていた件」連載中です(2022.8.14)
光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。
みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。
生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。
何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる