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六章:夏休みとキャンプ

67:遊歩道

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「お、美味そうじゃん」

 席に着いてからしばらくして、渉たちの元に焼かれたニジマスが運ばれてくる。炭火で焼かれたのか、こんがりとした焼き目の付いたニジマスは食欲をそそる匂いを漂わせ、渉達の空腹が刺激された。

「塩だけでもうまっ!」
「これは、なかなか……」
「新鮮なのもあるけど自分で釣ったと思うと、尚更美味く感じるんだよなぁ」

 柔らかくもほろほろとした身に舌鼓を打ちながら、食べ盛りの大学生の体を持つ三人はあっさりと一人で三匹のニジマスを平らげる。

「次、どうする?」
「どうすっかなー。食べたら眠くなってきた気もするし……俺は昼寝でもすっかな」

 次の行動を訪ねてみれば、侑士がそんな事を言う。

「寝んの?」
「肝試しも楽しみだしなー。仲良くなれた子がいたら抜け出せるかもしれないだろ」
(夜までに、他がくっつくとは思わんのか……ま、言わないけど)

 やはり、どこかズレている侑士に内心ため息を吐きつつ、渉は口を開く。

「わかった。じゃあ、俺のテント使っていいから」
「おう!じゃ、また後でなー!」

 元より夜は、渉のテントで寝る予定だったので、昼寝にも使っていいと許可をだせば、侑士は笑みを浮かべて昼寝へと向かった。

「で、穂。なんか、やりたいこととかある?」

 鞄から改めてパンフレットを取り出した渉が穂へと見せるようにパンフレットをテーブルへと広げると、穂がパンフレットを覗き込む。

「ふむ……アスレチックが目玉のようだが……アスレチックという気分でもなくてな」
(アスレチックで遊ぶ穂は面白そうでちょっとみたい気もするけどな……穂が気分じゃないならいいけど)

 パンフレットを覗き込み悩む穂に、そんな事を思った渉だが、午前中は自分の希望を聞いてくれたので、午後は穂に任せようとしばし穂の返答を待った。

「うむ、決まらん。少し散策しながら考えさせてくれ」
「ん、了解。食後の散歩もいいもんだしな」

 決まらないのなら散歩でいいか。と、頷いた渉は広げたパンフレットをたたみ、鞄へとしまう。その間に穂は、席を立つと食べ終わった皿を重ねて返却口へと返しに行き、二人は休憩所の入り口で落ち合うように外へ出ていく。

 そんな渉達の後を追おうとする女子学生もいたが、さすがに行き先もわからないのに追いかけるのは印象が悪くなると思ったのか、女子学生達が二人の後を追う事は無かった。

 穂の容姿ゆえに視線には晒されるものの、穂目当ての介入者もおらず二人はゆっくりと整備された自然の中を歩く。

「おや、遊歩道らしいぞ」

 キャンプ場内の散歩道を歩いていると、遊歩道と書かれた看板を穂が見つける。その看板の示す先には脇道があり、およそ一時間半から二時間程度のコースだと言う事が看板に記されていた。

(確か三時半くらいから、夕方からのバーベキューの準備するって言われてるんだよなぁ……今が、一時前だから時間的にはギリギリ大丈夫かな)

「んー、時間的には問題ないと思うんだけど……行く?」
「うむ」

 渉の問いに頷いた穂に二人は、遊歩道へと足を向ける。

 遊歩道は、キャンプ場内の散歩道に比べると手入れされているとはいえ、少し道が荒々しい。不揃いで落ち葉の積もった木と土の階段に木の枝が伸び、屈まねば通り抜けられない場所もある。

 それでも、夏の日差しを木々が和らげた木漏れ日は心地よく、木々の間を駆け抜ける風は、さわやかな木々のざわめきと共に涼しさを運んでいた。
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