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四章:穏やかな日常

49:穏やかな夕食

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 神社から渉のアパートへの通り道、穂は思い出したかのように渉へと尋ねる。

「そういえば……夕餉はどうする?何か買っていくのか?」
「んー、作れなくもないけど……疲れたし、家には何もないから買ってこうぜ」
「わかった。そうしよう」

 神社からの道を遡り、一度渉のアパートを過ぎた二人は、商店街にある昔ながらのスーパーで弁当や惣菜、飲み物を買っていく。

「穂、なんか飲みたいものある?俺は飲まねぇけど、酒買っても良いぞ?」
「供えられる酒は好きだが、この体は二十を越えていない設定だからな。我もお主も買えぬだろう?」
「じゃ、酒はいっか。適当に炭酸買おうぜ炭酸」

 映画を見た時の具合の悪さはどこへやら。楽しそうに食料や飲み物を穂の持った買い物カゴに詰めていく渉に穂は少しホッとしたように笑みを浮かべた。

 夕食と明日の朝食分の食べ物といくつかのお菓子を買い込み、渉は食べ物の入った袋を手に足取り軽く帰り道を歩く。

「帰ったら夕飯食って、風呂入って……せっかくだから、予告で見た映画の前作見ようぜ!」

 飲み物が入った袋を持ち、自分の隣を歩く穂へと笑みを浮かべた。

「いいが……どうやって見るのだ?」
「スマホで入ってるサブスクで配信されてたと思うんだよ。だからそれをテレビに飛ばせば、ちょっと大きい画面で見れるって訳。ま、うちのテレビあんまおっきくないんだけどなー」

 渉が一人暮らしをするために買ったテレビは、それなりに安いものを買った為に小さいものだ。映画館のスクリーンとは比べ物にならないが、それでもスマートフォンの小さい画面で見るよりは見ごたえがあった。

「ふむ……では、同座させてもらうとするか」
「同座って……ホント言葉選び硬いなー」

 渉の提案に頷いた穂の言葉選びに渉は苦笑する。それが穂らしくもあるのだが、度々それが面白く思うのだった。

「さ、入って入って」

 米盛荘の自分の部屋の鍵を開け、渉は穂を招く。

「以前より片づいたな」
「この前お前入れた時に、片付けておけばよかったって思ったからな……」

 ダンボールのなくなったワンルームを見回しながら穂が呟き、渉があの日の後悔を思い出しながら呟く。

「ソファーはないから、ベッドに座ってて。俺は、弁当と惣菜温めてくるから」

 穂をベッドに座らせた渉は、テレビをつけてから、買ってきた食べ物をレンジで温めていく。

「おまたせ」
「全てさせてしまって悪いな」
「いや、今日付き合ってくれてんだからこれくらいはするって」

 温かくなった食べ物をテーブルに並べ、軽口を叩きながら夕食を食べる。

(……学食では一緒に食べるけど、こうやって家で人と食べるの久しぶりだな)

 実家では、大人数で食事を取っていたからか、一人で食べる食事は味気なかった。

 だが、誰かと食べる食事はなんとなく心に穏やかな温かさが広がる。

(前、侑士に寝不足の原因ホームシックだったかもとか誤魔化したけど、本当にホームシックもあるのかも知れない)

 自分で気づかなかった事実に気づきながらも、穏やかな夕食を穂と過ごすのだった。
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