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5.救出。そして、拒絶[R18]

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 気持ちいい……きもちいい……キモチイイ……。

 じゅぶじゅぶとした音が耳に届く。

 腹部が膨れているような気がする。

 でも、キモチイイからいいんだ……。

「あ゛っ……あ゛ぁ゛あ゛……」

 中で何か動いている。キモチイイ。

「風よ。囚われし者を救え」

 声?

 誰かいるのか?

 そんな事を思っていたら、体が地面に落ちる。

「あ゛ぁ゛っ……」

 落ちると同時に中から触手が抜けた。キモチイイ。

「……シモン」

 誰?

 きらきらとした男が俺を見下ろす。

「……生きてはいるな」

 冷たい表情が悲しそうに歪んでいた。

 そんな表情初めて見た……そう思うと同時に、快楽に逃げていた自我が戻ってくる。

「うあ……ぁ゛……はいん、つ……あ゛、あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!」

 誰にも見られたくなかった姿を……一番見られたくない人間に見られた。

 助けはないと思っていたのに……一番助けられたくないヤツに助けられた。

 その惨めさに、快楽に溺れていた思考が一気に引き戻されてしまった。

「み゛、み゛る゛な゛っ……み゛る゛な゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛っ……!」

 動かない体を無理矢理動かして体を抱え込むように丸める。

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ……!」

 そのせいで体内に溜まっていた果汁が後孔からぶぴゅっ……と、汚ならしい音を立てながら吹き出し、俺の粉々の自尊心を更に砕いていく。

「ころ゛せっ゛……ころ゛してくれ゛ぇ゛え゛え゛え゛っ……!」

 苗床にされた自分が惨めで、ハインツに助けられたと言う事が惨めで、俺を見下ろすハインツに殺してくれるように叫ぶ。

「……断る」
「ころ゛せ゛ぇ゛え゛え゛え゛っ!」
「……それだけ、元気なら大丈夫そうだな」

 淡々としたハインツからの答えにもう一度叫ぶが、ハインツはなぜか安堵したような表情を浮かべた。

「ここでは、治療もできない。一度帰るぞ」
「ひっ……! いやだっ……! やめろ゛っ!」

 俺に向かって歩いてきたハインツから逃げようと這いずって逃げようとしたが、蠢くのがやっとな体。

 容易くハインツに捕まり、果汁に濡れた体のまま、横抱きに抱えられた。

 砕けきった俺の自尊心は、もはや粉になっていることだろう。

「はな゛せっ……! はな゛せっ……!」
「対策はしてある。媚薬は、効かない」

 淡々と答えるハインツだが、俺はお前の身を心配しているわけじゃない。

 お前に助けられるのが、この体で町に戻るのが嫌だった。

「おろ゛せっ……! ころ゛せっ……!」
「断る」

 俺の言葉を、ハインツはまた拒む。

 そんなに俺を連れ帰って辱しめたいのか……。

 それほどまでに疎ましく思われていたのか……。

 確かに、今までつっかかりまくったし、対抗意識だってあった……。

 だけど、辱しめられるほどの事までしたか……?

 どうして死なせてくれないんだ……。

「ころ゛せ……ころ゛してくれ……おまえ゛に……対抗、意識……もってたのも……つっかかった、のも゛……あや゛ま゛る゛……から゛……ころ゛してくれ゛よ゛……」

 砕けた自尊心では、もうハインツ相手でも虚勢を張る事さえできず、ボロボロと泣きながら殺してくれるように懇願する。

 せめて、ギルドのヤツらには、町の人間には知られたくない。

 Sランク冒険者シモンとして死なせてほしかった。

「断る。せっかく助けられた想い人を死なせるつもりはない」

 ぐずぐずと泣いていた俺の耳に信じられない言葉が届いて耳を疑う。

「……おもい、びと?」
「そうだ」

 いつものように冷めた表情のハインツが頷く。

 おもいびと……想い人!?

「……だれが、だれ……の?」
「お前が、私の」

 ハインツが俺の問いに答えたが俺の混乱は増すばかりだ。

「もういいか? 危険はないだろうが、早めに治療したい」

 混乱する俺をよそにハインツは淡々と喋ると、魔力を練り上げる。

「な、なにっ……!?」

 次から次へと起こる出来事に俺は戸惑う事しかできない。

「……転移。目標、自宅浴室」

 抑揚のない声がハインツの口から溢れると、魔力が俺達を包み込み……一瞬で森から見覚えのない室内へと移動した。

「えっ……えっ!?」

 森にいたはずなのに、辺りを見回せばタイル張りの浴室に移動していて戸惑う。

 転移魔法……!?

 存在があるのは知っていたが、本当に使える人間がいるなんて……。

 それも、ハインツが……。

 はははっ……わかりきってはいたが……俺がハインツに張り合うなんて……烏滸がましいにもほどがあるってやつだったんだな……。

 目を逸らし続けていたハインツとのレベルの差を理解せざるを得なくて……今までの冒険者としての経歴すら虚しくなるばかりだった。

「シモン」
「っ……!」

 ハインツの声に力の入らないはずの体が強ばる。 

「果汁を洗い流すから下ろすぞ」
「あ、ぁ……」

 ここがどこだかわからないが、ハインツのさっきの言葉が事実ならコイツの拠点なのだろう。

 町外れにある大きな屋敷。領主から与えられたとも噂されるそれは、同じSランクでも年期の差や領主からの信頼の差を表しているようだ。

 未だに宿暮らしの俺とは、文字通り格が違った。

「っ……ぁ……!」

 抱えられたハインツの腕の中から、タイル張りの床に下ろされた冷たさで体が震える。

 声を上げたくないのに快楽に浮かされる体。

 ハインツの腕の中では、気が張っていたのか気にならなかったのに……その腕の中から解放された安堵からか、俺の体は僅かな刺激に快楽を享受し始めた。

「い、いやだっ……! みるな、見ないでくれっ……!」

 タイルぼ冷たさにゾクゾクとした快楽が体に満ちる。

「いや……やだっ……あっ、あ……あぁあああっ!」

 快楽を押し込めようと体を丸め、耐えようとするが俺の意思に反して体は絶頂へと至る。

「ふっ……ふぐっ……うぅぅ……」

 惨めで、惨めで……泣き始めた俺の頬を、ハインツが繊細なガラス細工に触れるように撫でる。

「シモン。大丈夫だ。なにもおかしいことではない。今は、私とお前しかいないんだ……何も考えずに全てを受け入れたらいい」
「っ……おまえ゛……だから……いやなんだよ……」

 ハインツだから嫌だ。こんな姿を見られたくなかった。

 気にくわない男だった。

 イケ好かない男だった。

 でも、誰より羨ましく憧れていた男だった。

 だからこそ、こんな姿を見られたくなかった。
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