【完結】イケ好かないライバルに助けられたと思ったら……。

海野璃音

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2.ほんの僅かな油断[R18:触手×シモン]

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 Sランク冒険者になってからの俺は順調だったと言えるだろう。

 Sランクでもソロって言うのは珍しく、数えるほどしか居ないSランクの中でもほんの一握りだ。

 うちのギルドには、そんなソロSランクが二人。

 俺とハインツがいるからか、他の町のギルドからも一目置かれている。

 ハインツとセットなのは、気に食わねぇし、天才と言われるハインツと比べられる事もあるが、それでもハインツから見下されるような言葉をかけられることがなくなったから気分的には楽だ。

 外野から色々言われるより、ハインツから嫌みを言われる方が嫌だったからな。

 ま、そんなわけで今までは受けることのできなかったSランクの依頼に駆り出されて、今いる町や領だけでなく、隣接する領や国……時には隣国にも赴くようになった。

 ギルドも俺とハインツの因縁は知っているからか、共同依頼を指名される時もハインツが加わる事はない。

 初めのうちは、うちのギルドから派遣されたのが俺だったからがっかりされる事もあったが……最初だけだ。

 組んだ奴らからは、ハインツは強いが連携が取れないとか、勝手に行動して依頼を終わらせてくるなんて話も聞いた。

「シモンは、ちゃんとこっちの意見も聞いてくれるし、やりやすいよ」

 なんて言う別の町の冒険者に、アイツはどこへ行っても変わらないのだと思う。

 それでもなお……一人でSランクの共同依頼を完了させるというハインツに、アイツはSランクの中でも飛び抜けている事を実感した。

 それが悔しいとも思うが、アイツのように和を乱して依頼を完了させられる腕は俺にはない事も自覚している。

 どれだけ追いつこうと頑張っても、俺のずっと前を歩いているアイツに腹が立った。

 そんなある日の事……。

「樹海にSランク級の魔物の痕跡が?」
「はい」

 拠点とする町に帰ってくると、ギルドの受付嬢からそんな報告を受ける。

 この辺りは、深い樹海からもたらされる素材で産業が成り立っている。

 経験の浅い冒険者も、それらの素材の採取で生計を立てているから、樹海の浅いところで強い魔物の痕跡が発見されたのは由々しき事態だった。

「俺が行ってこようか?」
「ですが、まだどの魔物かも特定しておりません。シモンさんでもさすがに危険かと」
「だけど、浅いところまで来てるならのんびりしている時間もないだろ?調査含めて俺がやるさ」
「……わかりました」

 渋る受付嬢だったが、余裕がない事は事実だったようで、指名依頼として受理される。

 戻ってきたばかりで多少疲れてはいたが、早々に準備を整えて樹海へと入った。

 教えられた最初に発見された痕跡を探し、そこから徐々に捜索範囲を広げていく。

 薙ぎ倒された樹木や幹に残った爪痕からおそらく熊型の魔物だということがわかったが、肝心の痕跡の主には出会えないまま時間ばかりが過ぎていった。

「一度、町に戻るべきか?」

 数日追いかけても痕跡しか見当たらない用心深い相手にギルドに報告すべきか迷う。

 食料も少なくなってきたし、あと一日捜索して見当たらなかったら一度報告しに帰る。と、決めたところで俺は目的の魔物を見つけた。

 それは、痕跡の通り熊型の魔物。Sランク級とはいえ、俺でも油断しなければ十分に倒せる相手だった。

 気取られないように近づき、交戦しかけるもトドメまであと一歩というところで逃げられてしまった。

 数日捜索しても見つからなかった用心深い相手に勇み足過ぎたかと反省しながら、その背中を追う。

 追いかけて追いかけて……本来の生息地であろう樹海の奥深くまで魔物を追いかけ、なんとか討伐できた。

 そう、そこまではよかったのだ。

 討伐した魔物をマジックバックに収納して、帰ろうとしたその時。甘ったるい匂いが鼻を満たす。

 マズいと思って、口と鼻を手で覆うも時すでに遅し。

「っあ……」

 体から力が抜け、呆気なく地面へと倒れ伏した。

「はっ……はぁっ……」

 力の抜けた手では、口元を押さえることもできずに、その甘ったるい匂いを否が応いやがおうにも吸い込んでしまう。

「あ、あぁあ……」

 この匂いに心当たりのあった俺は、自身の不甲斐なさと未熟さに苛まれながら、己の不運と末路を呪った。

 コイツらは、人を苗床にして繁殖する植物型の魔物だ。

 その擬態技術は様々だが、特徴は甘ったるい香りのする花と蔦のような触手。

 熊型の魔物を討伐した時は気づかなかったが、どうやら木々の上部に花を咲かせており、ここら辺一帯がヤツらの群生地のようだった。

 この甘ったるい匂いには、人間の動きを麻痺させる効果と感度を高める効果がある。

 精製すれば、麻酔にも媚薬にもなるから上位の冒険者にとっては良い収入になるのだが……準備を整えなければ、コチラが食われかねない相手。

 そう、今のように群生地だと気づかずに踏み込んで餌食になる冒険者も多い相手だった。

 不運といえば、それまで。

 だが、ここまで来て、Sランクにもなって苗床になるなんて、あまりにも情けない終わり方だろう。 

「っ……!」

 現状を理解して、歯を食い縛るも、それだけしかできなかった。

 獲物が無抵抗になった事を理解したかのように、今までは擬態していた蔦状の触手がしゅるりと周りの木々から離れ、俺へと迫ってくる。

「く、来るな……!」

 なんとか体を動かそうにも、這いずる事すらできず、僅かに体を持ち上げた腕は、体の重さに堪えきれずに呆気なく落ちた。

「いやだ……! いやだっ!」

 迫り来る触手が俺の服の隙間から入り込む。体に沿って作られた胸当ての下に潜り込まれると、その圧迫感により、より触手の動きを感じる。

 ややざらついた触手の表皮で肌を擦られると甘ったるい匂いの催淫効果で徐々に体が熱くなっていった。
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