ごろつきだったハイエナ獣人の俺を救ってくれたのは、王族軍人のライオン獣人だった。

海野璃音

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ごろつきだったハイエナ獣人の俺を救ってくれたのは、王族軍人のライオン獣人だった。

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「ぐあぁあああ!」

 何度目になるかわからない痛みに声をあげた。わけもわからないうちに軍のやつらに捕まって、何度も鞭で打たれる。
 俺は、ごろつきっちゃごろつきだが、こいつらの言うなんか薄暗い組織に所属しているわけでもない単なる喧嘩屋だ。地下闘技場で最近トップを取ったハイエナ獣人。それが俺だった。
 地下闘技場なんて薄暗い組織の管轄だが、俺はフリーの喧嘩屋でどれだけ嬲ろうが何も出て来るわけがない。それなのに熱心に鞭で打たれて、嫌になる。喧嘩の痛みなら楽しめるんだが、拘束されて一方的に甚振られるなんて楽しくない……。
 終われ終われと願いながら、激しい痛みと背中からの出血で意識が朦朧としてきた時、なにやら拷問室の前が騒がしくなってきた。
 意識を失う前に見たのは、破られた扉。そして、豊かな鬣をなびかせる勇ましい男だった。





 白い天井が見える。それを見て、ぼんやりとする頭で思ったのは生きていたのか……と言う事だった。

「目覚めたのか」

 熱があるのか考えの纏まらない頭でぼんやりしていると、低く耳障りのいい声が耳に届く。視線を向ければ、意識を失う前に見た男がいた。豊かな鬣を持つその姿はライオン獣人らしい姿だ。
 ライオン獣人は皆王族の血を引いている……軍服を着てるってことは直系ではないだろうが……俺なんか下民が顔をあわせられるような存在じゃない。それなのに男は俺へと近寄ると、俺に視線を合わせるようにひざまずいた。

「私達の不手際で無実の君を巻き込んだ。助けが遅くなって申し訳ない」

 王族が、俺みたいなヤツに頭を下げている。平民ですら見下してくるような貧民街出身の俺に。理解が出来なくて、ぼんやり見つめていたら男が笑う。

「今は熱が出て辛いだろう。落ち着いたらまた話に来よう。ゆっくりと休むといい」

 それだけ言って、男は部屋を後にした。俺はそれをぼんやりと見送り、男と入れ違いに入ってきた医者と助手らしきやつらに世話をされる。
 医師達が言うには尋問……殆ど拷問のような仕打ちに両手足の指や両腕、両足が折れてる上に、背中は鞭で打たれ続けたせいで皮膚が裂けているらしい。今の熱は背中の傷から来てると言われた。
 世話を受けながらなんとか受け答えしていたら、正気なことを驚かれたがあの程度で正気なんて失ってられない。ガキの頃は理由もなく虐げられる事もあったし、大人になってからも目付きが気に食わないと喧嘩を売られてばかりだった。今回だって生きてるだけ儲けもんだ。
 背中の包帯を変え、食事として出てきた薄いスープをなんとか飲み干す。それだけで疲れきった体にここまで弱ったかと内心苦笑した。
 横になれば、点滴に痛み止めを入れられ、効き始めた痛み止めにより、瞼が落ちてくる。久しぶりに人扱いされたと思いながら、俺は深い眠りに落ちていった。





 あれからあのライオン獣人はちょこちょこ顔を見せに来た。俺が軍に捕まった理由とか、やっぱり派系王族だということだとかも話しては帰っていく。
 俺が軍に捕まった理由が地下闘技場で勝ちすぎたがゆえに、邪魔になってスケープゴートとして買収された軍人に適当な罪状と共に売られたと聞いた時は、まあそんなもんだろうなと思った。まあ、それはいいんだ。貧民街生まれだし、いつかはそんな事になるだろうと思っていたから。
 問題は今後の事だ。折られた指も手足も元のように動くかわからないと言われたし、背中の傷は治っても皮膚が引きつったままで毛も生えないだろうと言われて、どうやって暮らしていこうかと頭を悩ませていた時、男は言った。

「あの拷問を耐え切った君が欲しい。怪我が完治したら私の右腕になってくれないだろうか。無論、そのような体にした軍を憎んでいるのであれば、断ってくれて構わない。君は被害者だ。断ったとしても治療費や当面の生活については私が支援しよう」

 男が言うには、あの拷問を受けてなおケロッとしている俺が部下に欲しいのだという。強靭な精神を持つ俺は軍人向きだと。ちなみに俺を拷問してたヤツは片手の指が折りきられる前に買収された事を吐いたらしい。情けねぇと思うが、その後魔物を討伐する部隊の前線に無期限で配属されたらしいから遅かれ早かれ死ぬだろう。ざまぁねぇな。

「別に軍に対しちゃ恨みもなんもねぇよ。俺を売ったやつらに対してもな。他人に期待しちゃ裏切られるとこで生きてきたんだ。あれぐらい普通だ」

 俺の言葉に男の顔が曇る。軍人とは言え王族だ。貧民街の事など気にした事もなかったんだろう。

「でもまあ、就職先の面倒見てくれるってなら世話になるぜ。こんな体じゃいつまともに動けるようになるかわからねぇけどな」
「……ああ、任せてくれ。元のように動けるようにならなかった場合は、他に出来る仕事を与えよう」

 曇っていた表情が穏やかな笑みへと変わる。王族や貴族って、俺らみたいなヤツはそこらにある石のようなものだと思ってると思っていたけど、コイツはそんな風には見えない。ホント、不思議なヤツだ。

「今までも世話になってたけど、これからも頼むぜレオンハルト様」
「私にできる、できうる限りの償いをさせてもらおう。君が私の隣に立つ日を待ち望んでいるよフィシ」

 これが俺とレオンハルト様……レオン様との始まりといえば、始まりだったのだと思う。





 退院して、俺が連れて来られたのはレオン様の屋敷だった。軍人ではあるがさすが王族と言えるような屋敷だった。
 レオン様は公爵家の次男。ご両親やお兄様もいい人で、使用人達もいい人ばかりだった。地下闘技場に入り浸っていたような貧民街のごろつきだった俺を快く受け入れてくれて、いろいろと教えてくれた。礼儀だとか、マナーだとか。レオン様の右腕になるなら必要だと言われたら頑張るしかないだろう。
 体が動かせるようになるまでは殆どが座学だったけど、動かせるようになったらリハビリから始まり、座学で覚えたマナーやダンスまでするはめになった。筋トレとか訓練したかったんだけど、まだ早いってさ。正直、ダンスとか必要あるのか?って思ったけど、王妹である奥様……レオン様のお母様に凄まれたらはいとしか言えなかった……。

「フィシ。無理はしていないか?」
「ん?たしかに大変だけど、楽しくやってますよ」

 心配そうなレオン様に敬語で返せば、面白く無さそうな顔をされる。せっかく覚えた敬語を使うようにしてるのだけど、レオン様にはいまいちウケが良くない。

「楽しくやってるから大丈夫だって」

 今まで勉強なんて出来る環境にいなかったから、こうして勉強できるのは楽しいといえば、レオン様の表情がまた変わる。なんともいえないような複雑そうな表情だ。
 王族のわりにレオン様ってころころ表情が変わる。奥様はどんなに凄んでても笑顔だし、レオン様のお兄様も奥様と同じような系統だと思う。ちなみに旦那様はいい人だけど見事な鉄面皮である。レオン様は次男だからかのびのびと育った結果がコレなんだろうか……不思議だ。

「君が楽しんでるならいいが……疲れたときは言うんだぞ。母上も厳しい人だが、万全と言えない君に無理をさせる人ではないからな」
「あー……うん、わかった」

 心配されるというのがこんなにもくすぐったいものだとは思わなかった。俺は今までずっと死んでも構わない存在だったから。
 レオン様が、俺を見てくれて、心配してくれる事がすごく嬉しい。あんな、ゴミみたいになった俺を拾い上げてくれたこの人に返せるものなんて俺にはこの身くらいしかない。
 頑張って、レオン様の右腕として隣に立てるよう……レオン様に恥じない俺に慣れる様になろうと改めて決意した。





 レオン様に拾われてから二年が経ち、俺はレオン様の部隊へと配属された。身体能力は元通りとまでいかないが日常生活や訓練を行える程度には回復し、一般兵として軍の訓練に参加するようにまでなっている。
 レオン様の部隊の人間は俺がどんな状況からここまで回復したか知っているから、入隊した時は驚いていたし、入隊祝いと兼ねて回復祝いまでしてくれた。一般市民出身の人だけでなく、貴族出身の人だっていたのに、本当に……出会いは散々だったけどあの日以降俺はいい人に恵まれている。
 だが、それを良く思わないヤツらもいた。レオン様とは別派閥の貴族達だ。レオン様は軍人で公爵家の次男とは言え、王族。軍人としても王族にもかかわらず、一般兵として入隊し、年若くして大佐まで上り詰めた人だ。少将への昇格も間近と言われているから繋がりを持ちたい貴族は多くいた。
 そんな貴族達からしたら、俺はぽっと出の汚らわしい貧民でしかない。それなのに公爵家で世話になり、レオン様の部隊に配属され、幼い頃からの腹心でもないのに側に置くのを見せられていたら、俺のことが邪魔になるのに時間は掛からなかった。

「ぐっ……」

 他の部隊への書類を一人で運んでいた最中、突然囲まれ、そいつらの部隊の執務室へと連れ込まれた。
 そこで行われたのは懐かしさすら感じられる拷問。意味もないことを詰られ、抵抗すればレオン様の責任になると無抵抗のまま嬲られた。
 剥がされた爪。逃げぬようにと砕かれた足。そいつらは次はどこを折ろうかなんて楽しげに話している。お前ら、俺がここまで回復するのに何年掛かったと思ってるんだ……。折角あの人の役に立てるまでに回復したってのに……。悔しくて、悲しくて、初めて感情のままに涙を零した。

「フィシ!」

 あの日と違って、心が折れてしまいそうな俺の前に、あの日と同じようにレオン様が現れる。床に転がった俺を見て、信じられないものを見たような表情をしたレオン様。だけど、それが一気に怒りの表情へと変わり、俺を一番嬲っていた男を殴り倒した。

「この部屋にいる者を確保しろ!全て軍法会議にかける!その背後にいる貴族も全てだ!」

 珍しいレオン様の怒号に部隊の仲間が部屋にいたヤツらを拘束していく。俺はそれをレオン様に抱き起こされながら、眺めていた。

「すまない……二度も君をこんな目に合わせてしまった」

 先ほどまでの憤怒の表情とはうって変わって、レオン様の表情は暗い。後悔と悲しみをごちゃ混ぜにしたかのようなそんな表情だった。

「油断してた俺が悪いんですよ……」
「違う。悪いのは私だ。君を一人にするべきではなかった。本当にすまない」

 俺を嫌う貴族がいることを俺達は知っていた。だけど、まさかここまでするほどだとは思ってもいなかったのだ。

「レオン様。こちらでは手当てもろくに出来ません。こちらは私達に任せて医務室へ」
「……ああ、そうだな。少し揺れるだろうが耐えてくれフィシ」

 俺達の様子を見ていた副官に声をかけられ、レオン様は俺を連れて医務室へと向かう。人々の視線は、明らかに拷問にかけられたであろう俺とそれを運ぶレオン様へと向けられていた。






 他の部隊の兵士を私情で拷問にかけたという大事件が起きてから一年。俺は、また公爵家へと世話になっていた。
 砕かれ、変な方向に曲がっていた左足はどうしようもなくて切断する事になったが、それ以外はいたって良好である。
 軍部や貴族の大粛清があったけど、被害者にもかかわらず他人事のように見てたら同僚達には呆れられた。

「お前のメンタルオリハルコンかよ」

 なんて、言われたけど今回は流石に堪えた。足一本なくなるのは辛い。レオン様に責任とって娶るとかも言われたけど、そこまでしなくていいって返した。でも、俺がこうして公爵家にいるからどうなったかは言うまでもないだろう。

「ただいまフィシ。リハビリはどうだい」

 帰ってきたレオン様に抱きしめられて、キスされる。なんだかんだコレにも慣れてきた。

「んー、そこそこ。走るのはまだ難しいかな」

 そう言った俺の失った左足には、金属で作られた新しい足が着いている。膝下に装着したそれは魔導義肢と呼ばれる特殊な義足だ。自分の魔力を馴染ませ、生身と変わらない動きをするそれは最高級品と呼べるに相応しい一品。
 魔力の少ない獣人にとって扱いにくいものではあるが、魔法の才能があったのか比較的早く馴染んでいると医者に言われた。
 本来であれば、高いものだし普通の義足にしようと思っていたんだけど……。「結婚してもいいけど、軍での隣も諦めたくない」と、言ったら二つ返事で用意してくれた。俺って愛されてる。
 なんだかんだ結婚した俺達だけど、レオン様は責任ってだけでなく、俺をちゃんと愛してくれていたらしい。それも最初に助けてくれた時から。
 本当は、囲うつもりだったみたいだけど、俺と話して、俺が囲われたり、守られたりするのを好みそうになかったから、せめて側に置きたいと思った結果が右腕になってほしいってことだったらしい。
 一度、求婚を断った時にこれでもかって熱弁された俺の気持ちって言ったら……。まあ、俺も足砕かれた時にレオン様の隣にいられなくなるんじゃないかって泣くくらいには好きだったのであっさりと陥落した。
 大粛清があったといっても、貴族とのかかわりが増えるであろう立場が怖くないといえば嘘になる。それでも、側に居たいと思うほどにはレオン様の事が好きだったのだと気づいたのだ。

「フィシ。今日は愛してもいいかい?」

 夕飯を一緒に食べて、ソファーでゆったりと二人でくつろいでいたらレオン様に抱き寄せられて、熱っぽく囁かれる。明日はレオン様の休みで、俺もそれに合わせてリハビリや勉強のない休みの日だ。断る理由はない。……恥ずかしいではあるけど。
 小さく頷くと抱えられて、ベッドへと連れて行かれる。服を脱がされ、魔導義足も外されて、ベッドに横になれば、同じく服を脱いだレオン様に体のいたるところへとキスされた。

「綺麗だ」

 俺の傷だらけの体を見て、レオン様はうっとりと呟く。背中の毛はまだらだし、左足はない。それ以外にも貧民街時代についた傷がたくさん隠れているのに、その一つ一つにキスを落としていく。
 いつだったか、何でそんなに傷にキスするんだって聞いたら「これだけ大変な目にあったのに君は折れずに曲がりもせず、真っ直ぐに生きてきた証だからだ」なんて、言われた。
 貧民街時代。大人になってからは地下闘技場に入り浸ってはいたけど、子供の時から盗みや殺しはしなかった。
 地下闘技場に行くようになったのは、成人した頃に絡まれたヤツらを叩きのめしたら、そいつらが地下闘技場の選手だったのだ。そいつらを怪我させてしまったから仕方なく試合に出る事になって、そしたら抜け出せなくなってずるずると……結局あそこから抜け出せたのはスケープゴートとして売られて、レオン様に拾われたおかげだったな。

「フィシ。何を考えてる」
「んー、レオン様と出会えてよかったなって」
「そうか。私も君と出会えて幸せだが……今は思い出の私より、現在の私に集中して欲しいな」

 穏やかに笑ったレオン様。数拍も経たないうちに唇を奪われて、レオン様の舌が口の中に入ってきた。
 ライオン獣人なレオン様の舌は猫系獣人ゆえにどこかざらりとしていて、それで口内を舐められると、ぞくりとした快感が背筋を走る。
 俺としては、うっかり噛み千切らないか怖いんだけど、レオン様はその時はその時だと笑って止めてくれない。ハイエナ獣人の顎の力って骨すら砕くからホント危ねぇんだ。
 でも、本気で拒めない俺も俺だ。そこまで気を許してくれてると思うと嬉しくて、舌を絡め、吸われ、その快楽に酔う。

「ぁ……」
「愛してるよフィシ」

 レオン様の手が俺の体を撫で、愛撫していく。感じるなんて知らなかった乳首もレオン様の指に転がされたら甘い快楽を生み出すし、チンコは言わずもがな。溶けて、溶けて。快楽に酔いきった頃。香油に濡れたレオン様の指がケツに触れる。

「あ……あぁっ……!」

 ぐっと中を探られるように押されれば、快楽に酔った体はあっさりと新たな快楽に堕ちていく。

「ぁ……あっ!れおん……れおん……っ♡!」

 厭らしい水音がほぐされているケツから響いて、頭を振る。でも、俺達獣人は聴覚も嗅覚もいいからちゅぶちゅぶとした粘質な水音は俺の脳を犯し、俺の痴態に興奮しているレオン様の体臭すら俺を高める媚薬と化した。

「あっ、そこ……っ、そこっ♡!あっ♡!あっ♡!」

 気持ちいい場所を三本の指でぐりぐりと揉まれ、体が跳ねる。射精することなく達した体はくったりと力が抜け、多幸感に包まれた。

「可愛いねフィー」

 俺を甘やかす時だけに呼ぶ愛称が嬉しくて、笑みが浮かぶ。

「あっ♡!あぁっ♡!」

 レオン様が俺の中に入ってくる。柔らかい棘のついたチンコは猫系獣人特有の陰茎だって、初夜の時に聞いた。最初は予想外の形に怯えたけど、先が細いチンコはすんなりと最奥にまで届く。でも、このチンコが凶悪なのはここからだった。

「ひっ、あぁあああっ♡!」

 先は細くて、するすると入るのに、抜く時は棘が返しになって、肉壁をこそげるように中も縁も引きずり出されるような感覚に襲われる。頭はチカチカしていきっぱなし。気持ちよくて気持ちよくてずぶずぶと快楽の海に溺れていく。

「あっ♡!んぁっ♡!れお……っ、れおんっ♡!」
「フィー。私の可愛いフィー」 

 抱きしめて欲しくて手を伸ばせば、俺より大きな体で抱きしめてくれる。その温もりと与えられる快楽に溶け、沈んでいく。ただただ与えられる愛と快楽が心地よかった。





 レオンに愛され、支えられながら、俺はあの事件から二年半で軍に復帰した。でも、魔力が高すぎて、男でも孕める体だったと判明したのはそれから半年後。それと同時に俺はまた休職する事となった。

「……せっかくアンタの隣に立てると思ったのに」
「奥さんってだけでは……不満みたいだね」

 少し膨れてきた俺の腹を撫でるレオン。その顔はでれでれとして締りがない。ったく、そんな幸せそうな顔されたら俺の怒りも続くわけないじゃないか。

「……レオン」
「なんだいフィー」
「俺……いろいろあったけど、アンタと一緒になれて凄く幸せだ」

 家族なんて持つことなく、死ぬのだと思っていた。レオンと結婚してからも男だから子供はできないと思ってたのに……。

「私も君と一緒になれて幸せだ。これからも愛させてくれ」
「ん……でも、子供産んで二年したら軍に復帰するからな」
「私としてはおと……わかってる。いつまでも待ってるから焦らなくて大丈夫だよ。君には魔法もあるから、五年後でも十年後でも席は用意できる」

 そうは言っても、やっぱり公私共に側に居たいのだ。他の仲間もいいヤツらだってわかっているけど、コイツの隣は俺のものなのだから。





 その後、なんだかんだ子供を三人産み、俺が軍に復帰できたのは初子を産んでから十年後。復帰直前で命中させてくるレオンに切れて、三子目以降はしっかり避妊させたのは言うまでもない。
 でも、まあ……子供達は可愛いし、幸せだからいいんだけどな。
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