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本編

12:勇者にとってのダークヒーロー

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「ご、ごめん! 不躾に触りすぎた!」
「好きに触って構わない。我は、人型を模してはいるだけにすぎないからな」

 謝る俺にヒルドは気にする事なく、言葉を返す。

 ヒルド的には、人っぽい体を真似ているだけで、認識的には触手がメインらしい。

 たぶん、どこ触っても言葉の通り気にしないのかもしれない。

 服も着てないし、納得の自己認識だ。

 ……気にしないのならもうちょっと触ってもよかったりする?

「じゃあ、もう少し触っていいか?」
「構わない」

 触れたいと言う欲求に抗えず、尋ねればヒルドは一つ返事で許可をくれる。

 その言葉に甘えて、俺はヒルドの右手に手を伸ばした。

「綺麗に編んでるんだな」

 されるがままの右手を両手に持ち、眺める。

 ヒルドの体は、黒い触手で編まれているが、太い触手から細い触手まで様々な太さがいりくんだ手を見ているだけでも面白い。

 この部屋に入って来た時の印象の通り、生物的でありながら無機質であり、機械的な作りだ。こう……配線的な感じがするんだよな。……近未来モノのロボットというか……アンドロイド的なかっこよさが。

 しかも、日本人の平均身長な俺より頭二つ分くらいデカイんだから、かっこよさが爆発してるとも思うんだよ。地球のアニメとか特撮で人気の出そうなディティールだと思う。

「人の姿を真似てるのって、自分の意思?」
「そうだな。幼い頃は、体を編まずに過ごしていたのだが……母の姿を真似たくてな」
「へー、そうなんだ」

 じゃあ、ヒルドの子供は触手の塊みたいになるんだろうか?ちょっと気になる。

 ヒルドの感じ的に、わかるのはまだまだ先の話だろうけど。

「でも、メディの姿を真似したのに、女性の姿じゃないんだな」
「女性体も試してはみたのだが……しっくりしなくてな。いろいろ試して、一番馴染んだのがこの形なんだ」
「ふーん?いろんなヒルドも見てみたいけど、その姿が最高だと思うぞ。一目惚れもあるけど……ダークヒーローっぽくて!」
「ダークヒーロー?」

 あ、こっちでは伝わりにくい感覚か。

「えっと、何て言えばいいかな……俺の世界での創作物の主人公の種類の一つ……勇者みたいなもので……悪だけど正義というか……悪の敵だから正義というか……」

 いや、説明するの難しいな!?

 どう説明したものかと頭を悩ませていると、天啓のように降りてくる。

「俺にとってのヒルドみたいなものかも!」
「我?」
「そう! 魔王って言われてるけど、自爆させられたの助けてくれたし!」

 そうだそうだ。ダークヒーローっぽいビジュアルどころか、俺にとってのダークヒーローそのものだ。

「あ、でも……例えとしてはわかりづらいよな」

 説明にはなってないなと気づいてちょっと落ち込む。俺的には、いい例えだったんだけども。

「いや、説明しようとしてくれた事が嬉しい。だが……そうか。お前にとっての勇者のようなものか」

 その言葉と共にヒルドが微笑んだような気がした。
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