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本編
3:ヒステリック聖女
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突然の求婚にもかかわらず、魔王の返答は大人な対応。敵対する勇者の求婚なんて問答無用で断ってもいいはずだ。いや、それどころか求婚どころか俺の体ごと両断してもおかしくないはずなのに……。
友人からって! 友人からって! もう惚れなおすしかない!
「ふつつかものですがよろしくお願いします!」
「いや、それは気が早かろう……」
勢い余って、新婚の挨拶みたいな事を口走った俺に魔王が困ったような口調で呟く。
その困った声すらイケボだ。
低音でありながら柔らかさもある甘い声って感じ?
外見は、完全に人外! って見た目なのに、声は穏やかとか……ギャップがすごい! そこがいい!
地を這うような声でもおかしくないのに……てか、どこから喋ってるんだろう? 顔の真ん中の穴?
首を傾げながら、魔王の顔を見つめていると、よりドキドキしてくる。
やっぱり異形って感じだけど……なんと言うかときめきが止まらない?
どことなくゴムっていうか、樹脂チックな艶やかさのある触手が艶かしい。
人ならざる色気とでも言うべきだろうか……俺の心にぎゅんぎゅんきた。
「魔王と友人など……人間を裏切るおつもりですか!」
魔王に見とれていると、俺の背後からカルラの声が聞こえる。
裏切りと言われるのは、心外だ……事なかれ主義でここまでは言うとおりに働いてきたのだから。
辺境の魔物も倒したし、山賊も倒したし、隣国との小競り合いにも参加した。
魔王討伐で呼ばれたのに他の仕事させるのも規約違反じゃん。
それに戦いのたの字も知らない異世界のド素人をパワーレベリングして、最前線に強制連行とか、普通に裏切り案件だと思う。
ここまで耐えた俺って偉い!
「勇者様! お答えください!」
そんな事を考えていたら、振り返りもしない俺にカルラの怒りのボルテージが上がっていく。
うーん、振り返りたくないけど、振り返るか……。まだまだ魔王を見つめていたかったのに。
魔王から視線をずらす事を名残惜しみながら、しぶしぶ振り返ってみればめちゃくちゃ怒っているカルラの顔が目に入る。
お清楚な聖女がしていい顔じゃないって……。
「俺、好きになった人とは戦いたくない」
「貴方は、勇者なのですよ!この世界を救うべく呼ばれた!」
「……仕方ないだろ! 好きになっちゃったんだから!」
芽生えた恋は止まらない。戦うなんてできるはずもなかった。
「使い捨ての駒の分際で……!」
あ、それ本性?
俺を睨み付けるカルラに、今まで取り繕っていた聖女としての仮面が剥がれているなぁ……と、他人事のように思う。
あの憎悪を向けられてるのは、俺なんだけど。
「そんなにも魔王が恋しいと言うのなら私自ら引導を渡してあげましょう!」
カルラが聖剣の対だと言われていた聖杖を掲げる。その先端の宝玉が光ると同時に俺の腰に着けてた聖剣も同じように光り出す。
あ、やべぇ雰囲気。
「弾け飛びなさい!」
聖剣に宿った魔力が光と共に高まり、外して投げるというか行動を行う以前に臨界点を迎える。
俺は、どうせ使い捨ての駒だったかもしれないけど、魔王だけは巻き込みたくなかったなぁ……。
走馬灯のように魔王への申し訳なさが溢れた。
友人からって! 友人からって! もう惚れなおすしかない!
「ふつつかものですがよろしくお願いします!」
「いや、それは気が早かろう……」
勢い余って、新婚の挨拶みたいな事を口走った俺に魔王が困ったような口調で呟く。
その困った声すらイケボだ。
低音でありながら柔らかさもある甘い声って感じ?
外見は、完全に人外! って見た目なのに、声は穏やかとか……ギャップがすごい! そこがいい!
地を這うような声でもおかしくないのに……てか、どこから喋ってるんだろう? 顔の真ん中の穴?
首を傾げながら、魔王の顔を見つめていると、よりドキドキしてくる。
やっぱり異形って感じだけど……なんと言うかときめきが止まらない?
どことなくゴムっていうか、樹脂チックな艶やかさのある触手が艶かしい。
人ならざる色気とでも言うべきだろうか……俺の心にぎゅんぎゅんきた。
「魔王と友人など……人間を裏切るおつもりですか!」
魔王に見とれていると、俺の背後からカルラの声が聞こえる。
裏切りと言われるのは、心外だ……事なかれ主義でここまでは言うとおりに働いてきたのだから。
辺境の魔物も倒したし、山賊も倒したし、隣国との小競り合いにも参加した。
魔王討伐で呼ばれたのに他の仕事させるのも規約違反じゃん。
それに戦いのたの字も知らない異世界のド素人をパワーレベリングして、最前線に強制連行とか、普通に裏切り案件だと思う。
ここまで耐えた俺って偉い!
「勇者様! お答えください!」
そんな事を考えていたら、振り返りもしない俺にカルラの怒りのボルテージが上がっていく。
うーん、振り返りたくないけど、振り返るか……。まだまだ魔王を見つめていたかったのに。
魔王から視線をずらす事を名残惜しみながら、しぶしぶ振り返ってみればめちゃくちゃ怒っているカルラの顔が目に入る。
お清楚な聖女がしていい顔じゃないって……。
「俺、好きになった人とは戦いたくない」
「貴方は、勇者なのですよ!この世界を救うべく呼ばれた!」
「……仕方ないだろ! 好きになっちゃったんだから!」
芽生えた恋は止まらない。戦うなんてできるはずもなかった。
「使い捨ての駒の分際で……!」
あ、それ本性?
俺を睨み付けるカルラに、今まで取り繕っていた聖女としての仮面が剥がれているなぁ……と、他人事のように思う。
あの憎悪を向けられてるのは、俺なんだけど。
「そんなにも魔王が恋しいと言うのなら私自ら引導を渡してあげましょう!」
カルラが聖剣の対だと言われていた聖杖を掲げる。その先端の宝玉が光ると同時に俺の腰に着けてた聖剣も同じように光り出す。
あ、やべぇ雰囲気。
「弾け飛びなさい!」
聖剣に宿った魔力が光と共に高まり、外して投げるというか行動を行う以前に臨界点を迎える。
俺は、どうせ使い捨ての駒だったかもしれないけど、魔王だけは巻き込みたくなかったなぁ……。
走馬灯のように魔王への申し訳なさが溢れた。
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