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書籍化記念SS
側妃の誕生日2《R18》
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シュロムと過ごしていたら子供達が起きてきて二人っきりの時間が終わる。
子供達を連れて、庭でおやつにすることになったのだが……。
「おいしー!」
「うまーい!」
起きたばかりにも関わらず、食欲旺盛なアグノスとティグレは、本日三種類目のケーキを幸せそうに食べていた。
その後、すぐに走り回るのだから子供の体力とは恐ろしい。
それについていけるイデアルもまだまだ若いと思うのは、僕とシュロムである。
二人でなかなか減らないフルーツタルトを突っつきながら遊び回る子供達を眺める。
「幸せだね」
「あぁ……」
子供達が何も気にすることなく遊び回れる今を幸せと呼ぶ以外になにがあるだろう。
そんなゆったりとした時間に心が安らぐのを感じながら、お昼寝パワーで元気一杯な子供達が笑い声をあげているのをただただ眺めていた。
やがて子供達が遊びつかれた頃には、日も暮れ、僕とシュロムの前に置かれたお皿も空になる。
まあ、これから夕食とデザートのケーキ……大本命の誕生日ケーキがあるんだけど。
「夕食の準備ができました」
そう僕らへ伝えに来たのは、マリーで……案内された食堂には、朝や昼とは比べ物にならないご馳走と二段重ねの生クリームケーキがテーブルに並んでいた。
朝から思っていたけど厨房の皆も気合いが入りすぎなんじゃないかな……?
残りは、賄いになっていると聞くけど……それでも食べきれるか不安になる量である。
シュロムの方針で、基本的には王族としては、質素な食事が多いんだけど……僕相手にここまでしなくていいのに……と思わなくもない。
祝ってくれてるのは、ありがたいけど皆気合いが入りすぎているのである。
それでも僕には美味しく食べる選択肢しかないんだけどね。
……ケーキの量もこれが最後だし、目をつぶることにする。
「このケーキもうまーい!」
「ねー!」
ケーキにご機嫌なのは、ティグレとアグノスだ。
シュロムは、さりげなく小さく切ってもらっていたし、イデアルもおかわりはせずすでに紅茶を飲んでいる。
僕はというと……。
「とうさま! もっとたべて! たべて!」
「そうだぞ! 誕生日なんだから一杯食べないと!」
そんな事をキラキラした目をした二人から言われたら食べる他ない。
少し胃が重いが美味しいのは、間違いない。
ただ、それ以上にカロリーや糖分が気になる。
今日だけとは、言ってもさすがに食べすぎなんだよね……。
それでもなんとかアグノス達の期待に答えて、二切れのケーキを平らげた僕は偉いと思う。
うん、本当に偉い。
自分を誉めつつ、食後の団欒を終え、お風呂に向かう子供達を見送り、帰ってきた子供達と入れ替わるように僕が。そして、僕と変わるようにシュロムがお風呂へ入る。
これで後は寝るだけ……となったのだが。
「二人は、私が寝かしつけますのでディロス様と父上はゆっくりとお過ごしください」
お昼寝の時間に続き、再びイデアルの気遣いが発揮された。
「えー! なんでですか兄上! 一緒に寝たいのに!」
「ディロス様は、父上の伴侶だからね。今日は、私達とも過ごしてくれたけど……もう少し二人で過ごさせてあげたいと思ったんだ」
抗議の声をあげるティグレだったが、イデアルの言葉を聞いて、目を瞬かせる。
「あっ! ロンがたまにいう夫夫の時間が大事ってやつだな!」
「……そうだね」
閃いたって顔をするティグレにイデアルは苦笑し、僕はロンに叫びたくなった。
子供に余計なことを教えなくていい!
そんな僕と同じように頭が痛そうなシュロムと視線が交わり……二人揃って子供達に気づかれないようにため息を吐いた。
「とうさまたち、よふかし?」
イデアルとティグレのやり取りを眺めていたアグノスが首を傾げ、イデアルが頷く。
「そうだね。だから、私達は私達で寝よう?」
「はーい」
アグノスは、アグノスで素直だ。もうちょっとぐずるかもと思っていたんだけど……子供の成長って早い……。
「それじゃあ、ディロス様と父上におやすみなさいしよう」
「うん!」
「わかりました!」
納得したらしい弟二人にイデアルがおやすみの挨拶を促すと二人は、元気良く頷く。
「おやすみなさいとうさま! ちちうえ!」
「おやすみなさいディロス! 父上!」
僕に向かって笑みを浮かべ、両手を広げてきたアグノスを抱き締める。
「うん、おやすみ。アグノス」
隣では、ティグレがシュロムに抱き締められていて、それが終わると同時に子供達を入れ換えて、改めてハグをする。
「イデアルもおやすみなさい」
「はい。ディロス様、父上、おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」
シュロムがイデアルの頭を撫でるとイデアルは、笑みを浮かべる。
そして、ご機嫌な弟二人と手をついないで談話室を後にした。
……さて、どうしようかな。
「……シュロム」
「どうした?」
談話室に残され、しばらく沈黙した後に呼びかければシュロムは、楽しそうに笑う。
「……お昼の、約束……前倒しにしてもらってもいい……?」
「もちろん」
僕のお願い……おねだり?に、シュロムが頷く。
自分で言い出したけど……ちょっと恥ずかしい。
「……準備、してくるね。……シュロムの寝室で、待ってて……」
「わかった」
恥ずかしさに俯く僕の頭にシュロムの唇が落ちた感覚がする。
ああ、顔が熱い……!
シュロムがどんな顔をしているのか気になるけど、顔をあげるのが恥ずかしくて、踵を返して、脱衣場へと向かう。
脱衣場の扉を閉めて、隣接するトイレを覗けば、普段は置いてない洗浄道具が一式。
ああ、何もかも行動が読まれている。これだから仕事のできる男は、嫌なのだ。
子供達とのやり取りの間に消えていたロンを思い返しながら、ガウンを脱いで、準備を済ませる。
一通り洗浄を終え、改めてガウンを纏い……向かうはシュロムの寝室。
「……おまたせ」
従者に開けられた扉を潜れば、シュロムは余裕の表情でベッドに座っている。
歳を重ね、若々しくも一層貫禄の出てきたシュロムは、ものすごくかっこいい。
男として羨ましくなるかっこよさだ。
僕だってああなりたいけど……たぶん無理な気がする。
「どうした? おいで」
入り口でシュロムを見つめながら立ちつくす僕にシュロムが笑みを浮かべて両手を広げる。
まるで子供のように扱われているようにも思えるが……その笑みは、子供達に向けるものとは比べ物にならないくらい甘い笑みだ。
「っ……!」
例えるなら蕩けそうな笑み? ううん……今日食べたケーキ全て合わせても比べられないほどに甘い笑みに見えた。
そんなとびっきりの微笑みに誘われるように足を進め、その腕の中に収まる。
シュロムの膝に座り、見惚れていたのを隠すように顔を首もとに埋めたら楽しそうに笑う声が響いた。
「くくくっ……顔は見せてくれないのか?」
優しく抱き止める手が僕の背撫で、甘い声が僕の耳を擽る。
それだけで背筋に甘い痺れが沸き起こるのだから堪ったものではない。
僕が望んだこととはいえ……シュロムから溢れでる色香は、僕にとって劇薬なのだ。
「……」
しばらくシュロムの肩に顔を埋めていたけど、それだけでは物足りなくなっておずおずと顔を上げる。
「ようやく顔を上げてくれたか?」
柔らかく微笑むシュロムの深紅の瞳が僕をまっすぐ見つめ、僕の背を撫でていた手が僕の頭を撫でた。
「可愛い表情をしている。俺を求める可愛い伴侶の顔だ」
そんな事を言って笑ったシュロムは、鼻先がくっつくほど顔を近づけてきて、僕の瞳を覗き込んできた。
その距離があまりにも近くて……思わず目をつぶれば、唇が重なる感覚がする。
「んっ……ぁ……っ、ぁ……」
最初から舌を絡めるような口づけに、僕は翻弄されるままに受け入れる。
深い口づけに酔い、首筋を撫でられる感覚に背筋が泡立ち、体が高ぶっていくのがわかる。
「ぁ……は、っ……っ……」
口づけが終わる頃には、興奮から陰茎がガウンを押し上げていた。
「お前は、愛らしいな」
「んっ……!」
耳元でそう囁かれるだけで体の奥が疼く。
何度も愛され、快楽を知った体は、その気になると些細な事で反応した。
「ぁ……シュロム……まって……ぁあ……」
息を整えている間にガウンを脱がされ、生まれたままの姿を晒す。
下着は、脱衣所で一度脱いだ時からつけてはいない。
子供達に合うわけでもないし、こうやってすぐ脱がされるからだ。
「蜜が溢れている……期待しているんだな」
「だ、だって……愛して、ほしいから……」
意地悪く囁くシュロムにそう返せば、素直に返事が返ってくると思ってなかったらしいシュロムが驚いたように瞬いてる。
でも、それも一瞬で……シュロムは、謝るように僕の額にキスを落とした。
「そうか……俺もすぐに愛してやりたいところだ」
そう言って、シュロムは僕をベッドへと押し倒すと自分も身に纏っていたガウンと下着を脱ぎ捨てる。
一糸纏わぬシュロムの体は、相変わらず鍛えられた肉体美が目を引き、僕と同じように興奮した陰茎がそそり勃っていた。
それを見るだけで、僕の体を渦巻く熱も高ぶる。
僕のような貧相な体の人間にシュロムが興奮してくれるのが嬉しいから。
シュロムを招くように両手を天に向けて広げる。
「シュロム……」
「魅力的なお誘いだ」
名前を呼んだ僕にシュロムは、どこか肉食獣のような笑みを浮かべて僕へと覆い被さってきた。
「っ……ん……」
ベッドの上でシュロムの背中に腕を回して唇を重ね、僕の体をシュロムの手が撫でていく。
「ふっ……っ、ん……ぁ……」
少し乾いた、硬い指先が肌を撫でる感覚がこそばゆい。
だけど、その感覚が快楽だと学んだ体は、微かな快楽を拾い上げ、快楽に悶える。
「ぁ……ぁ……シュロム……シュロム……」
口づけを終え、僕の体に触れるだけのキスを繰り返すシュロムの名前を呼ぶ。
もどかしい快楽。もっと愛されたいという気持ちが強くなるのに焦らされるように愛撫が続く。
太ももを擦り合わせて快楽を得たいのに、シュロムの膝が太ももの間に入っているから閉じることができない。
「シュロム……シュロム……意地悪しないで……っ」
「しているつもりはないんだがな。丁寧に愛しているだけだ」
堪えきれずに懇願した僕にシュロムが苦笑する。
それは、わかっている。わかっているけど、もう駄目なのだ。
「まあ、泣かせるつもりはない。少し待て」
僕の頭を撫でたシュロムがベッドサイドに置いてあった香油を手に取る。
蓋を開け、傾くと共にシュロムの手を濡らしていく香油は、ランプの明かりに照らされて艶めかしく輝く。
「力を抜いてろよ」
「ん……っ、あぁあっ……!」
僕の両足を開いたシュロムの指が後孔へと触れ、沈む。
待ち望んだ快楽に、体は震え、淡い絶頂に至った。
「ぁ……あぁっ……ぁ、あ……!」
後孔をほぐされる快楽にシーツを掻き、身悶え、嬌声を溢す。
指が一つ。二つ。三つ。じっくりと、それでも性急に広げられたそこは、僕の意思とは別に卑猥な水音を立て、シュロムを受け入れるのを待つように蠢くのがわかった。
「ディロス」
僕の中から指が抜かれ、シュロムが僕を呼ぶ。
乾いている方の手が僕の腰を掴み、解れた後孔に熱い塊が押しつけられた。
「シュロム……っ、ああっ……!」
僕が名前を呼んだ事を承諾と受け取ったシュロムが僕の中に入ってくる。
「あっ、あ……! あぁあっ……!」
僕の気持ちいいところを全て埋めつくす肉塊に、声を上げ、快楽に浸り、溺れる。
「しゅろ、しゅろむっ……! しゅろむっ……!」
「ディロス……!」
互いに求め合い、溺れ……愛される快楽に酔う。
正常位でイかされ、体勢を変えて対面座位で達し、休憩を挟んで後背位で果てる。
何度も絶頂した僕に対して、シュロムは二度ほどしか果てていないのだからすごい。
「大丈夫か?」
力尽きて横たわる僕にシュロムが気遣うように声をかけてくる。
「う、ん……」
少し声が枯れている気もするが許容範囲だろう。
「そろそろ湯でも浴びようか」
そう言って、僕の頬を撫でるシュロムに少し考える。
普段であれば、このくらいで終わるけど……もう少し欲張りたいと。
「……もうちょっと、あいして……ほしいかな……」
自ら希望を告げるのは恥ずかしいけど、誕生日ってワガママになってもいいと思ったんだ。恥ずかしいけど。
「……お前の望むままに」
僕のおねだりに目を瞬かせたシュロムは、色気たっぷりに笑みを浮かべ、もう一度僕へと覆い被さってくる。
もう少しだけ、ううん……まだまだ僕が主役の日を終わらせたくなかった。
END
子供達を連れて、庭でおやつにすることになったのだが……。
「おいしー!」
「うまーい!」
起きたばかりにも関わらず、食欲旺盛なアグノスとティグレは、本日三種類目のケーキを幸せそうに食べていた。
その後、すぐに走り回るのだから子供の体力とは恐ろしい。
それについていけるイデアルもまだまだ若いと思うのは、僕とシュロムである。
二人でなかなか減らないフルーツタルトを突っつきながら遊び回る子供達を眺める。
「幸せだね」
「あぁ……」
子供達が何も気にすることなく遊び回れる今を幸せと呼ぶ以外になにがあるだろう。
そんなゆったりとした時間に心が安らぐのを感じながら、お昼寝パワーで元気一杯な子供達が笑い声をあげているのをただただ眺めていた。
やがて子供達が遊びつかれた頃には、日も暮れ、僕とシュロムの前に置かれたお皿も空になる。
まあ、これから夕食とデザートのケーキ……大本命の誕生日ケーキがあるんだけど。
「夕食の準備ができました」
そう僕らへ伝えに来たのは、マリーで……案内された食堂には、朝や昼とは比べ物にならないご馳走と二段重ねの生クリームケーキがテーブルに並んでいた。
朝から思っていたけど厨房の皆も気合いが入りすぎなんじゃないかな……?
残りは、賄いになっていると聞くけど……それでも食べきれるか不安になる量である。
シュロムの方針で、基本的には王族としては、質素な食事が多いんだけど……僕相手にここまでしなくていいのに……と思わなくもない。
祝ってくれてるのは、ありがたいけど皆気合いが入りすぎているのである。
それでも僕には美味しく食べる選択肢しかないんだけどね。
……ケーキの量もこれが最後だし、目をつぶることにする。
「このケーキもうまーい!」
「ねー!」
ケーキにご機嫌なのは、ティグレとアグノスだ。
シュロムは、さりげなく小さく切ってもらっていたし、イデアルもおかわりはせずすでに紅茶を飲んでいる。
僕はというと……。
「とうさま! もっとたべて! たべて!」
「そうだぞ! 誕生日なんだから一杯食べないと!」
そんな事をキラキラした目をした二人から言われたら食べる他ない。
少し胃が重いが美味しいのは、間違いない。
ただ、それ以上にカロリーや糖分が気になる。
今日だけとは、言ってもさすがに食べすぎなんだよね……。
それでもなんとかアグノス達の期待に答えて、二切れのケーキを平らげた僕は偉いと思う。
うん、本当に偉い。
自分を誉めつつ、食後の団欒を終え、お風呂に向かう子供達を見送り、帰ってきた子供達と入れ替わるように僕が。そして、僕と変わるようにシュロムがお風呂へ入る。
これで後は寝るだけ……となったのだが。
「二人は、私が寝かしつけますのでディロス様と父上はゆっくりとお過ごしください」
お昼寝の時間に続き、再びイデアルの気遣いが発揮された。
「えー! なんでですか兄上! 一緒に寝たいのに!」
「ディロス様は、父上の伴侶だからね。今日は、私達とも過ごしてくれたけど……もう少し二人で過ごさせてあげたいと思ったんだ」
抗議の声をあげるティグレだったが、イデアルの言葉を聞いて、目を瞬かせる。
「あっ! ロンがたまにいう夫夫の時間が大事ってやつだな!」
「……そうだね」
閃いたって顔をするティグレにイデアルは苦笑し、僕はロンに叫びたくなった。
子供に余計なことを教えなくていい!
そんな僕と同じように頭が痛そうなシュロムと視線が交わり……二人揃って子供達に気づかれないようにため息を吐いた。
「とうさまたち、よふかし?」
イデアルとティグレのやり取りを眺めていたアグノスが首を傾げ、イデアルが頷く。
「そうだね。だから、私達は私達で寝よう?」
「はーい」
アグノスは、アグノスで素直だ。もうちょっとぐずるかもと思っていたんだけど……子供の成長って早い……。
「それじゃあ、ディロス様と父上におやすみなさいしよう」
「うん!」
「わかりました!」
納得したらしい弟二人にイデアルがおやすみの挨拶を促すと二人は、元気良く頷く。
「おやすみなさいとうさま! ちちうえ!」
「おやすみなさいディロス! 父上!」
僕に向かって笑みを浮かべ、両手を広げてきたアグノスを抱き締める。
「うん、おやすみ。アグノス」
隣では、ティグレがシュロムに抱き締められていて、それが終わると同時に子供達を入れ換えて、改めてハグをする。
「イデアルもおやすみなさい」
「はい。ディロス様、父上、おやすみなさい」
「ああ、おやすみ」
シュロムがイデアルの頭を撫でるとイデアルは、笑みを浮かべる。
そして、ご機嫌な弟二人と手をついないで談話室を後にした。
……さて、どうしようかな。
「……シュロム」
「どうした?」
談話室に残され、しばらく沈黙した後に呼びかければシュロムは、楽しそうに笑う。
「……お昼の、約束……前倒しにしてもらってもいい……?」
「もちろん」
僕のお願い……おねだり?に、シュロムが頷く。
自分で言い出したけど……ちょっと恥ずかしい。
「……準備、してくるね。……シュロムの寝室で、待ってて……」
「わかった」
恥ずかしさに俯く僕の頭にシュロムの唇が落ちた感覚がする。
ああ、顔が熱い……!
シュロムがどんな顔をしているのか気になるけど、顔をあげるのが恥ずかしくて、踵を返して、脱衣場へと向かう。
脱衣場の扉を閉めて、隣接するトイレを覗けば、普段は置いてない洗浄道具が一式。
ああ、何もかも行動が読まれている。これだから仕事のできる男は、嫌なのだ。
子供達とのやり取りの間に消えていたロンを思い返しながら、ガウンを脱いで、準備を済ませる。
一通り洗浄を終え、改めてガウンを纏い……向かうはシュロムの寝室。
「……おまたせ」
従者に開けられた扉を潜れば、シュロムは余裕の表情でベッドに座っている。
歳を重ね、若々しくも一層貫禄の出てきたシュロムは、ものすごくかっこいい。
男として羨ましくなるかっこよさだ。
僕だってああなりたいけど……たぶん無理な気がする。
「どうした? おいで」
入り口でシュロムを見つめながら立ちつくす僕にシュロムが笑みを浮かべて両手を広げる。
まるで子供のように扱われているようにも思えるが……その笑みは、子供達に向けるものとは比べ物にならないくらい甘い笑みだ。
「っ……!」
例えるなら蕩けそうな笑み? ううん……今日食べたケーキ全て合わせても比べられないほどに甘い笑みに見えた。
そんなとびっきりの微笑みに誘われるように足を進め、その腕の中に収まる。
シュロムの膝に座り、見惚れていたのを隠すように顔を首もとに埋めたら楽しそうに笑う声が響いた。
「くくくっ……顔は見せてくれないのか?」
優しく抱き止める手が僕の背撫で、甘い声が僕の耳を擽る。
それだけで背筋に甘い痺れが沸き起こるのだから堪ったものではない。
僕が望んだこととはいえ……シュロムから溢れでる色香は、僕にとって劇薬なのだ。
「……」
しばらくシュロムの肩に顔を埋めていたけど、それだけでは物足りなくなっておずおずと顔を上げる。
「ようやく顔を上げてくれたか?」
柔らかく微笑むシュロムの深紅の瞳が僕をまっすぐ見つめ、僕の背を撫でていた手が僕の頭を撫でた。
「可愛い表情をしている。俺を求める可愛い伴侶の顔だ」
そんな事を言って笑ったシュロムは、鼻先がくっつくほど顔を近づけてきて、僕の瞳を覗き込んできた。
その距離があまりにも近くて……思わず目をつぶれば、唇が重なる感覚がする。
「んっ……ぁ……っ、ぁ……」
最初から舌を絡めるような口づけに、僕は翻弄されるままに受け入れる。
深い口づけに酔い、首筋を撫でられる感覚に背筋が泡立ち、体が高ぶっていくのがわかる。
「ぁ……は、っ……っ……」
口づけが終わる頃には、興奮から陰茎がガウンを押し上げていた。
「お前は、愛らしいな」
「んっ……!」
耳元でそう囁かれるだけで体の奥が疼く。
何度も愛され、快楽を知った体は、その気になると些細な事で反応した。
「ぁ……シュロム……まって……ぁあ……」
息を整えている間にガウンを脱がされ、生まれたままの姿を晒す。
下着は、脱衣所で一度脱いだ時からつけてはいない。
子供達に合うわけでもないし、こうやってすぐ脱がされるからだ。
「蜜が溢れている……期待しているんだな」
「だ、だって……愛して、ほしいから……」
意地悪く囁くシュロムにそう返せば、素直に返事が返ってくると思ってなかったらしいシュロムが驚いたように瞬いてる。
でも、それも一瞬で……シュロムは、謝るように僕の額にキスを落とした。
「そうか……俺もすぐに愛してやりたいところだ」
そう言って、シュロムは僕をベッドへと押し倒すと自分も身に纏っていたガウンと下着を脱ぎ捨てる。
一糸纏わぬシュロムの体は、相変わらず鍛えられた肉体美が目を引き、僕と同じように興奮した陰茎がそそり勃っていた。
それを見るだけで、僕の体を渦巻く熱も高ぶる。
僕のような貧相な体の人間にシュロムが興奮してくれるのが嬉しいから。
シュロムを招くように両手を天に向けて広げる。
「シュロム……」
「魅力的なお誘いだ」
名前を呼んだ僕にシュロムは、どこか肉食獣のような笑みを浮かべて僕へと覆い被さってきた。
「っ……ん……」
ベッドの上でシュロムの背中に腕を回して唇を重ね、僕の体をシュロムの手が撫でていく。
「ふっ……っ、ん……ぁ……」
少し乾いた、硬い指先が肌を撫でる感覚がこそばゆい。
だけど、その感覚が快楽だと学んだ体は、微かな快楽を拾い上げ、快楽に悶える。
「ぁ……ぁ……シュロム……シュロム……」
口づけを終え、僕の体に触れるだけのキスを繰り返すシュロムの名前を呼ぶ。
もどかしい快楽。もっと愛されたいという気持ちが強くなるのに焦らされるように愛撫が続く。
太ももを擦り合わせて快楽を得たいのに、シュロムの膝が太ももの間に入っているから閉じることができない。
「シュロム……シュロム……意地悪しないで……っ」
「しているつもりはないんだがな。丁寧に愛しているだけだ」
堪えきれずに懇願した僕にシュロムが苦笑する。
それは、わかっている。わかっているけど、もう駄目なのだ。
「まあ、泣かせるつもりはない。少し待て」
僕の頭を撫でたシュロムがベッドサイドに置いてあった香油を手に取る。
蓋を開け、傾くと共にシュロムの手を濡らしていく香油は、ランプの明かりに照らされて艶めかしく輝く。
「力を抜いてろよ」
「ん……っ、あぁあっ……!」
僕の両足を開いたシュロムの指が後孔へと触れ、沈む。
待ち望んだ快楽に、体は震え、淡い絶頂に至った。
「ぁ……あぁっ……ぁ、あ……!」
後孔をほぐされる快楽にシーツを掻き、身悶え、嬌声を溢す。
指が一つ。二つ。三つ。じっくりと、それでも性急に広げられたそこは、僕の意思とは別に卑猥な水音を立て、シュロムを受け入れるのを待つように蠢くのがわかった。
「ディロス」
僕の中から指が抜かれ、シュロムが僕を呼ぶ。
乾いている方の手が僕の腰を掴み、解れた後孔に熱い塊が押しつけられた。
「シュロム……っ、ああっ……!」
僕が名前を呼んだ事を承諾と受け取ったシュロムが僕の中に入ってくる。
「あっ、あ……! あぁあっ……!」
僕の気持ちいいところを全て埋めつくす肉塊に、声を上げ、快楽に浸り、溺れる。
「しゅろ、しゅろむっ……! しゅろむっ……!」
「ディロス……!」
互いに求め合い、溺れ……愛される快楽に酔う。
正常位でイかされ、体勢を変えて対面座位で達し、休憩を挟んで後背位で果てる。
何度も絶頂した僕に対して、シュロムは二度ほどしか果てていないのだからすごい。
「大丈夫か?」
力尽きて横たわる僕にシュロムが気遣うように声をかけてくる。
「う、ん……」
少し声が枯れている気もするが許容範囲だろう。
「そろそろ湯でも浴びようか」
そう言って、僕の頬を撫でるシュロムに少し考える。
普段であれば、このくらいで終わるけど……もう少し欲張りたいと。
「……もうちょっと、あいして……ほしいかな……」
自ら希望を告げるのは恥ずかしいけど、誕生日ってワガママになってもいいと思ったんだ。恥ずかしいけど。
「……お前の望むままに」
僕のおねだりに目を瞬かせたシュロムは、色気たっぷりに笑みを浮かべ、もう一度僕へと覆い被さってくる。
もう少しだけ、ううん……まだまだ僕が主役の日を終わらせたくなかった。
END
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