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第二部:王様に嫁入りした側妃ですが子供達の未来に悩んでいます
58:睡魔に阻まれる逢瀬
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「……お前は、いつも俺のほしい言葉をくれるな」
穏やかに笑うシュロムだけど、その深紅の瞳の奥には王としての苦労が見える気がした。
「ほんの少しでも君を労れているのなら嬉しいよ」
「少しなんかじゃない。凄く力になる。お前も子供達もいてくれるからな」
絡めた指をシュロムが握り、指先が僕の頬に当たる。
「これからも苦労させると思うが、できるだけお前達二人の時間も取れるようにしよう」
「ありがとう。でも、皆で過ごす時間はできるだけ減らしたくないかな。それに、シュロムとの時間も……」
わがままかもしれないけど、アグノスと二人で過ごす時間も、五人で過ごす時間も大切なのだ。もちろん、シュロムとの時間も。
「善処しよう」
なんて、シュロムが笑うけど、その言葉は本当に善処しようとしてくれている言葉だ。前世の知識とは違う。
「うん……」
優しいシュロムの手、言葉、笑み。それらに安堵して、僕も笑みが溢れる。
そして、安らいだ心は、疲れた体に睡魔をもたらした。
「ごめん……せっかく、来てくれたのに……眠くなってきちゃった……」
もう少し喋りたいって思うのに……言うことのきかない体にもどかしくなる。
「疲れたのだろう。ゆっくり休みといい」
僕の手を握っていたシュロムの手がするりと抜けていく。
だけど……それが寂しくて、思わず指先を掴んでしまった。
「ディロス……?」
「ごめん、シュロム……甘えてるのはわかるんだけど……眠るまで側に居てもらっちゃ駄目かな……?」
まるで子供のようなお願いをしている自覚はあるのだけど、眠るまで側に居てほしい。
今日頑張ったご褒美……っていうのも恥ずかしいけど、シュロムに甘えたい気持ちが寂しさと共に沸き上がっていた。
「……いいぞ」
「ありがとう……」
シュロムの手が僕の頭を撫でる。子供にするみたいに、優しく甘やかな手つきで。
その心地よさに睡魔は大きくなり、瞼も重くなっていく。
「おやすみディロス」
優しいシュロムの囁きと共にこめかみに唇が触れたのを感じながら僕の意識は眠りへと落ちていった。
穏やかに笑うシュロムだけど、その深紅の瞳の奥には王としての苦労が見える気がした。
「ほんの少しでも君を労れているのなら嬉しいよ」
「少しなんかじゃない。凄く力になる。お前も子供達もいてくれるからな」
絡めた指をシュロムが握り、指先が僕の頬に当たる。
「これからも苦労させると思うが、できるだけお前達二人の時間も取れるようにしよう」
「ありがとう。でも、皆で過ごす時間はできるだけ減らしたくないかな。それに、シュロムとの時間も……」
わがままかもしれないけど、アグノスと二人で過ごす時間も、五人で過ごす時間も大切なのだ。もちろん、シュロムとの時間も。
「善処しよう」
なんて、シュロムが笑うけど、その言葉は本当に善処しようとしてくれている言葉だ。前世の知識とは違う。
「うん……」
優しいシュロムの手、言葉、笑み。それらに安堵して、僕も笑みが溢れる。
そして、安らいだ心は、疲れた体に睡魔をもたらした。
「ごめん……せっかく、来てくれたのに……眠くなってきちゃった……」
もう少し喋りたいって思うのに……言うことのきかない体にもどかしくなる。
「疲れたのだろう。ゆっくり休みといい」
僕の手を握っていたシュロムの手がするりと抜けていく。
だけど……それが寂しくて、思わず指先を掴んでしまった。
「ディロス……?」
「ごめん、シュロム……甘えてるのはわかるんだけど……眠るまで側に居てもらっちゃ駄目かな……?」
まるで子供のようなお願いをしている自覚はあるのだけど、眠るまで側に居てほしい。
今日頑張ったご褒美……っていうのも恥ずかしいけど、シュロムに甘えたい気持ちが寂しさと共に沸き上がっていた。
「……いいぞ」
「ありがとう……」
シュロムの手が僕の頭を撫でる。子供にするみたいに、優しく甘やかな手つきで。
その心地よさに睡魔は大きくなり、瞼も重くなっていく。
「おやすみディロス」
優しいシュロムの囁きと共にこめかみに唇が触れたのを感じながら僕の意識は眠りへと落ちていった。
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