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第二部:王様に嫁入りした側妃ですが子供達の未来に悩んでいます

50:第二王子の将来

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 ティグレが軍に入るのは、正規の歴史の流れで……僕もそうなるとは知っていた。

 知っていたけど……物語の主人公としてより、自分が慈しむ子供としての側面が大きくなったからか、ティグレが自ら軍に入りたいと言葉にした事に衝撃を受けてしまった。

「軍に? ティグレが?」
「はい!」

 ティグレの言葉にイデアルが首を傾げ、ティグレは肯定するように頷く。

「王族が軍に入った前例はなくもないけど……本気かい?」
「もちろんです兄上! だって、軍人になったら兄上や父上達を守れるんですよ! 俺、皆を守れるようになりたいです!」

 キラキラと赤い目を輝かせて意気込むティグレにイデアルが困ったように僕を見上げた。

 イデアルの言うとおり、王族が軍に入った前例は確かにある。

 だが、ほとんどの王弟は、公爵となり、王直轄領の一つを与えられ公爵となり、兄王の退位と新王の即位と共に侯爵になるのが常だった。

 だから、イデアルとしては元気なティグレであってもそうなるのだと考えていたのかも知れない。

 僕も、今となっては同じ気持ちだけど……ティグレはティグレだ。

 きっと、僕達が止めても止まらないだろう。

「ティグレ、軍人っていうのは大変な仕事だよ? 僕達を守ってくれている護衛騎士の皆と同じくらい強くなくちゃいけないし、いつか誰かの命を奪う事だってあるかもしれない」

 腕の中にいるアグノスを抱き締めながら、ティグレへ問う。

 脳裏に浮かぶのは、あの悪夢。

 剣を振り下ろしたティグレと……宙に飛んだアグノスの首。

 リスティヒが亡き今……アグノスが内乱の旗頭にされる事はないと思いたい。

 だけど、軍人のティグレと結びつくのはその光景だった。
 
「……それでも、軍人になりたい?」
「なりたい。それで、皆を守れるなら」

 僕の言葉にティグレが頷く。

 まだ、人の命を自らの手で奪うと言うことの重さを理解できていないようにも思う。

 だけど……真っ赤な瞳に迷いはなく、真剣にただ真っ直ぐと僕を見つめていた。

「そう……じゃあ、シュロムに相談してごらん」
「わかった!」

 元気に頷いたティグレは、いつものティグレに戻っている。

 だけど、さっきの眼差しを思い出し、彼は幼くとも物語の主人公なのだと改めて実感したのだった。
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