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第二部:王様に嫁入りした側妃ですが子供達の未来に悩んでいます
47:お茶会終了
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絵を見た後も和やかに過ごし、予定していた時間を向かえる。
「イデアル様! ディロス様! またお会いできる日をお待ちしておりますわ!」
見送りの際、マリカ嬢は元気な笑みを浮かべて、ノウリッジ様達と馬車で帰っていった。
馬車が離宮の前から過ぎ去り、ホッと肩の力を抜く。
マリカ嬢はいい子だったし、ノウリッジ様達とも和やかに過ごせたと思うが、やはり緊張は続いていたのだ。
「お疲れ様ですディロス様」
「イデアルもね。……マリカ嬢、どうだった?」
僕の隣にいたイデアルが労りの言葉をかけてくれたので僕も言葉を返しつつ、マリカ嬢の印象を尋ねる。
「そうですね……一つしか変わらないご令嬢に言うのは、失礼かと思いますが……とてもいい子だと思います」
僕を見上げるイデアルの表情は柔らかく、マリカ嬢の印象は、悪くはなかったように思える。
「ご自身は、動く事が好きだと言っていましたが、私の趣味を否定する事なく褒めてくれた事も嬉しかったです」
絵を褒めてもらえた事を思い出したのか、照れ臭そうに笑うイデアルに年相応の雰囲気が滲む。
「騎士になりたいと言われた時は、驚きましたし……彼女の夢を正妃として奪ってしまうのではと思ってしまいました」
「……」
イデアルは、やはりというかマリカ嬢の夢を聞いて、それを気にしているようだった。
「でも、二人で散策していた時、言ってくれたんです。まだ、妃になる覚悟はできていないけど、妃になるとしても、騎士になるとしても私に恥じない人間になれるよう頑張る。と……」
大人の知らないうちに、二人は二人で進展があったという事に驚く。
「とても素直な方です。だけど、強い方だと思います。彼女がどちらを選ぶにしても……私は彼女の意志を尊重したい。彼女になら騎士としてこの身を任せる事もできるし、妃として隣で支えてもらうのも任せられると思いました」
そう言って笑うイデアルの言葉に、雰囲気に……恋愛感情らしいものは浮かんでいない。
だけど、あの短時間でマリカ嬢はイデアルの信頼を射止めたらしい。
「そう……僕は、二人の関係が王と騎士でも、王と妃としてでもいい関係が続くように祈っているよ」
「はい。私も、彼女の思いに恥じぬ王になるべく頑張ります!」
僕の言葉にイデアルの顔にやる気が満ちる。今でもすごく頑張っているのに……これ以上頑張ろうと思える気力が凄い。
「応援はするけど……無理は駄目だよ。休める時は休んでくれないと……僕達も寂しいから、ね?」
頑張りすぎて休むのを忘れてしまいそうなイデアルにそう問いかければ、イデアルは目をきょとんと見開きながら僕を見つめる。
「……ふふ、そうですね。ティグレ達やディロス様を寂しがらせないように休みながら頑張ります」
しばらくすると恥ずかしそうに笑い、新たに決意を立てるイデアル。
顔合わせも兼ねたお茶会だったけど……イデアルにとっては、次期王として立つ者としての覚悟がより定まった形になったようだ。
学友もとは違うけど……互いに切磋琢磨できる相手が増えたというのであれば、いい結果に終わったと思う。
さすがに、こう落ち着いたのは誰も予想できなかったと思うけどね……。
「イデアルは、まだやる事あったりする?」
「いえ、片づけは皆がしてくれる手筈になってます」
立ち話も一段落ついたのでイデアルに尋ねてみれば、後は侍従や侍女で片づけてくれるらしい。
「それじゃあ、僕らも帰ろうか。ティグレとアグノスがお土産話待ってるだろうから」
「そうですね」
僕の言葉にイデアルが頷く。
「それでは、お手をどうぞディロス様」
「ふふっ……よろしくイデアル」
今日の復習のようにイデアルが僕へと手を差し出し、僕は笑いながらその手に手を重ねた。
「イデアル様! ディロス様! またお会いできる日をお待ちしておりますわ!」
見送りの際、マリカ嬢は元気な笑みを浮かべて、ノウリッジ様達と馬車で帰っていった。
馬車が離宮の前から過ぎ去り、ホッと肩の力を抜く。
マリカ嬢はいい子だったし、ノウリッジ様達とも和やかに過ごせたと思うが、やはり緊張は続いていたのだ。
「お疲れ様ですディロス様」
「イデアルもね。……マリカ嬢、どうだった?」
僕の隣にいたイデアルが労りの言葉をかけてくれたので僕も言葉を返しつつ、マリカ嬢の印象を尋ねる。
「そうですね……一つしか変わらないご令嬢に言うのは、失礼かと思いますが……とてもいい子だと思います」
僕を見上げるイデアルの表情は柔らかく、マリカ嬢の印象は、悪くはなかったように思える。
「ご自身は、動く事が好きだと言っていましたが、私の趣味を否定する事なく褒めてくれた事も嬉しかったです」
絵を褒めてもらえた事を思い出したのか、照れ臭そうに笑うイデアルに年相応の雰囲気が滲む。
「騎士になりたいと言われた時は、驚きましたし……彼女の夢を正妃として奪ってしまうのではと思ってしまいました」
「……」
イデアルは、やはりというかマリカ嬢の夢を聞いて、それを気にしているようだった。
「でも、二人で散策していた時、言ってくれたんです。まだ、妃になる覚悟はできていないけど、妃になるとしても、騎士になるとしても私に恥じない人間になれるよう頑張る。と……」
大人の知らないうちに、二人は二人で進展があったという事に驚く。
「とても素直な方です。だけど、強い方だと思います。彼女がどちらを選ぶにしても……私は彼女の意志を尊重したい。彼女になら騎士としてこの身を任せる事もできるし、妃として隣で支えてもらうのも任せられると思いました」
そう言って笑うイデアルの言葉に、雰囲気に……恋愛感情らしいものは浮かんでいない。
だけど、あの短時間でマリカ嬢はイデアルの信頼を射止めたらしい。
「そう……僕は、二人の関係が王と騎士でも、王と妃としてでもいい関係が続くように祈っているよ」
「はい。私も、彼女の思いに恥じぬ王になるべく頑張ります!」
僕の言葉にイデアルの顔にやる気が満ちる。今でもすごく頑張っているのに……これ以上頑張ろうと思える気力が凄い。
「応援はするけど……無理は駄目だよ。休める時は休んでくれないと……僕達も寂しいから、ね?」
頑張りすぎて休むのを忘れてしまいそうなイデアルにそう問いかければ、イデアルは目をきょとんと見開きながら僕を見つめる。
「……ふふ、そうですね。ティグレ達やディロス様を寂しがらせないように休みながら頑張ります」
しばらくすると恥ずかしそうに笑い、新たに決意を立てるイデアル。
顔合わせも兼ねたお茶会だったけど……イデアルにとっては、次期王として立つ者としての覚悟がより定まった形になったようだ。
学友もとは違うけど……互いに切磋琢磨できる相手が増えたというのであれば、いい結果に終わったと思う。
さすがに、こう落ち着いたのは誰も予想できなかったと思うけどね……。
「イデアルは、まだやる事あったりする?」
「いえ、片づけは皆がしてくれる手筈になってます」
立ち話も一段落ついたのでイデアルに尋ねてみれば、後は侍従や侍女で片づけてくれるらしい。
「それじゃあ、僕らも帰ろうか。ティグレとアグノスがお土産話待ってるだろうから」
「そうですね」
僕の言葉にイデアルが頷く。
「それでは、お手をどうぞディロス様」
「ふふっ……よろしくイデアル」
今日の復習のようにイデアルが僕へと手を差し出し、僕は笑いながらその手に手を重ねた。
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