上 下
87 / 114
第二部:王様に嫁入りした側妃ですが子供達の未来に悩んでいます

44:側妃の親族

しおりを挟む
「ですが……側妃として、頑張っておられるディロス様の様子をご両親にお伝えできないのは、残念な事ですね」
「彼らも会いたがっているのを知っている身としては……非公式であるゆえに秘密裏に会っているのも悪く思うな」

 気を引き締めたところで、サージュ様とノウリッジ様がそんな事を呟く。

 今日のお茶会は、非公式のものだからおおやけには話す事はできない。

 というよりは、イデアルとマリカ嬢の顔見せという事実は記載されているが、そこに僕の名前はないのだ。

 それは、今後のお茶会や妃教育にも当てはまる。

 ゆえに、ノウリッジ様やサージュ様が僕と会っても僕の両親に現状を話す事はできないのだ。

 男といえど側妃。側妃と言えど男。他の貴族と離宮で対面するというのは、あまり外聞が良くなかった。

 それにこの国の側妃というのは、基本的に公式の場に出ないし……一度離宮に入ったらそこで一生を終えるのが常である。今の僕の待遇自体に前例がなかった。

 だが、実家の両親などとも会えないと言うのは、いささか寂しいものでもある。

 手紙のやり取りはしているが……それでも、顔を見て話したいとも思うことも一度や二度ではなかった。

「……両親は、元気でしょうか?」
「ええ、元気ですとも」

 僕の問いにノウリッジ様が頷く。

「とはいっても、私も会えたのは数ヶ月前の夜会が最後ですがね」
「ノウリッジ様は、お忙しいですから」

 シュロムと夜話す時に出てくる話題は、宰相であるノウリッジ様や護衛騎士団長のイロアス様の話が多い。後は軍部をまとめているイロアス様の弟の話とか。

 特にノウリッジ様と執務に追われている話は、いつも大変そうだ。

 シュロム以上に王宮に泊まり込んでいると言うのを聞いた時は、ちょっと心配になるほどに。父上とお歳が変わらないのだからワーカーホリックもほどほどにしてほしいなと思う。

「私は、二週間ほど前にお茶会にモデスティア前伯爵夫人であるジェナ様と現伯爵夫人のロクサーナ様、そのご息女のジュリアーナ様とお茶会をしましたわ。マリカ達孫娘やその母親達も含めましてね」

 ノウリッジ様とは対照的にサージュ様は、母上や義姉上、姪達と最近交遊があったらしい。

「そうなんですね。義姉上とはもう長らく会っておりませんし……姪もそんなに大きくなりましたか……」

 義姉上と会ったのは、バリシアが生きていた頃に参加した夜会が最後だし、姪には会ったことがない。

 姪の上にいる甥達もいるのだけど……お披露目前は領地から出てくる事も少ないからそちらも見た事はなかった。

「ジュリアーナは、マリカ様の一つ下でしたよね」
「ええ、大人しい子ですがマリカに懐いたようで……一緒に手を繋いで庭を歩く様子は愛らしかったですわ」

 その時の様子を思い出したのか、サージュ様が微笑ましそうに笑う。

 僕の知らない親族の様子を聞くのはちょっと寂しく思うけど、それでも幼い姪が無事お披露目を終えて、社交に参加するようになったのは嬉しかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

強制結婚させられた相手がすきすぎる

よる
BL
ご感想をいただけたらめちゃくちゃ喜びます! ※妊娠表現、性行為の描写を含みます。

弟が生まれて両親に売られたけど、売られた先で溺愛されました

にがり
BL
貴族の家に生まれたが、弟が生まれたことによって両親に売られた少年が、自分を溺愛している人と出会う話です

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?

悩んでいる娘を励ましたら、チアリーダーたちに愛されはじめた

上谷レイジ
恋愛
「他人は他人、自分は自分」を信条として生きている清水優汰は、幼なじみに振り回される日々を過ごしていた。 そんな時、クラスメートの頼みでチアリーディング部の高橋奈津美を励ましたことがきっかけとなり、優汰の毎日は今まで縁がなかったチアリーダーたちに愛される日々へと変わっていく。 ※執筆協力、独自設定考案など:九戸政景様  高橋奈津美のキャラクターデザイン原案:アカツキ様(twitterID:aktk511) ※小説家になろう、ノベルアップ+、ハーメルン、カクヨムでも公開しています。

もふもふ相棒と異世界で新生活!! 神の愛し子? そんなことは知りません!!

ありぽん
ファンタジー
[第3回次世代ファンタジーカップエントリー] 特別賞受賞 書籍化決定!! 応援くださった皆様、ありがとうございます!! 望月奏(中学1年生)は、ある日車に撥ねられそうになっていた子犬を庇い、命を落としてしまう。 そして気づけば奏の前には白く輝く玉がふわふわと浮いていて。光り輝く玉は何と神様。 神様によれば、今回奏が死んだのは、神様のせいだったらしく。 そこで奏は神様のお詫びとして、新しい世界で生きることに。 これは自分では規格外ではないと思っている奏が、規格外の力でもふもふ相棒と、 たくさんのもふもふ達と楽しく幸せに暮らす物語。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。