お飾り婿の嫁入り 血の繋がらない息子のために婿入り先の悪事を暴露したら、王様に溺愛されました

海野璃音

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第二部:王様に嫁入りした側妃ですが子供達の未来に悩んでいます

34:王の思い[シュロム視点]

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 疲れ果てたのか腕の中でディロスが穏やかに寝息を立てている。

 加減をしようとは、思っているのだが……ディロスの薄紫色の瞳に見つめられると欲が昂る。

 愛したいという思いに振り回されるように、その体を求め、愛で、貪ってしまうのは、反省すべき点だろう。

「ん……」

 安らかな寝顔を眺めながら、ディロスの髪を梳けば、小さく身じろぎをしてすり寄ってくる。

 その動きが愛おしく、自然と笑みが浮かんだ。

 妃教育という難題を押しつけたというのにディロスは愚痴を言うこともなく日々頑張ってくれている。

 子供達と過ごす時間すら減らした男を……俺をなじっても良いというのにな。

 それにも関わらず、頑張っている事の褒美に俺を求める。

 その健気さと欲の無さがディロスの魅力だと思うが、それゆえにディロスの献身に応える事は難しい。

 もちろん求められたら応える。だが、それ以外に返せるものがなかった。

 何か高価な物を欲しがるような者であったら惚れる事もなかっただろうが……欲しがる物が本しかないというのも困ったものだ。

 本も高価な物ではあるが、俺の趣味でもあるし、ほぼ共有物に近い。

 互いに共通の趣味がある事は良いことだが……ディロス個人の欲があれば贈る物にも困らずに済むのだがな……。

 贅沢な悩みだと思いながら、穏やかに眠るディロスの頭を撫でる。

 努力家で心優しい伴侶。だが、頑張りすぎるところと優しすぎるところのある人間だ。

 側妃として、王配として、共に歩き、俺が守らねばならない。

 むろん、肉体も心もだ。

 抱え込みすぎる質だから今夜の事で少しでも気晴らしになっていたら良い。

 ……俺も、楽しんでしまったのは本当に反省すべき点だが。

 改めて自分の欲に反省しながら、腕の中のディロスを抱き締める。

 細い体は、俺の腕にちょうど良く収まり、抱き心地が良い。

 抱きしめた際に香る匂いすら、甘く俺を惹きつける。

 そんな事を言ったら、顔を赤くして照れるだろうが。

 ディロスの照れている愛らしい姿を想像しながら笑みが浮かぶ。

 どんな姿であろうと愛おしいと思えるのだから、不思議で仕方ない。

「お前は、どこまでも俺を魅了するな」

 静かに眠るディロスに小さく囁き、その額に口づける。

「んん……」

 額に唇が触れると少しだけ身じろいだが、またすぐに寝息をたてる姿に笑みを浮かべながら、その温もりを抱え込むように瞼を閉じた。
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