上 下
67 / 114
第二部:王様に嫁入りした側妃ですが子供達の未来に悩んでいます

24:子供達の乱入

しおりを挟む
 エリーが僕の妃教育のために離宮へと通うようになって二週間が経った。

 といっても、毎日来るわけではなく、二日に一回から三日に一回くらいの頻度でだ。

 それ以外の日は、僕自身で自主練習を行っている。

 で、そうなってくると子供達も気になってくるようだ。

 最初は大人しく庭で遊んでいたけど、エリーとの妃教育を覗きに来るようになり、僕の自主練習の時も同じ部屋に居たがるようになった。

 そうなると僕の集中力が途切れちゃうんだよね……エリーに注意される事も何度か。

 なので、ついにはエリーからこんな提案が出た。

「そこまでディロス様のお勉強が気になるのでしたらお二人も一緒にやりましょうか」
「ほんとー!? アグノスも父様とおべんきょうするー!」
「えー!! 俺見てるだけでいいー!」

 エリーの言葉に喜ぶアグノスと嫌そうなティグレ。

 二人とも素直な反応だけど対照的だ。

「いいのエリー?」
「ええ、アグノス様にはお早いかとも思いますが、いずれは勉強なさることですから」

 エリーに二人も混ぜてしまっていいのかと問えばそんな返事が返ってくる。

 確かにそう言われればそうなのだけど……まだ幼いのだしもう少し先でもいいのではないかと思えてくる。

 一応最低限のマナーや勉強は遊びながら教えているわけだし……。

「でも、兄様! 父様といっしょにおべんきょうだよー! たのしいよー!」
「確かに、ディロスとの勉強楽しいけど……」

 僕と一緒に勉強するとぴょんぴょん跳ねるアグノスと渋い顔のティグレ。

 僕と勉強する時は、遊びながらだから勉強が楽しいものだと思っているアグノスと僕との勉強は楽しいけど外で動いている方が楽しいティグレの葛藤を見ていると楽しい。

「ティグレ。マナーをしっかり身につけてシュロムやイデアルに見せてビックリさせてみない?」
「……する!」

 渋るティグレの好きそうな言葉を告げれば、何度か目を瞬かせるとやる気に満ちた表情を浮かべて頷く。

「よーし! アグノス! 父上と兄上をビックリさせるぞー!」
「はーーーーーい!」

 拳を突き上げるティグレに、アグノスがその隣で両手を上げて跳ねている。

 どちらもやる気十分で微笑ましい。

「ディロス様は、ティグレ様の扱いがお上手ですねぇ」
「ティグレがいい子なだけだよ」
「素直な方ではあるのですが……私やメリーではうまくいかないんですよ」

 困ったように笑うエリーに、僕も苦笑する。

 初めて僕の離宮に来た事を思い出したからだ。

 ティグレとしては、二人に甘えても嫌いにならないと確信しているから我が儘も言うのだと思う。

 僕に対しては、そこまで我が儘を言わないからちょっと羨ましくもある。

 もう一人の父親だと慕っていてくれても、幼い頃から側にいた二人とは埋まらない差があると思うからだ。

「エリー! 今日は何をやるんだ!」
「なになにー!」

 やる気のでたティグレがエリーへと尋ね、アグノスも追従する。

「そうですね。お茶の時間が近いので、今日はお茶のマナーからしっかり覚えていきましょうか。ディロス様もよろしいですか?」
「うん、お願い」

 今日の妃教育の内容の変更を確認してくるエリーに頷く。

 お茶会の作法は本当に重要だからね。

 マリカ嬢とのお茶会まであと二週間。シュロムやイデアルに恥を欠かせないように頑張らないと。
しおりを挟む
感想 104

あなたにおすすめの小説

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【完結】私だけが知らない

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。 ▼毎日18時投稿予定

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。