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第二部:王様に嫁入りした側妃ですが子供達の未来に悩んでいます
21:夕食の席での発表
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シュロムが子供達と遊んでいるうちに夕食の時間となり、食堂へと向かう。
いつもと変わらない美味しい料理を食べ、普段通りの会話を楽しんだ後、シュロムが話を切り出す。
「イデアルの婚約が正式に決まった」
その言葉にイデアルは身を固め、アグノスとティグレは小さく首を傾げる。
「兄上の婚約って……兄上と結婚するって人が決まったってことですか父上」
「そうだ」
きょとんとしながらも、言われた内容を理解しようと、尋ねたティグレにシュロムが頷く。
「はー……」
頷いたシュロムにティグレはポカンとしながらも、しばらくすると内容が理解できたのか目を輝かせる。
「それじゃあ、俺とアグノスに姉上ができるのですね!」
いや、気が早い。
目をキラキラさせて、そんな事を言ったティグレに僕もシュロムも苦笑した。
「婚約というだけで、婚姻するわけはないから気が早いぞティグレ。だが、まあ……王族になるかもしれないご令嬢だ。お前達が顔を合わせることのできる年齢になったら、親しくしてやってくれ」
「はい!」
元気いっぱいに頷くティグレに、その期待がイデアルへの負担になっていないかと視線を向けるもイデアルもティグレの様子に苦笑している。
圧倒的なポジティブの前には、イデアルの不安も吹き飛んだようだった。
「父様ー、アグノスに姉上できるのー?」
「まだ、確定じゃないよ。でも、仲良くできると良いね」
「うん!」
正確には、今のアグノスの姉にはならないんだけど……まあ、十歳のお披露目でアグノスが正式にシュロムの養子に入るのなら義姉にはなるから間違ってはいないだろう。
「姉上ってどんな人かなー」
「姉上ー」
幼い二人はすでに姉という存在に夢中になっていて、その素直さが微笑ましい。
十歳のお披露目が終わるまでは、マリカ嬢との顔合わせはできないから、ティグレで二年、アグノスで四年は会えないと思う。
それまで、二人に中で姉という存在がどういう存在になってしまうのかちょっと不安だけど……まあ、二人の性格からしたらたぶん大丈夫だろう。
「それでだ。イデアルとディロスには、一ヶ月後に婚約者であるマリカ侯爵令嬢と顔合わせを兼ねた茶会を行ってもらう」
きた。一ヶ月後か……。
「父上! 俺は! アグノスは!」
「お前達は、十の顔見世が終わっていないからこの離宮で留守番だ」
「えぇー!そんなー!」
「えぇー!」
シュロムの答えにティグレとアグノスが残念そうな顔をする。
「兄上とディロスいいなー」
「いいなー」
しょんぼりと呟く二人に思わず笑みが浮かぶ。
「どんな方かは、僕とイデアルで話してあげるから」
「ホントか?」
「ホント? 父様?」
「うん」
「やったー!」
「わーい!」
二人と約束すれば、二人は嬉しそうに喜んだ。素直で助かる。
「ディロス」
「なに? シュロム」
喜ぶ二人を微笑ましく見ていたら、シュロムに呼ばれて視線を向ける。
「茶会までの期間とそれ以降の妃教育をエリーに頼もうと思う」
「エリーに?」
侍女長を引退したエリーの名前が出てきて、首を傾げてしまう。
彼女は、シュロムの乳母で泣き王太后……シュロムの母上の侍女だったが妃教育とは結びつかなかったのだ。
「エリーは、子爵家出身だが長らく俺の母の侍女も勤めていたし、レーヌへの妃教育も母とともにつけていた。お前も知らない者から教わるよりは、気が楽だろう」
エリー、僕が思うよりずっとすごい人だった。優しくしてもらった記憶しかないから実感はないのだけど。
「でも、引退したのにいいの?」
「許可は、得ている。侍女として住み込みで働くのは、難しいが通いであればまだまだ現役でいたいそうだぞ」
自身の乳母であるエリーの様子を思い出してかシュロムが笑う。
手紙のやり取りでも元気そうなのは伺えたが、まだまだ元気そうだ。
「わかった。その方が僕もありがたいし、エリーに会えるの楽しみにしてる」
「エリー来るのかー……」
「エリーくるのー!」
僕が頷けば、エリーに叱られる事の多かったティグレが肩を落とし、アグノスが喜ぶ。
そんな対照的な二人に笑いが起きながら、夕食の席は進んでいったのだった。
いつもと変わらない美味しい料理を食べ、普段通りの会話を楽しんだ後、シュロムが話を切り出す。
「イデアルの婚約が正式に決まった」
その言葉にイデアルは身を固め、アグノスとティグレは小さく首を傾げる。
「兄上の婚約って……兄上と結婚するって人が決まったってことですか父上」
「そうだ」
きょとんとしながらも、言われた内容を理解しようと、尋ねたティグレにシュロムが頷く。
「はー……」
頷いたシュロムにティグレはポカンとしながらも、しばらくすると内容が理解できたのか目を輝かせる。
「それじゃあ、俺とアグノスに姉上ができるのですね!」
いや、気が早い。
目をキラキラさせて、そんな事を言ったティグレに僕もシュロムも苦笑した。
「婚約というだけで、婚姻するわけはないから気が早いぞティグレ。だが、まあ……王族になるかもしれないご令嬢だ。お前達が顔を合わせることのできる年齢になったら、親しくしてやってくれ」
「はい!」
元気いっぱいに頷くティグレに、その期待がイデアルへの負担になっていないかと視線を向けるもイデアルもティグレの様子に苦笑している。
圧倒的なポジティブの前には、イデアルの不安も吹き飛んだようだった。
「父様ー、アグノスに姉上できるのー?」
「まだ、確定じゃないよ。でも、仲良くできると良いね」
「うん!」
正確には、今のアグノスの姉にはならないんだけど……まあ、十歳のお披露目でアグノスが正式にシュロムの養子に入るのなら義姉にはなるから間違ってはいないだろう。
「姉上ってどんな人かなー」
「姉上ー」
幼い二人はすでに姉という存在に夢中になっていて、その素直さが微笑ましい。
十歳のお披露目が終わるまでは、マリカ嬢との顔合わせはできないから、ティグレで二年、アグノスで四年は会えないと思う。
それまで、二人に中で姉という存在がどういう存在になってしまうのかちょっと不安だけど……まあ、二人の性格からしたらたぶん大丈夫だろう。
「それでだ。イデアルとディロスには、一ヶ月後に婚約者であるマリカ侯爵令嬢と顔合わせを兼ねた茶会を行ってもらう」
きた。一ヶ月後か……。
「父上! 俺は! アグノスは!」
「お前達は、十の顔見世が終わっていないからこの離宮で留守番だ」
「えぇー!そんなー!」
「えぇー!」
シュロムの答えにティグレとアグノスが残念そうな顔をする。
「兄上とディロスいいなー」
「いいなー」
しょんぼりと呟く二人に思わず笑みが浮かぶ。
「どんな方かは、僕とイデアルで話してあげるから」
「ホントか?」
「ホント? 父様?」
「うん」
「やったー!」
「わーい!」
二人と約束すれば、二人は嬉しそうに喜んだ。素直で助かる。
「ディロス」
「なに? シュロム」
喜ぶ二人を微笑ましく見ていたら、シュロムに呼ばれて視線を向ける。
「茶会までの期間とそれ以降の妃教育をエリーに頼もうと思う」
「エリーに?」
侍女長を引退したエリーの名前が出てきて、首を傾げてしまう。
彼女は、シュロムの乳母で泣き王太后……シュロムの母上の侍女だったが妃教育とは結びつかなかったのだ。
「エリーは、子爵家出身だが長らく俺の母の侍女も勤めていたし、レーヌへの妃教育も母とともにつけていた。お前も知らない者から教わるよりは、気が楽だろう」
エリー、僕が思うよりずっとすごい人だった。優しくしてもらった記憶しかないから実感はないのだけど。
「でも、引退したのにいいの?」
「許可は、得ている。侍女として住み込みで働くのは、難しいが通いであればまだまだ現役でいたいそうだぞ」
自身の乳母であるエリーの様子を思い出してかシュロムが笑う。
手紙のやり取りでも元気そうなのは伺えたが、まだまだ元気そうだ。
「わかった。その方が僕もありがたいし、エリーに会えるの楽しみにしてる」
「エリー来るのかー……」
「エリーくるのー!」
僕が頷けば、エリーに叱られる事の多かったティグレが肩を落とし、アグノスが喜ぶ。
そんな対照的な二人に笑いが起きながら、夕食の席は進んでいったのだった。
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