お飾り婿の嫁入り 血の繋がらない息子のために婿入り先の悪事を暴露したら、王様に溺愛されました

海野璃音

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第二部:王様に嫁入りした側妃ですが子供達の未来に悩んでいます

18:おだやかに変わりゆく日常

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 昨日は、何も手につかなかったけど、いろんな事がありすぎたせいか、何かに集中している方が考えすぎなくていい。

 翻訳と戦況の考察を書き記しながら、本の空白を埋めていく。

 時には、前世の記憶にある史実や架空戦記での戦術も対応策として記しながら。

 これがいつか、この世界が戦乱になった時に誰かの役に立つといい。

 シュロムでも、ティグレでも、もしくはさらに遠い子供達の子孫でも。

 何かが切欠で前世の記憶を失う事を知っているから、忘れる前に書き記して置こう。

 そう思ったから、こうしてシュロムの趣味を引き継ぎつつ、ただただ書き連ねている。

 もちろん、他の知識も前世の母国語であっただろう日本語で残すようにしていた。

 不思議と知識が薄くなる事はないけど、何かあった時に役に立つだろうしね。

 日本語だと、この世界の人達には読めないから暗号としても役になっている。

 ロンが暗部の記録用に使いたいから教えてと煩いけど……。

 しかし、モリーいわく、すでに暗部専用の言語があるらしい。必要なくない? と思ったのはつい最近の事だった。

「とーーーーーさまーーーーー!」

 時折思考がズレつつも、黙々と書き記していた僕の耳にアグノスの声が聞こえる。

「お昼寝終わったみたいだね」
「お呼びしますか?」
「ううん、向かうから後で片付けだけ頼んでもらってもいい?」
「かしこまりました」

 まだ、インクの乾ききっていない本を開いたまま、ペンとインクの蓋だけを閉め、廊下へ出た。

「アグノス、ティグレ」
「父様!」
「ディロス! おやつ食べよう!」

 廊下の向こうから駆けてくる二人を呼べば、両側から腰に抱きつかれる。

「そうだね。今日は、どこで食べよっか」
「庭! 兄上が帰ってくるの待つんだ!」
「お庭ー!」
「はいはい、お庭でイデアルが帰ってくるの待ちながらだね。マリー、ティグレ達は引き取るから、厨房に頼んできてもらってもいいかい?」
「かしこまりました。すぐにご用意いたします」

 アグノス達の後ろに控えていたマリーに声をかければ、承諾の言葉が返ってくる。

 最近では、アグノスだけではなく、ティグレの面倒も一緒に見てくれている彼女。

 モリーと彼女の母親でティグレの乳母兼専属侍女だったメリーがこの離宮の侍女長となったから幼い二人の面倒を纏めて見てくれている。

 そして、メリーが侍女長になったことで、以前の離宮で僕達の面倒を見てくれていたエリーは、歳を理由に侍女職を引退した。

 手紙のやり取りは、まだ続いているけど、子供達だけではなく、僕らを取り囲む環境も日に日に変化しているのだった。
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